「形而上絵画」の版間の差分

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{{出典の明記|date=2012年12月}}
[[File:Paolo Monti - Servizio fotografico - BEIC 6342540.jpg|thumb|[[ジョルジョ・デ・キリコ]]によるメタフィジカ(形而上絵画の一例 [[:commons:category:Paolo Monti|Paolo Monti]]撮影]]
 
'''形而上絵画'''(けいじじょうかいが、{{Lang-it-short|Pittura Metafisica}})とは、[[20世紀]]初頭に[[ジョルジョ・デ・キリコ]]らによって提唱された、イタリア絵画の芸術動向および[[絵画]]様式{{Sfn|コトバンク}}。形而上派、メタフィジック絵画ともいい、[[シュルレアリスム]]絵画の先駆とされる{{Sfn|コトバンク}}。形而上絵画の兆候はデ・キリコが1909-1910年頃に制作した《神託の謎》《秋の午後の謎》にすでに見られるが{{Sfn|artscape}}、芸術動向としては1917年に[[フェッラーラ]]におけるデ・キリコと[[カルロ・カッラ]]の出会いによって生まれ、翌年[[ジョルジョ・モランディ]]が加わり、さらにデ・キリコの弟・[[アルベルト・サヴィニオ]]や{{仮リンク|フィリッポ・デ・ピシス|wikidata|Q661473}}らが同調するが、1921年には解体した{{Sfn|コトバンク}}。他に{{仮リンク|マリオ・シローニ|wikidata|Q643778}}がいる。
'''形而上絵画'''('''けいじじょうかいが'''、{{Lang-it|[[:wikt:en:pittura|Pittura]] [[:wikt:en:metafisica|Metafisica]]}}, {{Lang-en|[[:wikt:en:Metaphysical|Metaphysical]] Painting}})とは、[[1910年代]]前半に、[[ジョルジョ・デ・キリコ]](Giorgio de Chirico, [[1888年]]-[[1978年]])により始められた、[[絵画]]の[[様式]]。
 
[[アルノルト・ベックリン|アーノルト・ベックリン]](Arnold Böcklin; 1827年-1901年)や[[マックス・クリンガー]](Max Klinger; 1857年-1920年)の影響を受けたとされ、"実際には見ることができないもの(現象・景色)を描く絵画"<!-- 'painting that which cannot be seen'/'Painting landscapes of the mind' -->と描写されている{{Sfn|NYTimes.com}}。[[アンドレ・ブルトン]]は、デ・キリコの形而上絵画作品を、それが引き起こす感覚ゆえに高く評価し、[[シュルレアリスム]]を創始するときの1つの源泉として位置付けた。また、[[マックス・エルンスト]]、[[ルネ・マグリット]]、[[イヴ・タンギー]]、[[ポール・デルヴォー]]、[[ピエール・ロワ]]などへ、強い影響を、場合によっては決定的な影響を与えている。
と描写されている<ref>{{cite web|url=http://www.nytimes.com/2007/02/09/arts/09iht-conway.4533707.html |title=De Chirico: Painting landscapes of the mind - Culture - International Herald Tribune |author=Roderick Conway Morris |date=2007-02-11 |publisher=[[ニューヨーク・タイムズ|NYTimes.com]] |accessdate=2016-08}}</ref>。
 
デ・キリコ、カッラ、モランディといっ作家はいずれも1910年代後半から[[1920年代]]にかけて形而上絵画から離れ、特にデ・キリコは([[パブロ・ピカソ]]の[[キュビスム]]時代の後のように)一転して古典的な画風の作品を描くようになり、ブルトンはこれに対して否定的な評価をしている。1920年代以降になるとデ・キリコは古典的な画風の作品とともに形而上絵画と呼べるような作品を多数制作したするようになるが(特に1910年代の作品とまったく同じ題材の作品を多く制作している)、ブルトンが高く評価しなかったこともあり、1910年代の形而上絵画作品のみが優れているという評価をされることも多い。
デ・キリコの典型的な作品に則して述べれば、形而上絵画の特徴としては、主として[[イタリア広場]]を舞台にしつつ、
 
