「コンブ」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
m →食材としての利用: リンク修正 using AWB |
jstage 論文 pdf への直接リンクを間接リンクに変更。 |
||
9行目:
|界階級なし = [[SARスーパーグループ]] {{Sname||SAR supergroup|Sar}}
|上門階級なし = [[ストラメノパイル]] {{sname||Stramenopiles}}
|門 = [[不等毛植物門]] {{Sname||Heterokontophyta}}
|綱 = [[褐藻|褐藻綱]] {{Sname||Phaeophyceae}}
|目 = [[コンブ目]] {{Sname|en|Kelp|Laminariales}}
16行目:
|和名 = コンブ科
}}
{{栄養価 | name=りしりこんぶ
{| class="wikitable" style="float:right; clear:right"
|+ 乾物100g中の食物繊維<ref name=suisan>吉江由美子、「[https://
|-
! 項目 !! 分量
30行目:
'''コンブ'''(昆布)は、[[不等毛植物門]][[褐藻|褐藻綱]][[コンブ目]][[コンブ科]] (学名:{{Sname|Laminariaceae}} )に属する数種の[[海藻]]の(一般的)名称である。生物学が生まれる以前からの名称であるため、厳密な定義はできないが、葉の長細い食用のものがコンブと呼ばれる傾向がある。コンブ科に属する海藻でも、[[オオウキモ|オオウキモ(ジャイアントケルプ)]]は通常、コンブとは呼ばれない。
[[生物学]]ではカタカナ書きの「コンブ」が使われるが、単なる「コンブ」という種は存在せず、[[マコンブ]]や[[リシリコンブ]]、[[ミツイシコンブ]]などのように、コンブ科植物の[[種 (分類学)|種]]の[[標準和名]]に用いる。他方、食品など日常的には'''昆布'''や'''こんぶ(こぶ)'''の表記も使われる。[[ウェブスター辞典]]などにもそのままkombuとして記載されている<ref>
== 分類と生態 ==
52行目:
コンブは[[胞子]]によって増殖する。コンブの胞子(大きさは5[[µm]]程度)は2本の[[鞭毛]]を持ち、海中を泳ぐことができるので特に「[[遊走子]](ゆうそうし)」と呼ばれる。遊走子はコンブの表面から放出され、海中の岩などに着生する。着生した遊走子は発芽して「配偶体」という微小な植物体になる。1個の遊走子から1個体の配偶体ができ、雄と雌の配偶体がある。雌雄の配偶体それぞれに卵と精子が作られる。この[[卵]]と[[精子]]が受精し、受精卵が生長すると巨視的な「胞子体」、つまりコンブとなる。
=== 近縁種 ===
コンブ科と同じ[[コンブ目]]に属する近縁なものとしては、[[ワカメ]]などが属する[[アイヌワカメ科]]<ref>[http://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/view/9020251 ワカメ] BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人[[海洋研究開発機構]]構築 2013年6月9日閲覧。</ref>(チガイソ科<ref name="吉田2010">[http://www.sourui-koza.com/kisai_bunrui/mokuroku2010_2.html 吉田忠生・吉永一男 (2010) 日本産海藻目録(2010年改訂版), 藻類 Jpn.J.Phycol. (Sorui) 58:69-122, 2010] 2013年6月9日閲覧。</ref>)や、コンブの原始的な形といわれる[[ツルモ科]]があり<ref>[http://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/view/9019754 コンブ目] BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人[[海洋研究開発機構]]構築 2013年6月7日閲覧。</ref><ref>{{Cite journal |和書|author = 川井浩史|title =海の森をつくる海藻, コンブ類のはなし|date = 2002-07|publisher = 研成社 |journal = プランタ |volume = |number = 82|naid = 40005535422 |pages = 55-62 |ref = }}</ref>、また、[[アラメ]]、[[カジメ]]などが属するレッソニア科がある<ref name="吉田2010"/><ref>[http://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/view/9020280 レッソニア科] BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人[[海洋研究開発機構]]構築 2013年6月9日閲覧。</ref>。
