「バンドネオン」の版間の差分

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→‎ボタン配列の各方式: ヴィッキ・ヘイデン式
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**マノーリ式(Manouri System)配列
 
上記以外にも、プロ奏者が楽器職人に特注して一部のボタン鍵の音高を変えたり、ボタン鍵を増やしたバンドネオンもある。ピアノ式鍵盤と同様のボタン鍵配列を採用した機種や、もはやバンドネオンとは言えない変わった設計の機種も存在し<ref name="マルヤマ2018d" />、まれに中古品市場で出回ることもある。以下、主なものだけを解説する。<br>
蛇腹楽器の常として、バンドネオンも、さまざまな鍵盤配列方式が考案され、それぞれが乱立し、いまだ統一されていない。最も規則的で合理的な{{仮リンク|ヴイッキ・ヘイデン式鍵盤配列|en|Wicki-Hayden_note_layout}}(押引同音)はまったく普及せず、逆に、規則はずれが多く非合理的なライニッシュ式配列がアルゼンチンを中心に広く世界に普及している。<br>
バンドネオンを含む蛇腹楽器の演奏技術は、鍵盤配列の不規則性を生かしたものも少なくない。また演奏者が現地の個性的な音楽を演奏しやすいよう、規則はずれのボタン鍵を追加するなど、試行錯誤の歴史の積み重ねもある。バンドネオンの鍵盤配列の各方式の優劣や適否は、机上の合理性のみで判断できるものではない。
 
=== アインハイツ式(押引異音) ===
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日本語では「ライン式」とも言う。71ボタン(左 33、右 38)142音(142 voces)が基本で<ref>それよりも多い左36個・右40個・合計76個のバンドネオン 152 voces もある。また、より少ない左31個・右34個・合計65個のバンドネオン 130 voces もある。近年は音域を拡張した 156 voces も生産されているが、一般的ではない。</ref>、タンゴの本場アルゼンチンではこの方式のボタン配列が標準仕様である。<br>
20世紀前半、アルゼンチンのバンドネオン奏者たちは、ドイツのメーカーに新品を発注する際、タンゴを弾きやすいようボタン鍵の増設を特注した。タンゴ形成の発展途上の試行錯誤の積み重ねから生まれたのが、ライニッシュ式配列である。ライニッシュ式配列の中央のボタン配列はドイツ本国のアインハイツ式とよく似ている。隣同士の特定のボタンを同時に押すと、ダイアトニック・コンサーティーナあるいはアコーディオンの左手と同じように、和音が鳴るようになっている。しかし、周辺部の音階配置は、アルゼンチンの奏者からのオーダーに応じてその都度増設を繰り返したという歴史的な経緯もあり、ほぼ不規則である。<br>
アルゼンチン・タンゴの象徴的な楽器であるライニッシュ式バンドネオンは、習得が非常に難しいことから「悪魔が発明した楽器」とも呼ばれる。<br>
 
タンゴの独特の音楽性は、複雑な構造を持つバンドネオンの運指、吸気リズムを自然に活かした演奏技術との相互発展の産物であり、単純に合理性で解釈できるものではない。
 
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File:Clavier main droite 1 fig 1.jpg|右手側のボタン配列
</gallery>
 
=== ヴィッキ・ヘイデン式(押引同音) ===
[[File:Wicki-Hayden Piano Color.png|thumb|200|right|{{仮リンク|ウイッキ・ヘイデン式鍵盤配列|en|Wicki-Hayden_note_layout}}の概念図を、ピアノの白鍵と黒鍵に準じて便宜的に色分けした図。それぞれのボタン鍵どうしの音程は、右横は長2度、右上は完全5度、左上は完全4度、真上は完全8度(オクターブ)、と完全に規則的である。]]
カスパー・ヴィッキ(Kasper Wicki)がバンドネオンのために考案した鍵盤配列で、1896年にスイスで特許を取得した<ref>concertina.comの記事「[http://www.concertina.com/gaskins/wicki/ The Wicki System—an 1896 Precursorof the Hayden System]」</ref>。鍵盤の並び方は規則的で覚えやすく、運指も合理的であったが、残念ながらバンドネオンの鍵盤配列としては普及しなかった。20世紀後半、その特長が再発見され、ヘイデン式[[コンサーティーナ#デュエット・コンサーティーナ|デュエット・コンサーティーナ]]や、新開発の電子楽器の鍵盤配列に採用された。詳細は{{仮リンク|ヴイッキ・ヘイデン式鍵盤配列|en|Wicki-Hayden_note_layout}}(押引同音)を参照。
 
== 演奏法 ==