デ・キリコの典型的な作品に則して述べれば、形而上絵画の特徴としては、主として[[イタリア広場]]を舞台にしつつ、下記のような特徴が挙げられる。これらの特徴の結果、作品を見る者は、静謐、[[郷愁]]、謎、幻惑、困惑、[[不安]]などを感じることが多い。
#画面の左右で、[[遠近法]]における[[焦点]]がずれている。
#[[人間]]がまったく描かれていないか、小さくしか描かれていない。
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#長い[[影]]が描かれている。作品によっては、画面内の[[時計]]が示している時刻と影の長さの辻褄が合わない。例えば、時計は、[[正午]]に比較的近い時刻を示しているのに、影がひどく長い、など。
#画面内に[[汽車]]が描かれており、[[煙]]を出しているので、走っていると思われるのに、煙はまっすぐ上に向かっている。
などが挙げられる。
 
これらの特徴の結果、作品を見る者は、[[静謐]]、[[郷愁]]、[[謎]]、[[:wikt:幻惑|幻惑]]、[[:wikt:困惑|困惑]]、[[不安]]などを感じることが多い。
 
形而上絵画を描いた者としては、他に、[[カルロ・カッラ]](Carlo Carra; [[1881年]]-[[1966年]])や[[ジョルジョ・モランディ]](Giorgio Morandi; [[1890年]]-[[1964年]])が挙げられる。さらに、デ・キリコの弟である[[アルベルト・サヴィニオ]](Alberto Savinio (本名:Andrea de Chirico); 1891年-1952年)や、[[マリオ・シローニ]]([[:en:Mario Sironi]]; 1885年-1961年)、[[フィリッポ・デ・ピシス]]([[:en:Filippo de Pisis]]; 1896年-1956年)などの一部の作品が挙げられることもある。これらの画家をまとめて、形而上派(Scuola Metafisica)または形而上絵画派(Metaphysical Painting Group)と呼ぶこともある。
 
[[アンドレ・ブルトン]]は、デ・キリコの形而上作品を、それが引き起こす感覚ゆえに、高く評価し、[[シュルレアリスム]]を創始するときの1つの源泉として位置付けた。また、[[マックス・エルンスト]]、[[ルネ・マグリット]]、[[イヴ・タンギー]]、[[ポール・デルヴォー]]、[[ピエール・ロワ]]などへ、強い影響を、場合によっては決定的な影響を与えている。
 
デ・キリコ、カッラ、モランディといった作家は、いずれも、1910年代後半から[[1920年代]]にかけて、形而上絵画から離れ、特に、デ・キリコは、([[パブロ・ピカソ|ピカソ]]の[[キュビスム]]時代のあとのように)一転して古典的な画風の作品を描くようになり、これに対しては、ブルトンからは、否定的な評価がなされている。
 
また、デ・キリコは1920年代以降も、古典的な画風の作品とともに、形而上絵画と呼べるような作品を、多数制作した(特に1910年代の作品とまったく同じ題材の作品を多く制作している)が、ブルトンが高く評価しなかったこともあり、1910年代の形而上絵画作品のみが優れているという評価をされることも多い。
 
なお、デ・キリコの形而上作品は、1910年代だけで、100点以上存在する。
 
==形而上絵画の始まり==
デ・キリコの作品で、形而上絵画の嚆矢としては、1910年頃に制作されたとされる、次の油彩画4作品が挙げられることが多い。
 
デ・キリコの作品で、形而上絵画の嚆矢としては、1910年頃に制作されたとされる、次下記の油彩画4作品が挙げられることが多い。なお、デ・キリコの形而上絵画作品は、1910年代だけで100点以上存在する
*神託の謎(Enigma of the Oracle/Enigme de l'oracle)
*秋の午後の謎(Enigma of an Autumnal Afternoon/Enigme d'un apres-midi d'antomne)
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*自画像(Self Portrait (Autoportrait)/Portrait de l'artiste par lui-même(Autoportrait))
 
== 脚註 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{reflist}}
 
==関連項目 参考文献 ==
*{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/形而上絵画 |title=形而上絵画 |publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2019-06-04 |ref=コトバンク }}
*{{Cite web |url=https://artscape.jp/artword/index.php/形而上絵画 |title=形而上絵画 |publisher=artscape([[大日本印刷]]) |accessdate=2019-06-04 |ref=artscape }}
と描写されている<ref>*{{cite web |url=http://www.nytimes.com/2007/02/09/arts/09iht-conway.4533707.html |title=De Chirico: Painting landscapes of the mind - Culture - International Herald Tribune |author=Roderick Conway Morris |date=2007-02-11 |publisher=[[ニューヨーク・タイムズ|NYTimes.com]] |accessdate=2016-08 |ref=NYTimes.com}}</ref>。
 
{{commonscat|Metaphysical art}}
 
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[[Category:絵画技20世紀の美術]]
[[Category:イタリアの美術]]
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