「ABO式血液型」の版間の差分

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| ラントシュタイナー || - || + || + || + || + || -
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(山本文一郎『ABO血液型が分かる科学』P4  表1-1「ランドスタイナーの赤血球の凝集実験の結果」より)
 
これらより凝集のする・しないのグループ分けをするとErdheim博士・Sturli博士、Pletschknik博士・Zaritsch氏、Storck博士・ランドスタイナーと分けられ<ref>[[#山本2015|山本(2015) p.2-6]]</ref>、ランドスタイナーは「人の血液は3つの群に分けられる」として、「A型」「B型」、「C型(このC型は現在のO型である)」と名付け、翌年の1901年11月14日に論文発表した<ref>Dr. Karl Landsteiner: "Ueber Agglutinationserscheinungen normalen menschlichen Blutes", Wiener klinische Wochenschrift, 14 Jg., Nr.46 (14. November 1901), S.1132-1134.</ref>。
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その後、フォン・デュンゲルンとヒルシュフェルトは1911年に72家族348人の血液型を調べた結果、血液型は遺伝要素があるという仮説を唱えた。
 
'''フォン・デュンゲルンおよびヒルシュフェルトによる調査(1911)<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.14  I・2表]]</ref><ref group="脚注">現在の観点から見ると不自然な親子関係があるが、参考にした『血液型の話』14Pの表のままで掲載。</ref>'''
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これにより「凝集原を持つ人は必ず親がそのタイプの凝集原を持つ」、「両親ともに凝集原のないO型の場合は子供は必ずO型」という法則を知り、これをもとに血液型はメンデルの遺伝法則に従って遺伝して「Aとa」「Bとb」という二対の対立因子を考えた。'''(二対対立因子説)'''
 
'''二対対立因子説による4血液型の因子型'''<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.16  I・3表]]</ref>
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'''二対対立因子説による遺伝'''<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.16  I・4表]]</ref>
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* AB型 - A遺伝子・B遺伝子を一つずつ持つ(AB型)→A抗原、B抗原両方を持つ。抗体形成なし
 
A抗原とB抗原は、持っていないとそれに対する自然抗体が形成されることが多く、この場合、型違い輸血により即時拒絶が起き[[ショック]]状態となる<ref name=jjtc1958.28.423 />。自然抗体がなくとも型違い輸血により1週間程度で新しいIgM抗体が生産されこれが拒絶反応をおこす。そのため、基本的には型違い[[輸血]]をしてはならない。輸血される血液は受血者の血液より少量のため、血漿によって希釈されて抗原抗体反応が起こらなくなる。そのため、{{要出典範囲|かつてはO型は全能供血者、AB型は全能受血者と呼ばれていた|date=2019年1月}}が、ABO以外の型物質([[Rh因子]]やMN式血液型など)が存在することもあり{{要出典範囲|現在では緊急時を除いては通常行われない|date=2019年1月}}
 
