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Togabi (会話 | 投稿記録)
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書誌情報。
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激しい[[腹痛]]や[[吐き気]]などを伴う<ref>[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html アニサキスによる食中毒を予防しましょう]厚生労働省(2018年5月29日閲覧)。</ref>(詳細は後述)。生きたアニサキスの第3期幼虫(体長は11-37mm位)を経口摂取して発症し、主に ''Anisakis simplex''、''Anisakis physeteris'' 及び ''Pseudoterranova decipiens'' の3種により引き起こされる。
 
1955年、オランダのStraubにより[[ニシン]]の寄生虫による症状が報告され、後にVan Thielにより原因がアニサキスであると特定された<ref>大石圭一、「[https://wwwdoi.jstageorg/10.jst.go.jp/article1271/kagakutoseibutsu1962/.10/9/10_9_598/_pdf.598 ''Terranova decipiens'' による急性胃炎の発見 拡大されるアニサキス症] J-STAGE 日本農芸化学と生物』 1972年 10巻 9号 p.598-599, {{doi|10.1271/kagakutoseibutsu1962.10.598}}</ref>。近縁の[[シュードテラノバ属]]([[鰭脚類]]に寄生する)''Pseudoterranova decipiens'' の幼虫による、同様の症状(シュードテラノバ症)を含める場合もある。
 
中間宿主の[[魚介類]]([[サケ]]、[[サバ]]、[[アジ]]、[[イカ]]、[[タラ]]など)を、加熱が不十分なまま摂食すると感染する恐れがある。アニサキスの幼虫は主に宿主の[[内臓]]に寄生しているため、これを非加熱で食べることは高リスクとなる。筋肉部にも侵入するため、内臓を避けても完全には防げない。
 
=== 日本 ===
[[刺身]]など[[生食]]文化があることから、感染リスクは高いと見られる。1965年頃までは海産魚介類の寄生虫は無害とされ、生きた寄生虫は鮮度の証と見做されたという。1999年にアニサキスが[[食品衛生法]]で[[食中毒]]の原因物質とされ、さらに2012年からは[[保健所]]への届出が義務づけられている<ref>[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html アニサキス症とは] 国立感染症研究所寄生動物部</ref>
2007年度までは年間数例に留まっていたが、2012年以降急増した(2016年は124件)。これは、[[厚生労働省]]が統計項目に加え実態把握が進んだこと、流通の発達と複雑化によりアニサキスが生きたまま食卓に到達する機会が増したことなどが指摘されている<ref>[https://mainichi.jp/articles/20170509/k00/00m/040/080000c 食中毒アニサキス生の魚介類で猛威] 毎日新聞(2017年5月8日)2017年5月9日閲覧</ref>。
1999年にアニサキスが[[食品衛生法]]で[[食中毒]]の原因物質とされ、さらに2012年からは[[保健所]]への届出が義務づけられている<ref>[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html アニサキス症とは] 国立感染症研究所寄生動物部</ref>。
2007年度までは年間数例に留まっていたが、2012年以降急増した(2016年は124件)。
これは、[[厚生労働省]]が統計項目に加え実態把握が進んだこと、流通の発達と複雑化によりアニサキスが生きたまま食卓に到達する機会が増したことなどが指摘されている<ref>[https://mainichi.jp/articles/20170509/k00/00m/040/080000c 食中毒アニサキス生の魚介類で猛威] 毎日新聞(2017年5月8日)2017年5月9日閲覧</ref>。
 
ただし、これは届出を集計したものであり、実際には氷山の一角と見なせる。1997年の厚労省による検討<ref>[http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0909/h0917-1.html 食品媒介の寄生虫疾患対策について 蠕虫類 - 生鮮魚介類により感染するもの]</ref>でも、年間7,147件との試算<ref>[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html アニサキス症とは]</ref>や、2千-3千名以上との推定<ref>「日本におけるAnisakidosisの発生状況の解析(石倉肇、臨床と研究、72巻5号、1995年)」</ref>が挙げられていた。
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なお、激痛の原因は[[アレルギー#I型アレルギー|即時型アレルギー]]によるもの<ref>[http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201005/515124.html アニサキス症はアレルギー 虫体摘出は不要、抗アレルギー薬投与で十分] 日経メディカル 記事:2010年5月25日</ref>とする説がある。
 