60 ⟶ 61行目:
北海道の[[函館市]]沿岸ではマコンブの養殖が盛んに行われている。マコンブは2年生のため、その養殖には2年の時間と手間が必要であり、2年栽培のものに近い質を目指した1年の促成栽培もある。また、産業上重要種であるミツイシコンブ、リシリコンブ、オニコンブに関しても、その養殖法は確立されている。その他の種に関しては天然の現存量が多い、もしくは前述の種より利用価値が低いことから、養殖法が確立されていない。
コンブの収穫は、小舟から箱メガネなどで海中を見ながら昆布の根元に竿を差し入れ巻き付けてねじり取る<ref name="hokkaido-np-2014-7-15">{{Cite news | url = http://www.hokkaido-np.co.jp/news/agriculture/551355.html | title = 羅臼天然コンブ
=== 産地と種類 ===
68 ⟶ 69行目:
コンブの主な産地は北海道で、特に真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布(三石昆布)、長昆布などが知られる。
; [[マコンブ]] {{Snamei||Saccharina japonica}}<ref name="吉田2015">{{Cite journal |和書 |author=吉田忠生 |coauthors=鈴木雅大、吉永一男 |title=日本産海藻目録(2015年改訂版 |journal=藻類 |volume=63 |issue=3 |date=2015-11-10 |naid=40020642430|pages =144
: 主に[[津軽海峡]]〜[[噴火湾]]沿岸で獲れる道南産のコンブ。非常に多くの銘柄と格付があり、旧[[南茅部町]]周辺(現在は函館市)に産する真昆布が最高級品とされ、「白口浜」という銘柄で呼ばれる。そのほか旧[[恵山町]]周辺で産する黒口浜、津軽海峡の本場折、それ以外の海域で取れたものを場違折などの銘柄に分ける。市場価値もおおよそこの順番となるが、銘柄内でも品質により数段階の等級に分けられる。だし汁は上品で透き通っていて、独特の甘味がある。[[大阪]]ではこの味が好まれ、だし昆布といえば、大抵この真昆布を用い、取扱量は日本国内の
; [[オニコンブ]] {{Snamei||Saccharina japonica}} var. ''diabolica''<ref name="吉田2015"/>(羅臼昆布)
84 ⟶ 85行目:
; [[ナガコンブ]] {{Snamei||Saccharina longissima}}<ref name="吉田2015"/>(長昆布、浜中昆布)
: [[釧路市|釧路]]地方で多く獲れるコンブ。全長15mにも及ぶ。生産量は最も多いが、旨味成分が少ないために一般向けの廉価品。日高昆布同様、柔らかいために一般では昆布巻きなどに用いられる。
; [[ガッガラコンブ]]
: 釧路地方で多く獲れるコンブで、がっがらとも呼ぶ。ナガコンブと同じ海域に生息するが、ナガコンブと異なって、波の穏やかな場所を好む。表面は白粉(マンニット)を帯びており、独特の刺激と苦味がある。主な用途は加工用で、佃煮、塩吹昆布、[[ばってら]]などに利用される。
; [[ネコアシコンブ]]
:分布は釧路沿岸
; [[ガゴメコンブ]](ガゴメ) {{Snamei||Saccharina sculpera}}<ref name="吉田2015"/>(籠目昆布、[[シノニム]]:{{Snamei|Kjellmaniella crassifolia, Saccharina crassifolia}}<ref name="吉田2010"/>)
: 葉(正確には葉状部という)の表面に籠の編み目のような龍紋状凹凸紋様があることからこの名を持つ。北海道函館市の[[津軽海峡]]沿岸〜亀田半島沿岸(旧[[南茅部町]])〜[[室蘭市]]周辺(噴火湾を除く)、
=== 主な陸揚げ漁港 ===
110 ⟶ 111行目:
昆布は、主に乾燥させて[[出汁]]をとるために[[日本料理]]では幅広く使われる。ロシアでは「[[:ru:ламинария|海のキャベツ({{lang|ru|морская капуста}})]]」と呼ばれるが、食べ物としてはそれほどよく知られていない。細長く刻んで'''刻み昆布'''(そうめん昆布)にも加工され'''昆布の佃煮'''が作られる。また、表面を薄く削って'''[[とろろ昆布]]'''や'''おぼろ昆布'''(こちらは糸状ではなく薄く帯状に 削ったもの)にするほか、[[酢昆布]]やおしゃぶり昆布としてお茶請け・おやつにも用いられる。北海道では、湯通しした若い昆布を刺身昆布として食べる習慣がある。結び昆布や昆布巻きなどに用いられる'''棹前昆布'''は「早煮昆布」とも呼ばれ、漁期前に採取された未成熟で薄い昆布をボイルして干したものである。
統計局の家計調査によると、
[[File:Kelp candy.jpg|thumb|left|150px|様々な昆布[[アメ]]]]
