「サーブ 39 グリペン」の版間の差分

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機体の構成素材は[[アルミニウム|アルミ]] 59 %、[[CFRP]] 20 %、[[チタン]] 8 %、[[鋼]]材 8 %、その他 5%となっている。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)は主にカナード、主翼、尾翼に使用している。その他素材の主なものとしては、レーダーカバーの[[GFRP]](ガラス繊維強化プラスチック)、尾翼先端の[[繊維強化プラスチック|AFRP]](アラミド繊維強化プラスチック)、[[キャノピー]]の[[アクリル樹脂]]がある。[[バードストライク]]対策としてキャノピーは厚さ9 mm、前方の[[風防|ウィンドシールド]]は厚さ26.5 mmを確保しており、重さ1kgの鳥が相対時速1,000 kmで衝突する衝撃に耐えられる。キャノピーは左側に[[蝶番|ヒンジ]]を有する横開き式が採用された。
 
操縦系統は3重のデジタル・[[フライ・バイ・ワイヤ]]とアナログの1系統の計4系統。操縦データは[[32ビット|32bit]][[マイクロプロセッサ|MPU]] [[MC68040|68040]]が処理し、[[テキサス・インスツルメンツ]]の[[デジタルシグナルプロセッサ|DSP]] TMS320C30が入出力とバックアップを行う<ref>[https://link.springer.com/chapter/10.1007/BFb0055013 Ada in the JAS 39 Gripen flight control system] Frisberg B. (1998) Ada in the JAS 39 Gripen flight control system. In: Asplund L. (eds) Reliable Software Technologies — Ada-Europe. Ada-Europe 1998. Lecture Notes in Computer Science, vol 1411. Springer, Berlin, Heidelberg</ref>。
 
[[運動性]]を高めるために[[ピッチング|ピッチ]]方向の静安定性をあえて弱めた空力設計の機体を、飛行制御装置 (FCS) により制御して安定飛行を可能とする[[運動能力向上機|CCV]]となっている。FCSの操縦への介入度合いは荷重制限(G)と運動制限(迎え角と[[ローリング|横転]]率)から6段階のパフォーマンスグループ(PG)に分かれている。A(荷重制限無し、運動制限無し。軽戦闘)。B(荷重制限無し、運動制限緩和。重戦闘)。C(荷重制限無し、運動制限有り。軽攻撃)。D(荷重制限有り、運動制限有り。通常)。E(荷重制限やや強い、運動制限有り。重攻撃)。F(荷重制限最大、運動制限最大。戦闘損傷など)。飛行中に任務と荷重の変化に応じてパフォーマンスグループを自動的に切り替えて常に安全で最高の性能を発揮出来るようにしている。一方でFCSによる制御を前提とした機体であるため、試作機においてソフトウエアの[[バグ]]による複数回の事故を起こしている。
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A/B型およびC/D型の[[エンジン]]は、[[アメリカ海軍|米海軍]]機[[F/A-18 (航空機)|F/A-18]](レガシーホーネット)等が搭載するアメリカ製[[ゼネラル・エレクトリック F404|ゼネラル・エレクトリック F404-GE-400]] [[ターボファンエンジン]]を、スウェーデン企業である[[ボルボ・エアロ]](2012年から英国の[[GKN]]傘下)が改良した[[ボルボ RM12|RM12]]を1基搭載している。双発機向けのエンジンを単発で運用するために、吸気流量を約10 %、排気流量を約15%増大することで推力を1万6,000ポンドから1万8,000ポンドに増強した。また単発機の弱点となりやすい生残性を極限まで高めるために、制御システムは機械油圧式と電子式を併用して、[[冗長化|冗長性]]を50 %から90 %に向上した。整備性の向上のため、全13箇所中12箇所には機体に搭載したまま使用可能な内視鏡の覗き窓を追加し、個別交換可能な7つのモジュールでエンジン本体を構成している。また、内蔵する20個の[[センサー]]で取得したデータを、飛行5回ごとに自動でダウンロードして整備や改良などに使用する。
 
C/D型から、米国国防総省が技術提供を許可しなかったためにボルボ社がGE社の協力のもとで自主開発した全自動デジタルエンジン制御([[FADEC]])を搭載した<ref name="maeiki">[[イカロス出版]] 『JWings』特別編集 世界の名機シリーズ『JAS39グリペン』</ref>。また、フレームホルダーを[[空冷]]式に換装して寿命を約3倍にしたり、エンジン[[排気]]温度を下げて[[ノズル]]からの[[赤外線]][[熱放射|放射]]の抑制を図ったりしている。
 
E/F型からは、F404シリーズの発展型で[[F/A-18E/F (航空機)|F/A-18E/F]](スーパーホーネット)が搭載する[[ゼネラル・エレクトリック F414]]を、同じくグリペン向けに改良したF414-GE-39Eエンジンを搭載する。この改修によりミリタリー推力の20 %増大を達成し、アフターバーナーに頼らないマッハ1.1での[[超音速巡航]]が可能となった<ref>[http://www.flightglobal.com/news/articles/saab39s-demo-aircraft-to-highlight-gripen-ng-capabilities-223299/ Saab's Demo aircraft to highlight Gripen NG capabilities] - flightglobal.com</ref>。
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維持・運用経費の削減にも注力された結果、先代の[[サーブ 37 ビゲン|ビゲン]]と比較によると、空軍の整備拠点に搬送しての整備を1段階減らしている。[[平均故障間隔]](MTBF)約7.6時間、[[平均復旧時間]](MTTR)約2.5時間となり、48時間の作戦行動における稼働時間が約38時間と約54.5%運用効率が向上している。従来の第4世代戦闘機と比べると、[[平均故障間隔]](MTBF)で30 - 50 %優れ、飛行時間あたりの必要整備人員が半分から三分の一、作戦運用効率は25 - 30 %高くなっている<ref name="Williams" />。
 