なお、「自然抗体」というのはRh型のように不適合輸血<ref name=jjtc1958.28.423>遠山博、「[https://doi.org/10.3925/jjtc1958.28.423 赤血球型不適合輸血の機構と予防]」 日本輸血学会雑誌 1982年 28巻 5号 p.423-433, {{doi|10.3925/jjtc1958.28.423}}</ref>を受けた後などに抗体を生じる「免疫抗体」に対する呼び方だが、実際にはこれも免疫機構によるもので、1950年代にペンシルバニア大学のゲオルク・スプリンガーの実験で無菌状態で育てたヒヨコはABO式血液型の抗原を持っていない<ref>ただしニワトリは元々ABO式の遺伝子を持ってない([[#山本2015|山本(2015) p.163表]]ABO血液型が分かる科学』P163表)。</ref>が、B抗原を持つ大腸菌を投与すると抗B抗体を持つようになったという報告があることや、人間も腸内細菌のいない新生児の頃は抗A抗体や抗B抗体をもたないが、生後3か月から6か月ほどで持つようになることなどから腸内細菌などに対する免疫の結果生じた抗体とされる<ref>[[#山本2015|山本(2015) p.124-125]]</ref>。<!--細菌やウイルスが唾液や性的接触などにより人間間で感染するように、人間の細胞や細胞の断片も人間間を移動するからであり、移動した断片はマクロファージによりファゴサイトーシスされ、これがT細胞に提示され抗体が作られる。主にIgMが作られるが、IgG抗体も作られることもある。←この説の出典が分かる方がいたら書き込んでおいてください。-->
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地域による血液型比率の違い血液型を人類学に最初に応用したのはルードヴィヒ・ヒルシュフェルド夫妻で、1次大戦終結時にマケドニアに集まった各国の兵士8500人の血液型を調べた際、人種の相違によって比率が大きく違う(下図参照)ことを発見し、1918年5月5日にサロニカの医学会で報告。その後いろいろあって遅れたものの、1919年10月18日にイギリスの著名な医学雑誌『[[ランセット]]』に掲載された。
 
『ヒルシュフェルドらの分類』<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.181]]  VIII・1表</ref>
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当時は血液型が個人で不変かどうか自体不明瞭であった(上記の兵士たちは基本的に似たような環境で同じものを食べていたが、もっと長期間の環境変化ではどうなるかは分かっていなかった。)ため、これが彼らの故郷の環境によるものか血統的によるものかがはっきりしなかったため重要視されなかったが、1921年ハンガリー(原書は「ハンガリヤ」表記)のヴェルザーとウェスツェッキーが自国内で当時出自が違う民族とすでに分かっていたドイツ系・蒙古系(注:[[マジャール人]]の事)・[[ジプシー]](インド系)の民族の血液型比率を調べたところ、下図のようになった。
 
『ヴェルザー、ウェスツェッキーの研究』<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.183]]  VIII・2表</ref>
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こうした結果より、民族の移動などを血液型から推測する研究がされるようになり、まず最初のヒルシュフェルド夫妻は『ヒルシュフェルドらの分類』の表のデータのうち、イギリス人からギリシャ人までを「ヨーロッパ型」、マダガスカル人からインド人までを「アフリカ・アジア型」としてその間の4民族を中間型とし、O型の比率はどこも極端に違わないのにA型とB型の人種差が極端に激しいので、「かつてA型を基本とするA人種(ヨーロッパの中~北部起源)とB型を基本とするB人種(インド北方起源)がいて、これが混血していき様々なABO式血液型の比率を生み出した。」という説を提唱した<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.178-180]]</ref>。
 
その後、世界各地の人種の血液型比率を調べていた際にスナイダーが混血が少ないアメリカ先住民族(原文は「アメリカ・インディアン」)にO型が極めて多い(453人を調べてOが91.3%だった)ことを報告し、これにより自分が提唱した後述の原則から「大昔はアメリカ先住民は100%O型だったのではないか」という説を提唱し<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.193]]</ref>、これ以外にドイツのベルンシュタインなども自分の三因子仮説などから原始人類の血液型はO型のみでそこからA・B型が突然変異したのではないかという説を上げていた<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.34]]</ref>が、カナダのアルバータ州でマトソンとシュラーデルが調査したところ、ほとんど混血のない先住民(前述のブラッド族・ブラックフィート族など)にA・O型が多くB・AB型が皆無という地域が見つかった他、オーストラリアでも白人との混血が少ないにもかかわらずA型の多い集団が発見され、原始人類はO型のみではないかという仮説は訂正された<ref>[[#古畑1962|古畑(1962) p.P193-194「5  アメリカ・インディアンの研究」]]</ref>。
 