昆布は特に豊富な[[食物繊維]]や鉄分、[[カルシウム]]などが含まれており[[健康食品]]として人気が高い。[[池田菊苗]]が[[1908年]]古来から使われる昆布の旨み成分が[[グルタミン酸]]であることを発見し、これが[[うま味調味料]]の[[味の素]]となった。他にも、昆布には人にとって必須元素である[[ヨウ素]]を多量に含有している。
{| class="wikitable floatright" style="text-align:center"
|+ 食品1グラムあたりのヨウ素含有量<ref name="ranking">
{{cite web
|url=http://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html
|title=食品成分ランキング
122 ⟶ 123行目:
|-
! 昆布(素干し)
| 2100-2400
|-
! 昆布(刻み昆布)
| 2300
|-
! 昆布(佃煮)
| 110
|-
! カットわかめ
| 85
|-
! 昆布だし(液体)
| 19-82 <ref name="ranking"/><ref name="日衛誌">
{{cite web
|url=http://www.e-lactancia.org/media/papers/Algas-Yodo-2008.pdf
|title=日本で市販されている食品中のヨウ素含有量
142 ⟶ 143行目:
|page=729
|date=2008/09
|accessdate = 2016年3月4日}}</ref>
|}
[[厚生労働省]]が発表した「日本人の食事摂取基準(2010年版)」によると、ヨウ素の推奨量は成人で約130 µg/日、ヨウ素の耐容上限量は約2.2 mg/日としている<ref>{{PDF|[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4al.pdf 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)6.2.5 ヨウ素]}} 厚生労働省</ref>。コンブは大量にヨウ素を含み、素干しコンブわずか1gでヨウ素の耐容上限量約2.2 mg/日に達する。北海道での海岸性甲状腺腫はヨウ素の過剰摂取が原因であると考えられている。半面、ヨウ素の抗腫瘍作用を利用するため少なくとも3 mg/日を摂取すべきとの説も存在する<ref>布施 養善 「[https://doi.org/10.11299/brte.24.117
コンブの表面に付着している白い粉は味の源となっている[[グルタミン酸]]と[[マンニトール]]で、調理前に水洗いをすると流されてしまう。
161 ⟶ 162行目:
== 語源 ==
和語では古くは、食用の海草一般(特にワカメを指して)を「め」と呼んでいた。漢字では、古くは「軍布」([[万葉集]]、藤原京木簡)、「海布」([[古事記]])、「海藻」(平城京木簡、[[風土記]]、[[正倉院文書]])、「和布」([[色葉字類抄]])<!--
「コンブ」の語源には諸説あるが、特に次の二説が有力である。
176 ⟶ 177行目:
『[[爾雅]]』(紀元前3世紀〜2世紀ころ)には、『綸似綸,組似組,東海有之。』「綸(という発音で呼ばれているもの)は綸に似ている。組(という発音で呼ばれているもの)は組に似ている。これは東海にある」<ref>[http://ctext.org/er-ya/shi-cao#n38782 爾雅 釋草 199]</ref>と書かれており、『呉普本草』(3世紀前半〜中葉)には綸布の別名が昆布であるとする。また、[[陶弘景]](456-536年)は、「昆布」が食べられることを記している<ref name="本草綱目" />。ただし、前述のように、この「昆布」が日本で言う昆布と同じものなのかは定かでない。
日本では、古くから昆布が食べられてきた。縄文時代の遺跡からは、ワカメなどの海藻の植物遺存体が見つかっており<ref>[http://www.hijiki.org/html/content02.htm 日本ひじき協議会]、[http://www.rikenvitamin.jp/wakamekg/vol11.html わかめ健々学々]</ref>、コンブもまた、この時代から食されていたかもしれない。文字資料で残っているものとしては、前述の「軍布(め)」は、音から推測して、コンブであった可能性がある。[[続日本紀]]
[[戦国時代_(日本)|戦国時代]]には、陣中食として昆布が使用されていた<ref>[[武則要秘録]]</ref>。江戸中期には、[[敦賀]]が昆布の唯一中継地となり、[[弘化]]に入ってから江戸や大坂や各地に広がっていく。特に大坂においては問屋が発展した。[[蝦夷地]]([[北海道 (令制)|北海道]])の開発が盛んになると、北前船などの航路の整備、出荷量の増加などにより全国に広まっていく事になる。とりわけ[[琉球王朝]]時代に昆布を中国への朝貢品の主要産物としていて、朝貢には適さない半端モノや下等級品をやむなく工夫して自家消費したことから、のちに伝統料理化する[[沖縄料理]]にはよく用いられる。
|