整備機材一式はコンパクトに纏められ、整備機材、兵装、整備要員を近距離では大型[[貨物自動車|トラック]]3台、遠距離では[[C-130 (航空機)|C-130]][[ 輸送機]]に搭載可能となっている<ref name="Williams" />。
 
空対空装備は10分以内、空対地装備は20分以内で[[エンジン]]稼動状態のままでの再装備と給油が可能となっている。エンジン交換も小型の[[クレーン|ホイスト]]と台車があれば3人程度で1時間以内にできる<ref name="Williams" />。
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: [[ドイツ]] [[モーゼル|マウザー]]社(現[[ラインメタル]]社)製、携行弾数120発、発射速度毎分1,700発、重量100kg、
* 視程内射程(WVR)[[空対空ミサイル]]
: [[AIM-9#AIM-9L/M/S/R|AIM-9L]](Rb74):[[アメリカ合衆国|米国]][[レイセオン]]社、{{仮リンク|フォード・エアロスペース|en|Ford Aerospace}}社、[[スペースシステムズ/ロラール]]社製、[[スウェーデン空軍]]使用。タイ、チェコ、ハンガリー空軍もグリペン導入時に購入した。
: [[AIM-9#AIM-9X|AIM-9X]]:米国[[レイセオン]]社製
: [[IRIS-T]](Rb98):ドイツ [[ディール・ディフェンス|BGT]]社、スウェーデン [[SAAB]]社、イタリア [[アレニア]]社など6社共同開発。2009年11月からスウェーデン空軍が使用。Rb74の後継。
: [[ASRAAM (ミサイル)|ASRAAM]]:[[イギリス|英国]][[MBDA]]社製
: [[パイソン (ミサイル)|パイソン4/5]]:[[イスラエル]]製
: {{仮リンク|A・ダーター (ミサイル)|label=A・ダーター|en|A-Darter}}:[[南アフリカ共和国|南アフリカ]] [[デネル・エアロスペース・システムズ]]社製、V3E アジャイル・ダーター。ベクタードスラスト装備の高機動型。誘導は慣性航法と画像赤外線式。オフボアサイト能力を持つ。全長2.98 m、直径0.16 6m、翼スパン0.488 m、重量89 kg、最大射程20 km。
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: [[ブリムストーン (ミサイル)|ブリムストーン]]空対地ミサイル:英国[[MBDA]]製。グリペンでは3連装ランチャーを使用。
: Spear対地ミサイル:英国[[MBDA]]製。F-35のウェポンベイに複数搭載可能な小型巡航ミサイル。動力はターボジェット。折畳み主翼。飛行速度は高亜音速。全長:約2 m。射程:約100 km。マルチモードシーカと多目的弾頭、INS/GPSによる中間誘導に加え、[[戦術データ・リンク|データリンク]]による逐次アップデートも可能。グリペンでは4連装ランチャーを使用。
: {{仮リンク|DWS 39|sv|DWS 39}}(BK90)滑空型スタンドオフ[[クラスター爆弾|ディスペンサー]] :[[ドイツ]][[MBB]]社(現[[エアバス・グループ|EADS]])製、スウェーデン空軍使用。最大射程約10 km。全長3.5 mの箱型の弾体にフィンを4枚装備。弾体両舷に12個ずつの穴がありそこに最大3個の子爆弾が収納されている。子爆弾は重量4.0 kgで対軟目標用のMJ1と重量18 kgで対[[装甲]]用のMJ2があり、散布範囲は低空侵入の場合で幅250 m、長さ300 - 400 mに渡る。
: {{仮リンク|タウラス|en|KEPD 350}}空対地巡航ミサイル:[[ドイツ]] トーラス・システムズ社製、P8300-15ターボファン・エンジンを搭載し、マッハ0.8 - 0.95の速度で地上30 - 40 mを飛行。射程距離は350 km以上。誘導方式はGPS、INS及びTRNの複合方式で高解像度の赤外線カメラも搭載し周囲の地形と地図データを照合させ誘導する事も可能。弾頭は500 kgのタンデム式で遅延信管装備。ステルス性がある。
: [[AGM-154 JSOW]]滑空誘導爆弾/空対地ミサイル:米国[[レイセオン]]社製。
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: デジタル統合偵察ポッド{{仮リンク|DJRP|en|Digital Joint Reconnaissance Pod}}:[[フランス]] [[タレス・グループ|タレスUK社]]製、[[ユーロファイター タイフーン]]や[[BAe ハリアー II]]も採用。
* その他
: {{仮リンク|ADM-160 MALD|en|ADM-160 MALD}}ミニチュア空中発射デコイ:[[アメリカ合衆国|米国]][[レイセオン]]社。MALDはMiniature Air-Launched Decoyの略。試作型AMD-160Aは{{仮リンク|テレダイン・ライアン|en|Ryan Aeronautica}}社(現[[ノースロップ・グラマン]]社)が開発。[[レイセオン]]社製はAMD-160B(米空軍が採用)。電子妨害機能を搭載したADM-160C MALD-Jもある(米海軍が採用)。全長:2.31 m。幅:0.65 m。最高速度:時速900 km。後続距離:約450 km。滞空時間:約20分。
: [[増槽|落下式燃料タンク]](1,100 L)
: AACMIポッド EHUD/FPR:戦闘訓練における飛行データの分析などに使われる記録装置。第二世代型はGPSを搭載している。