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{{Otheruses|ギリシア神話の女神|面積の単位|平方メートル}}
[[ファイル:Canova-Hebe 30 degree view.jpg|thumb|1800-1805年に[[アントニオ・カノーヴァ]]が彫られたヘーベー像 ([[エルミタージュ美術館]]蔵)]]
'''ヘーベー'''({{lang-grc-short|'''Ἥβη''', ''Hēbē''}})は、[[ギリシア神話]]の[[青春]]の[[女神]]である。元々、ヘーベーとは「若さ」、「青春(の美)」の意味で、青春が神格化された女神である。[[日本語]]では[[長母音]]を省略して'''ヘベ'''とも呼ぶ
 
[[日本語]]では、[[長母音]]を省略して'''ヘベ'''とも呼ぶ。
 
== 概説 ==
[[ゼウス]]と[[ヘーラー]]の娘で、[[アレース]]、[[エイレイテュイア]]と兄妹<ref>ヘーシオドス『神統記』921行-923行。</ref><ref>アポロドーロス、1巻3・1。</ref>。[[ヘーラクレース]]と結婚し<ref>ヘーシオドス『神統記』950行-955行。</ref>、二柱の息子アレクシアレースとアニーケートスを生んだとされる<ref>アポロドーロス、2巻7・7。</ref><ref name="G">フェリックス・ギラン『ギリシア神話』。</ref>。『[[神統記]]』では黄金の冠を被り<ref>ヘーシオドス『神統記』17行。</ref>、黄金の沓を履くと描写されており<ref>ヘーシオドス『神統記』952行。</ref>、[[オリンポス山|オリュムポス山]]の神々の宴会における給仕係役割である。を担い、青春を司る女神であるが故ふさわしく、神々の若さを保つための不死の霊薬である[[ネクター|ネクタール]]([[神酒]])や[[アムブロシアー]]を出す役目を負っているのである。
 
[[ファイル:Hebe.jpg|thumb|left|160px|酒壺を持つヘーベー]]
ヘーラーの子供たちの中で、もっとも母親に愛された娘で、ゼウスはヘーラーを懲らしめるためにヘーベーを天上から吊るし上げてヘーラーの反省を迫ったことがある。また、ヘーベーはヘーラーの別神格ともいわれる<ref>金光仁三郎『知っておきたい 世界の女神・天女・鬼女』19頁。</ref>。
 
絶世の美少年として知られる[[イリオス|トロイア]]の王子[[ガニュメーデース]]がゼウスによって神々の給仕係に任命されたため、ヘーベーと[[ヘーパイストス]]は任を解かれた([[<ref>ルキアーノス『神々の対話』。</ref>。ヘーラクレース]]との結婚に伴いヘーベーは給仕係を引退したともいわれる<ref>『爆笑ギリシア神話3』。</ref>ヘーラーはこれに対しゼウスに抗議したが、ゼウスは応じることなく、ガニュメーデースの姿を天上に写して[[みずがめ座]]とした。
 
英雄ヘーラクレースが入神した際、彼が人間であった時代に様々な嫌がらせをしてきたヘーラーは、最愛の娘ヘーベーをヘーラクレースの妻として与え、義理の息子とすることで、両者が和解したことを他の神々に納得させた。後にヘーラクレースの息子達が[[エウリュステウス]]に迫害を受けた際には、ヘーラクレースの従者にしてその息子達の庇護者だった[[イオラーオス]]を若返らせてエウリュステウスを討ち取るのに助力している。また、ヘーラクレースとの間にアレクシアレースとアニーケートスという二柱の息子を儲けている<ref name="G">フェリックス・ギラン『ギリシア神話』。</ref>
 
その一方では、幼い者を成長させる事も可能である。英雄[[アルクマイオーン]]が[[カリロエー]]と結婚する以前に結婚していた[[アルシノエー]]が、アルクマイオーンにカリロエーが自身がアルクマイオーンと結婚した際に渡された、結納品の宝物である首飾りを取り返そうとした事を怒り、父[[ペーゲウス]]の息子たちにアルクマイオーンを殺させた。それを知ったカリロエーはペーゲウスを憎み、たまたま彼女と浮気しようと近づいたゼウスに自分の幼い子供達を大人にするように願う。それを聞き入れたゼウスはヘーベーを遣わして子供達を成長させ、子供達は父の敵を討った。
 
[[ファイル:Jacques Louis Dubois - Hebe.jpg|thumb|300px|ゼウスの[[鷹]]を飼養するヘーベー]]
ヘーベーは穏やかな女神で、オリュムポスのなかでも慎ましい役割をしている。神々の宴会で神酒(ネクタール)をついでまわる他に、宴会で舞踊を舞ったりした。能天気な一面があり、前述する通りゼウスがヘーベーを天井から吊り下げた際、彼女は気にせず笑っていた。また、『[[イーリアス]]』では[[アレース]]が[[ディオメーデース]]と闘って負傷した際にアレースの入浴を手伝い傷口を洗っている<ref>『イー・ローマ神話事典5巻。</ref>。
 
ヘーベーは[[アテナイ|アテーナイ]]の[[キュノサルゲス]]の神殿に、ヘーラクレース、[[アルクメーネー]]、イオラーオスと共に祀られていた<ref>パウサニアス、1巻19・3。</ref><ref name="G" />。また、シキュオプリウス市の[[アクロポリス]]にもその聖所があった。このヘーベーの聖所は同市では最も尊崇され、祀られている女神はもともと'''ガニュメーダー'''と呼ばれていたが、後にヘーベーと呼ばれるようになった<ref name="G" >パウサニアス、2巻13・4。</ref>。
 
美術作品ではヘーベーは袖のないドレスを着ている美しい乙女の姿で表現されることが多い。酒杯と水差しを持ち、背中に翼を生やした姿で描かれることもある<ref name="G" />。『[[神統記]]』では黄金の冠を被り<ref>ヘーシオドス『神統記』17。</ref>、黄金の沓を履くと描写される<ref>ヘーシオドス『神統記』952。</ref>。
 
== ローマ神話での対応 ==
[[ローマ神話]]では、[[ユウェンタース]]をヘーベーに対応させた<ref>高津春繁『ギリシア・ローマ神話事典』p.232。</ref>
 
== 出典 ==
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== 参考書籍 ==
* [[ロバート・グレーヴス|ロバート・グレイヴズ]] 『ギリシア神話』 一巻本 [[紀伊國屋書店]]
* [[アポロドーロス]] 『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳 [[岩波文庫]]
* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
* [[ヘシオドス]]『[[神統記]]』[[廣川洋一]]訳、岩波文庫(1984年)
* [[ホメロス]]『イリアス(上)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1992年)
* フェリックス・ギラン 『ギリシア神話』 [[青土社]]
* [[ルキアーノス]] 『神々の対話 他六篇』 [[呉茂一]]・山田潤二訳、岩波文庫(1953年)
* [[シブサワ・コウ]] 『爆笑ギリシア神話2』 [[コーエー|光栄]]
* シブサワ・コウ [[高津春繁]]爆笑ギリシア・ローマ神話3辞典 光栄、[[岩波書店]](1960年)
* フェリックス・ギラン 『ギリシア神話』 中島健訳、[[青土社]](1991年)
* マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル 『ギリシア・ローマ神話事典』 [[大修館書店]]
* [[ロバート・グレーヴス|ロバート・グレイヴズ]] 『ギリシア神話』 一巻本 [[紀伊國屋書店]]
* [[シブサワ・コウ]] 『爆笑ギリシア神話23』 [[コーエー|光栄]]
 
== 関連項目 ==