スナイダーは血液型を人類学に応用する際、以下の必要な四原則を定めている。
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科学的には血液型と性格に関係があるとはされておらず、現時点で知られている血液型性格分類はいずれも正しいとは認められていない<ref name="科学的根拠">
* 縄田健悟 - 血液型と性格の無関連性<ref name=jjpsy.85.13016>縄田健悟(2014)「[https://wwwdoi.jstageorg/10.jst.go.jp/article4992/jjpsy/.85/2/85_85.13016/_pdf 血液型と性格の無関連性 日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠]」『心理学研究』 2014年 85(2), p.148-156. -, {{doi|10.4992/jjpsy.85.13016}}</ref>日米約1万人のデータを調べたが有意差は出なかった。
* 上村晃弘 ほか<ref>上村晃弘, サトウ タツヤ(2006)「[https://doi.org/10.2132/personality.15.33 疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性]」『パーソナリティ研究』2006年 15(1), p.33-47, {{doi|10.2132/personality.15.33}}</ref> - 論理的妥当性を有していない。
* 血液型性格判断をやめよう<ref>広島修道大学人文学部助教授 中西大輔のウェブサイト「[http://www.remus.dti.ne.jp/~nakanisi/ketsueki/index.html 血液型性格判断をやめよう]」 - 血液型性格判断の持つ問題点や差別性が心理学者の立場から詳説されている。</ref>
* 大阪大学大学院 生命機能研究科 認知脳科学研究室「[http://www2.bpe.es.osaka-u.ac.jp/ackamaracka/bloodtype.php 血液型と性格は関係があるか?]」{{リンク切れ|date=2019年2月}}
* [[大村政男]](1990, 1998新訂, 2012新編)『血液型と性格』福村出版
* 村上宣寛(2005)『「心理テスト」はウソでした。受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社
* WU Kunher, LINDSTED Kristian D., LEE Jerry W. (2005). [http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=16459254 Blood type and the five factors of personality in Asia]. - 台湾の論文。この調査では、血液型と外向性の関連性を否定する結果が出た。
* 山崎賢治・坂元章(1992) 「血液型ステレオタイプによる自己成就現象〜全国調査の時系列分析〜」『日本社会心理学会第33回大会発表論文集』 - 血液型性格関連説が社会的に広まり始めた数年後の1978年を起点に1988年まで、日本人延べ32,347人の自己評価による性格の経年変化を調べた。血液型性格分類を信じ、自分の性格をそれに合わせて振る舞っている人が有意に多いことを示した。
* Sakamoto, A., & Yamazaki, K. (2004). Blood-typical personality stereotypes and self-fulfilling prophecy: A natural experiment with time-series data of 1978–1988. ''Progress in Asian Social Psychology, 4'', 239–262. - 上記の山崎賢治・坂元章(1992)と同様の内容。
* 武藤浩二・長島雅浩他(2012)「[https://kaken.nii.ac.jp/pdfja/2011grant/seika/CKAKENHI-19PROJECT-22650191/17301/22650191seika.pdf 教員養成課程における科学リテラシー構築に向けた疑似科学の実証的批判的研究]」『2011年度科研費研究成果報告書』 - 山崎賢治・坂元章(1992)は1978年から1988年までの11年間に毎年約3,000人(延べ32,347人)を解析したものであるが、このデータを2000年代にまで拡張して解析しても、同様の結果がでることが判明した(詳細な人数・年数は報告書には未掲載)。
* 山岡重行 ほか<ref>山岡重行,大村政男,浮谷秀一、「[https://doi.org/10.24534/amjspp.18.0_11 血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2))]」『日本パーソナリティ心理学会大会発表論文集』 18 巻 (2009)
*山岡重行(2009)「[http:, {{doi|10.24534//ciamjspp.nii18.ac.jp0_11}}</naid/110007674296 血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2))]」『日本パーソナリティ心理学会大会発表論文集』ref> - 1999年から2009年までの6600人を調べたところ、血液型性格分類に対するステレオタイプを持つ被験者に限り多くの項目で有意差が出た。</ref>。だが1970年代から2000年代前半にかけて、多くのテレビや書籍が根拠なく分類を広めたため、いまだに血液型と性格の関連性を信じている人もいる<ref>{{Cite web |author=MARI YAMAGUCHI |date=2005-05-06 |url=http://aol.mediresource.com/channel_health_news_details.asp?news_id=6661&news_channel_id=11&channel_id=11 |title=Myth about Japan blood types under attack |work= |publisher=The Canadian Press |accessdate=2014-04-05|archiveurl=http://archive.is/SiAbU |archivedate=2013-02-15}}</ref>。血液型性格分類が広まっているのは、[[日本]]とその影響を受けた[[大韓民国|韓国]]、[[台湾]]といった一部地域だけであり、それ以外の地域では性格と血液型を関係づける習慣がなく、日本の血液型性格分類は奇妙に思われている<ref>海外記事を紹介するnewSphereの記事([http://newsphere.jp/national/20140723-2/ 血液型に対する海外メディアの反応])では「海外では血液型と性格を結びつけることはないためか、日本のこうした慣習は新鮮なようだ」としている。しばしば海外メディアは日本の奇妙(Weird)な習慣として血液型性格診断を紹介している([http://www.nytimes.com/2006/12/14/sports/baseball/14blood.html?_r=1&ref=sports&oref=slogin 米NYタイムズ記事]、[http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-14024206 英BBC記事])</ref>。そもそも血液型への関心自体が薄く、自分の血液型を覚えていない人も多い([[輸血]]が必要な時などは、その場で血液型検査が行われる)<ref>BBC NEWS [http://www.bbc.com/news/magazine-20170787 Japan and blood types: Does it determine personality?]</ref>。
 
