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=== 筋肉疲労との関わり ===
カエルの[[筋肉]]を使った研究に基づき 1929年に Hill らが提唱して以来<ref>Hill, A. V.; Kupalov, P. ''Proc. R. Soc. London Ser. B'', '''1929''', ''105'', 313.</ref>、乳酸は筋肉疲労の原因物質として考えられてきた。これは、[[乳酸]]の蓄積による[[アシドーシス]]により収縮タンパクの機能が阻害されたためと理解された<ref name="Allen">Perspective: Allen, D.; Westerblad, H. ''Science'', '''2004''', ''305'', 1112-1113. DOI: [httphttps://dx.doi.org/10.1126/science.1103078 10.1126/science.1103078]</ref>。しかし後の研究において、アシドーシスを筋肉疲労の原因とする説に対して反証が報告されてきた<ref name="Allen" />。そして2001年に Nielsen らによって、細胞外に蓄積した[[カリウム]][[イオン]] K<sup>+</sup> が筋肉疲労の鍵物質であることが報告された。Nielsen らの系では、K<sup>+</sup> の添加により弱められた筋標本について乳酸などの酸を添加すると、従来の説とは逆に回復がみられた<ref>Nielsen, O. B.; de Paoli, F.; Overgaard, K. ''J. Physiol.'' '''2001''', ''536'', 161-166. {{DOI|10.1111/j.1469-7793.2001.t01-1-00161.x}}</ref>。2004年の Pedersen らの報告でも、pH が小さいときに塩化物イオンの細胞透過性が落ちることが示され、アシドーシスに筋肉疲労を防ぐ作用があることが示唆された<ref>Pedersen, T. H.; Nielsen, O. B.; Lamb, G. D.; Stephenson, D. G. ''Science'' '''2004''', ''305'', 1144-1147. {{DOI|10.1126/science.1101141}}</ref>。また、強度の高い運動では[[ATP]]や[[クレアチン]]リン酸の分解で[[リン酸]]が蓄積する。このリン酸は[[カルシウム]]と結合しやすく、カルシウムがリン酸と結合してしまうと筋収縮に必須のカルシウムの働きが悪くなる。これが疲労の原因の一つと考えられている。カルシウムは本来筋[[小胞体]]に貯められ、筋小胞体から出ることで筋肉は収縮し、筋小胞体に戻れば筋肉は弛緩する<ref name=hatta>[httphttps://dx.doi.org/10.5363/tits.11.10_47 新たな乳酸の見方]、八田 秀雄、学術の動向、Vol. 11 (2006) No. 10</ref>。
 
==疲労の回復と予防==