* 胃アニサキス症  食後数時間で激しい[[腹痛]]と[[嘔吐]]。吐瀉物が[[胃液]]のみで[[下痢]]がないことが一般的な[[食中毒]]と異なる。
* 腸アニサキス症  [[腸重積症]]<ref>[http://www.jsgs.or.jp/journal/abstract/028102037_j.html 腸重積を伴った腸アニサキス症の1例]日本消化器外科学会雑誌 第28巻 第10号 1995年10月</ref>。
* 腸管外アニサキス症  膵アニサキス症<ref>{{PDFlink|[http://journal.jsgs.or.jp/pdf/040020186.pdf 血清免疫学的検査で膵アニサキス症が疑われた1例]}}</ref>。寄生虫性肉芽腫。
 
=== 治療 ===
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胃アニサキス症は、開腹あるいは[[内視鏡]]手術で幼虫を摘出するのが一般的で、速やかに症状が消失することが多い。
襞(ひだ)の間に穿入し対処が困難な場合、[[造影剤]]の[[アミドトリゾ酸]]([[ガストログラフィン]]{{sup|&reg;}})<ref>串上 元彦ほか. 胃アニサキス内視鏡下摘出におけるガストログラフィン散布の有用性. 日本消化器内視鏡学会雑誌 1994;36(1):144-149. {{doi|10.11280/gee1973b.36.144}}</ref>や、[[メントール]]<ref>椎名正明, 國分茂博、[https://wwwdoi.jstage.jst.goorg/10.jp/article11641/pde/.87/1/87_49/_article/-char/ja/.1_49 当院におけるアニサキス症の現況とl-メントール補助下の虫体摘出] Progress of Digestive Endoscopy,.』 Vol.87 (2015) No.1 p.49-52, {{doi|10.11641/pde.87.1_49}}</ref>の散布により幼虫が腸管内へ戻り、摘出しやすくなることが報告されている。
 
腸アニサキス症は、[[腸閉塞]]など重篤な症状では開腹手術<ref>大島稔ほか. 小腸アニサキス症により腸閉塞をきたした1切除例. 日本腹部救急医学会雑誌 2011;31(3):589-92.</ref><ref>松村勝ほか. 食餌性イレウスで発症した小腸アニサキス症の1例. 日本腹部救急医学会雑誌 2012;32(7):1231-4.</ref><ref>川元真ほか. 腸アニサキス症で小腸穿孔をきたした1例. 日本腹部救急医学会雑誌 2013;33(6):1047-50.</ref>が行われる。手術を避け、上記のアミドトリゾ酸([[回虫]]の[[駆虫薬|虫下し]]でもある)により、駆虫を試みることもある<ref>藤田朋紀. 鉤頭虫の小腸寄生例を含む7例における発見契機、診断法、治療法に関する検討. 第13回日本消化管学会. 2017.</ref>
手術を避け、上記のアミドトリゾ酸([[回虫]]の[[駆虫薬|虫下し]]でもある)により、駆虫を試みることもある<ref>藤田朋紀. 鉤頭虫の小腸寄生例を含む7例における発見契機、診断法、治療法に関する検討. 第13回日本消化管学会. 2017.</ref>。
 
一方、[[ステロイド系抗炎症薬]]<ref>鈴木淳、村田理恵、{{PDFlink|[http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2011/pdf/01-01.pdf わが国におけるアニサキス症とアニサキス属幼線虫] 東京都健康安全研究センター 究年報 第62号(2011)}}</ref>と抗アレルギー薬を投与すると駆虫はできずとも、症状が軽快する症例があることが報告されている<ref>山本馨, 栗原毅, 福生吉裕、「[https://wwwdoi.jstageorg/10.jst.go.jp/article1272/manms/.8/2/8_179/_article/-char/ja/.179 アニサキス症のユニークで簡便な治療法]」日本医科大学医学会雑誌 Vol.2012年 8 (2012) No.2 p.179-180, {{doi|10.1272/manms.8.179}}</ref>。
 