血液型によって人の性格を判断し、相手を不快や不安な状態にさせる言動は[[ブラッドタイプ・ハラスメント]](通称'''ブラハラ''')と呼ばれ、近年になり社会問題として取り上げられるようになった<ref name=BPO>{{Cite web |url=http://www.bpo.gr.jp/?p=5125|title=「血液型を扱う番組」に対する要望 |publisher=BPO(放送倫理・番組向上機構)青少年委員会 |accessdate=2014-04-05}}</ref>。採用試験の応募用紙に血液型の記入欄があったため、改善するよう労働局から指導された企業もある<ref name="nawa">縄田健悟(2014)「[https://wwwjjpsy.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/85/2/85_85.13016 /_pdf 血液型と性格の無関連性 ―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―]」『心理学研究』85(2), 148-156.><brref /name="nawa">{{cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140722-OYT8T50051.html|title=科学 血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査|work=読売新聞(YOMIURI ONLONE)|accessdate=2014-8-17}}<br />{{cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/kodomo/newspaper/compare/20140723-OYT8T50076.html?from=yartcl_popin|title=B型はマイペース?…研究者「関係ありません」|work=YOMIURI ONLINE KODOMO|accessdate=2014-8-17}}</ref>。[[厚生労働省]]は「血液型は職務能力や適性とは全く関係ない」と呼びかけている<ref name="nawa"/><ref>厚生労働省の「血液型は職務能力や適性とは全く関係ない」という発表内容は[http://kumamoto-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/riyousha_mokuteki_menu/zigyounusi/kose-saiyou.html 熊本労働局]のサイトで確認できる。2015年10月12日閲覧<br/>ただし、全国の労働局を総括する[http://www2.mhlw.go.jp/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm 厚生労働省本省]のサイトでは同様の発表内容は確認できない。2015年10月19日閲覧</ref>。
 
一方で、免疫系の観点から血液型性格分類を支持する研究<ref>藤田紘一郎(2006)『パラサイト式血液型診断』新潮選書</ref><ref>藤田紘一郎(2010)『血液型の科学』祥伝社新書</ref>や、日本の健常人において、ABO式血液型の遺伝子型と性格特性には有意な関連が認められるとする研究もある<ref>武田真貴子「[https://www.carenet.com/news/general/carenet/40060 本当だった!? 血液型による性格の違い]」ケアネット、2015年6月2日</ref>。