「空騒ぎ」の版間の差分

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===テーマとモチーフ===
====ジェンダーロール====
[[File:Kill Claudio.jpg|thumb|1905年の上演、ベネディック役のハーバート・ビアボーム・トゥリーとベアトリス役のウィニフレット・エメリー。第2幕第5場の「クローディオを殺して」の場面である。]]
台本においてクローディオとヒーローの関係と同等か、あるいは少し軽いとも言える扱いを受けているにもかかわらず、ベネディックとベアトリスがこの芝居の主な関心の対象とみなされており、今日ではこの2人が主役とみなされているほどである。[[チャールズ2世 (イングランド王)|イングランド王チャールズ2世]]は自分のセカンド・フォリオに載っているこの芝居のタイトルの脇に「ベネディックとベアトリス」と書いてすらいる<ref>G. Blakemore Evans, ''The Riverside Shakespeare'', Houghton Mifflin, 1974; p.&nbsp;327.</ref>。ジェンダーの挑発的な取り扱いはこの芝居の中心になっており、[[ルネサンス]]の文脈において考慮する必要がある。この時期の演劇はジェンダーの伝統的な観念を反映したり強調したりする一方、それを問い直すこともあった<ref name="McEachern">McEachern, ''Much Ado About Nothing'', Arden; 3rd edition, 2005.</ref>。スーザン・D・アムッセンは伝統的なジェンダーのクリシェを動揺させることによって、社会秩序が浸食されるのではないかという不安が増したとしてきている<ref>Amussen, ''Ordered Society'', Columbia University Press (15 April 1994).</ref>。この芝居の人気は、こうしたふるまに対して人々が非常に関心を抱いていることを暗示している。ベネディックは機知に富んだ様子で、女性の口の悪さや性的なふるまいに対する男性の不安を明らかにしている<ref name="McEachern" />。この芝居に登場する[[家父長制]]的な社会において、男性の忠誠は伝統的な名誉や友愛に関する規則と女性に対する優越の感覚によって統御されていた<ref name="McEachern" />。女性が生来、移り気なのではないかという考えが寝取られに関する冗談として何度も表明され、さらにクローディオがヒーローに対する侮辱をすぐに信じてしまうことからもこうした考えの影響が読み取れる。こうしたステレオタイプは、男性は欺瞞的で移り気であり、女性はそれに耐えねばならないというバルサザーの歌によって覆されている。
 
====不貞====