「パルメニデス (対話篇)」の版間の差分

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===時代・場面設定===
[[ファイル:Map_ancient_athens.png|thumb|250px|[[アテナイ]]の地図。[[アテナイのアゴラ|アゴラ]]から北西方向、城壁にまたがる一帯に[[ケラメイコス]]区がある。]]
年代不詳(内容からしてソクラテス死後の紀元前390年代<ref>ソクラテスに直接話を聞けない、プラトン異父弟の年齢などから。</ref>)の[[アテナイ]]。[[クラゾメナイ]]から哲学仲間を連れてアテナイを訪れたケパロスは、[[アテナイのアゴラ|アゴラ]]で旧知のアデイマントス、グラウコンと出会い、彼らの異父弟アンティポンについて尋ねる。かつてあったソクラテスとパルメニデス、ゼノンの会話を、ゼノンの仲間だったアテナイ人ピュトドロスから、アンティポンが聞かされて覚えているという話を聞いて、是非それを聞かせてもたいのだという。
 
こうして彼らはアンティポンの家へ行き、アンティポンから話を聞く。そしてケパロスは、その内容を読者に語り始める。
 
[[紀元前450年]]頃、[[パンアテナイア祭]]<ref>[http://kotobank.jp/word/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%A2%E7%A5%AD パンアテナイア祭とは] - [[世界大百科事典]]/[[コトバンク]]</ref>のためにアテナイを訪れていたパルメニデスとゼノンは、[[ケラメイコス]]区にあるピュトドロスの家に滞在していた。当時まだ若かったソクラテスらは、そこを訪ね、ゼノンに論文の朗読をしてもらう。そこにパルメニデス、ピュトドロス、アリストテレスらが外出から帰ってきた。
 
論文の内容についてゼノンに質問していたソクラテスは、そのままパルメニデスと問答を始める。その流れが本篇の4分の1程度続き、残りの4分の3は、パルメニデスによる青年アリストテレスを相手にした問答に占められる。
 
===特徴・補足===
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特に本作で描かれる「老パルメニデスと青年ソクラテスの出会い」は、後続する『テアイテトス』(183E-184A)と『ソピステス』(217C)内で言及されており、中期から後期にまたがる本作『パルメニデス』と後続する三部作『テアイテトス』『ソピステス』『ポリティコス(政治家)』の計4作品は、内容的に緊密につながる1つのグループ(四部作)を形成している<ref name=zen3/>。そしてこれら4作品の内、『パルメニデス』『ソピステス』『ポリティコス(政治家)』の3作品が、[[ディオゲネス・ラエルティオス]]の『[[ギリシア哲学者列伝]]』内で[[プラトン全集#ディオゲネス・ラエルティオスによる分類|「論理的」作品として分類されている]]ことからも分かるように、これらの作品では「論理(学)的」な観点から「イデア論」の掘り下げが行われている。もちろん[[論理哲学]]の色彩が強い[[エレア派]]の関係者がこれらの作品に登場するのも偶然ではない。
 
(ちなみに、本作の直後の作品である『テアイテトス』は、三部作の初っ端として「イデア論」に直接的には踏み込まず、その「前提的な問題」を扱っているので、「イデア論」の問題として本作と内容的に直接つながってくるのは、その後の『ソピステス』である<ref>全集2, 岩波, p.442</ref>。)
 
内容としては、パルメニデスや[[ゼノン (エレア派)|ゼノン]]に代表される(あらゆる存在を「一」なるものと捉える)「[[エレア派]]の[[存在論]]」と、(プラトンが描く)ソクラテスの「イデア論」の「出会い(邂逅)」を描くことがメインテーマであり、作品中では「イデア論」の萌芽となる考えを持ちつつも未だ愛知者(哲学者)の道へと踏み込み切れていない青年ソクラテスが、ゼノンに対して自分の考えをぶつけ、その議論を引き取った老パルメニデスが、愛知(哲学)の先輩として青年ソクラテスの未熟な「イデア論」の難点を指摘しつつ、愛知者(哲学者)としての姿勢や論理的思考・検討・論証のあり方について、身を以て「手ほどき」をする前半部が、作品中の「肝・核心」となっている。かくしてこの出会いが青年ソクラテスを愛知者(哲学者)の道へと本格的に踏み出させるきっかけとなったこと、そしてパルメニデスがソクラテスの愛知(哲学)における実質的な師であったことを示唆する内容となっている。
 
その後の長い後半部は、老パルメニデスが青年アリストテレスとの対話を通して、自身及びエレア派の思想を擁護しながら、精緻な論証がどういうものであるかを披露する教育的な内容となっている。
 
=== 導入 ===
 
=== ソクラテスとゼノンの対話 ===
 
=== ソクラテスとパルメニデスの対話 ===
 
 
=== パルメニデスとアリストテレスの対話 ===
 
本作の内容は、パルメニデスや[[ゼノン (エレア派)|ゼノン]]に代表される「[[エレア派]]の[[存在論]]」と、(プラトンが描く)ソクラテスの「イデア論」の「出会い(邂逅)」を描いたものであり、パルメニデス(エレア派存在論)とソクラテス(イデア論)が互いの思想の難点を指摘し合う短い前半部が、作品の「肝」となっている。その後の長い後半部は、パルメニデスが青年アリストテレスとの対話を通して、自身及びエレア派の思想を擁護しながら、精緻な論証がどういうものであるかの「手ほどき」を行う教育的な内容となっている。
 
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