[[正露丸]]に含まれる木[[クレオソート]]にはアニサキスの運動抑制作用があり、症状の改善が期待できる。また[[内視鏡]]での摘出の際の前処置薬としても有効性が期待できる(特許取得済み)<ref>{{Cite press release |title= 大幸薬品が、胃アニサキス症の予防・症状改善のための薬剤として 木クレオソートの新たな活用方法を特許出願 |publisher= 大幸薬品 |date= 2010-12 |url= https://www.seirogan.co.jp/dl_news/file0095.pdf |accessdate=2018-05-16 }}</ref><ref>[https://biosciencedbc.jp/dbsearch/Patent/page/ipdl2_JPP_an_2010154686.html 公開特許公報(A)_消化器アニサキス症用薬剤]</ref>。
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* オランダ:ニシンに対し、-20℃以下で24時間以上(1968年の法律で義務付け)
* アメリカ合衆国:生食用の魚に対し、-35℃以下で15時間、または-20℃以下で7日間([[アメリカ食品医薬品局]]の勧告)
* [[欧州連合]](EU):(EU):生食用の海産魚に対し、-20℃以下で24時間以上(衛生管理基準による指示事項。視覚検査も義務付けられている)
 
近年では目視検査での見落としを減らし、[[紫外線]]、[[ブラックライト]]などを使ってアニサキスを発見する検査装置が、静岡産業社や[[イシダ|株式会社イシダ]]から販売されている<ref>[https://www.asahi.com/articles/DA3S13509579.html 【生で食べるをたどって】(3)アニサキスとの闘い]『朝日新聞』夕刊2018年5月24日(2018年5月29日閲覧)。</ref><ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLASJB27H4S_V00C17A7AM1000/ 「アニサキス」見逃さず イシダ、水産加工用検査装置 切り身に紫外線、光らせ検出]『日本経済新聞』ニュースサイト(2017年7月5日)2018年5月29日閲覧。</ref>。
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[[File:Anisakis in O.keta.jpg|thumb|販売されている 鮭 ''Oncorhynchus keta'' に付着していた生きているアニサキス。]]
* よく噛んで食べる:アニサキスの虫体はかなり強靱で、通常の[[咀嚼]]では噛み切れない。
:* 2017年5月9日放送のテレビ番組『[[スーパーJチャンネル]]』にて「傷つくとすぐ死ぬので、よく噛めば口の中で死滅させられる」と紹介された<ref>[https://www.j-cast.com/2017/05/12297769.html?p=all アニサキス、よく噛めば大丈夫なのか  それだけで胃への侵入は防げない] J-CASTニュース</ref>が、アニサキスを噛み殺すことを意識して、念入りに咀嚼する必要があると見られる<ref>[http://www.outdoorfoodgathering.jp/outdoorfood/%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%82%B5%E3%82%AD%E3%82%B9/ 喰われる前に喰う!寄生虫界の裏番長・アニサキスを積極果敢に食べてみた] 野食ハンマープライス</ref>。
* 薄く切る:虫体を切断できないリスクが高く([[ルイベ]]は凍らせて固定している)、目視による除去が推奨されている。
* [[薬味]]([[ショウガ]]、[[ワサビ]]、[[ニンニク]])、[[酢]]:人が食べられる濃度では殺虫効果はない<ref>{{PDFlink|[http://www.tokyo-eiken.go.jp/issue/journal/2003/pdf/54-1.pdf アニサキス症と天然物由来の有効化学物質の検索]}}東京都健康安全研究センター</ref>。
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== 脚注 ==
{{Reflist|230em}}
 
== 外部リンク ==