「電算写植」の版間の差分

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1990年代に入ると、DTPは電算写植を急速に置き換え、モリサワは1998年には年商ベースで写研を抜いて業界トップとなった。特に、1970年代から1990年代にかけて非常に広範囲に使われた写研のフォント「ゴナ」とよく似たデジタルフォントが、モリサワの「新ゴ」として1993年に発売されたことが大きく、写研は1993年にモリサワを訴えたが2000年に敗訴した。
 
特に小規模印刷で大きなシェアを得ていた写研のSAPTONシステムだが、DTPベ複数の高価な専用ハドウェアで構成される電算写植に対して、市販システムMac1台とDTPソフトの「QuarkXPress」1本で編集できるDTPの方が圧倒的に安価であり、また従来は複数の専門オペレータによって分業されていた工程をDTPでは一人で行えるようにいう点であり、小規模システムはDTPへの移行が早く、電算写植のシステムは1990年代前半から後半にかけてMacを使ったDTPベースのシステムに置き換えられた。写研はDTPの流れに対抗すべく、MacやWindowsなどで作成されたデータもSAPCOLで編集できる「SAMPRAS」(サンプラス)システムを1997年に発表したが、DTPベースのシステムと比較すると極めて高価であり、また電算機が写研のサーバーに接続されてフォントの使用1文字あたりで課金されるという「従量課金制」と言う点でも、小規模印刷所には受け入れられなかった。
 
なお写研の「SAMPRAS」システムは、[[UNIX]]([[Hi-UX]])を搭載した日立のワークステーションがベースのカラー集版システム「SAMPRAS-C」、文章データと画像データを読み込んで保管するデータベースサーバ「IMERGE II」など、市販のサーバーをベースとした複数のハードウェアで構成されている。その中のテキスト編集機「GRAF」は、1960年代から使われている写研の伝統のテキスト編集ソフトウェア「SAPCOL」を内蔵してはいるものの、市販のPCと同じDOS/Vベースのシステムであるため、この時代になると電算写植機(もはや写研しか作っていないが)はDTPと全く同じハードウェアを用いるようになっている。電算写植はDTPと比べると複数の独自ハードウェアを用いる複雑なシステムに見えるが、熟練オペレーターにとってはこちらの方が逆にDTPよりも扱いやく、DTPよりも美しい版が迅速に作成できるという点でも、特に大手出版社においては電算写植を支持するオペレーターが未だ多かったのも、1990年代当時においては事実である。
2000年代以降は大規模出版を含むほとんどの出版がAdobe IndesignベースのDTPに置き換えられ、写研を除くかつての写植メーカーがDTP向けのフォントの販売を行っているほか、Indesignでは扱うのが面倒な日本語の大規模自動組版向けのソリューション(モリサワの「[[MC-Smart]]」など)も存在している。モリサワを筆頭に、かつて写植機と言う「ハードウェア」を販売していた企業(写研を除く)は、デジタルフォントやDTPソフト、その他をひっくるめたソリューションと言う「ソフトウェア」を販売する業態に転換した。
 
2000年代以降はQuarkXPressを上回る機能を持つDTPソフトウェア[[Adobe Indesign]]の登場により、大規模出版を含むほとんどの出版がAdobe IndesignベースのDTPに置き換えられ、写研を除くかつての写植メーカーがDTP向けのフォントの販売を行っているほか、Indesignでは扱うのが面倒な日本語の大規模自動組版向けのソリューション(モリサワの「[[MC-Smart]]」など)も存在している。モリサワを筆頭に、かつて写植機と言う「ハードウェア」を販売していた企業(写研を除く)は、デジタルフォントやDTPソフト、その他をひっくるめたソリューションと言う「ソフトウェア」を販売する業態に転換した。
写研はDTPへの対応を全く行っていない。そもそも写研は情報公開に消極的で、2000年に写植用フォントを発表して以降の発表が無く、公式ウェブサイトすら存在しないため、DTP時代への対処を検討しているのかしていないのかすらよく解っていない。2011年の「第15回電子出版EXPO」に写研が出展し、写研の名作フォントである「ゴナ」や「ナール」をデジタルフォント化する予定があるとのアナウンスを行ったが、2018年現在でもデジタル化されていない。
 
写研はDTPへの対応を全く行っていない。そもそも写研は情報公開に消極的で、2000年に写植用フォントを発表して以降の発表が無く、公式ウェブサイトすら存在しないため、DTP時代への対処を検討しているのかしていないのかすらよく解っていない。2011年の「第15回電子出版EXPO」に写研が出展し、写研の名作フォントである「ゴナ」や「ナール」を[[OpenType]]フォント化する予定があるとのアナウンスを行ったが、2018年現在でもOpenType化されていない。写研は2018年時点でも、写研のフォントが利用できることをウリとする電算写植システムの販売・レンタル・フォント使用料の徴収などを軸とした、独自のビジネスモデルを続けている(その意味で、電算写植の時代はまだ終わっていないともいえる)。2000年に発売された写研の組版システム「Singis」はWindowsベースのシステムで、Photoshopやillustratorなども利用できるが、「Signis」に搭載された写研のフォントは独自形式で、写研のソフトウェアからしか利用できない。無論、「Signis」と組み合わされるハードウェアは全て写研の独自ハードウェア(それぞれ数百万円くらいする)で、Mac1台で完結するDTPと比較すると著しく高価であり、さらに使用するたびに使用料がかかかる「従量課金制」である。
 
鉄道のサインシステムは旧国鉄の「すみ丸ゴシック」を使うJR東海を除いて写研のフォントが使われていたが、電算写植の技術を持つオペレーターが少なくなっているため、DTPを使用せざるをえなくなり、看板が古くなって交換する2010年代以後に「写研のフォントとよく似たデジタルフォント」に次第に置き換えられている。