「呼吸」の版間の差分
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; 解糖系(10段階の酵素反応より成る)
: '''グルコース'''
: ピルビン酸から[[乳酸]]・[[エタノール]]へと[[発酵]]する過程も解糖系に含むのが普通である。
; クエン酸回路
:; ピルビン酸脱炭酸反応
:: 2 ピルビン酸
:: 解糖系とクエン酸回路を結ぶ反応で、しばしばクエン酸回路にも解糖系にも分類される。
:; 狭義のクエン酸回路 (10段階の酵素反応より成る)
:: '''2 アセチル'''<ce>CoA (CH3COSCoA) + 6NAD+ + 2FAD + 2GTP + 2Pi + 6H2O -> 4CO2 {+} 6NADH + 6H+ + 2FADH2 + 2GTP + 2HSCoA</ce>
:: スクシニルCoA合成酵素を通じてGTPからは当量のATPが合成される。
; 酸化的リン酸化
:; 電子伝達系(4種類の呼吸鎖複合体による3段階の酸化還元反応が関与する)
:: <ce>10NADH + 10H+ {+} 2FADH2 + 6O2 -> 10NAD+ + 2FAD + 12H2O </ce>
:; ATP合成酵素によるATP合成反応
:: (10 NADH由来):
:: (2 FADH<sub>2</sub>由来):
:: NADHからは約3当量、FADH<sub>2</sub>からは約2当量のATPが合成されるとされてきた。<ref name="Ochoa">Ochoa, S. ''J. Biol. Chem.'' '''1943''', ''151'', 493–505.</ref>
以上の反応をすべてまとめると
:グルコース
この式は高校生物で学習する'''呼吸の収支式'''と呼ばれる。酵素による約25の反応がこの代謝には関わっており、グルコースの持つエネルギーの有効利用に役立っている。グルコースの酸化反応{{chem|(C
ただし、近年の測定結果や理論面からは、グルコース1分子から38当量のATPが合成されるとする解釈は支持されていない。以下問題点を列挙すると:
57行目:
* ATP合成酵素においては3当量のプロトンの流入でATP合成酵素が1回転し、ATPが1分子合成されると考えられている。さらにミトコンドリア内で合成したATPを細胞内へ輸送する際に1当量のプロトンを消費するため、細胞質基質で消費するためのATPの合成に必要なプロトンの当量(H<sup>+</sup>/ATP比)は4となる。理論上のP/O 合成比は、NADHで2.5 (= 10/4)、FADH<sub>2</sub>で1.5 (= 6/4)となり、グルコース1分子当たり31または29.5分子のATPが合成されることになる(Glu/AspシャトルやGTP由来のATP輸送によるプロトン消費(共に2 H<sup>+</sup>、0.5 ATP相当の消失)を無視すると32または30分子)。<ref name="Hinkle1991">Hinkle, P. C.; Kumar, M. A.; Resetar, A.; Harris, D. L. ''Biochemistry'' '''1991''', ''30'', 3576–3582.</ref> 最近の生化学の教科書ではこちらの説を解説するようになってきている。
* ごく最近になって、1個のプロトンの流入でATP合成酵素が1/3回転ではなく、3/10回転することが構造の詳細な解析から示されており、<ref>Stock, D.; Leslie, A. G. W.; Walker, J. E. ''Science'' '''1999''', ''286'', 1700–1705.</ref> H<sup>+</sup>/ATP比も整数ではない(H<sup>+</sup>/ATP 比 = 4.33 (= 13/3 = 10/3 + 1))と指摘されている。この場合は理論上のP/O 合成比が、NADHで約2.31 (= 10/(13/3))、FADH<sub>2</sub>で約1.38 (= 6/(13/3))となり、グルコース当たり約28.92または約27.54当量のATPが合成される。<ref name="Hinkle2005">Hinkle, P. C. ''Biochim. Biophys. Acta'' '''2005''', ''1706'', 1–11.</ref> なおグルコースに対して28.92, 27.54当量のATPが生成したとすると標準状態における自由エネルギー変換効率は31.8%, 30.2%と計算されるが、実際の生体反応では反応基質の濃度調整により最大で60%前後のエネルギー変換効率が生み出されていると推定されている。
以下の表に哺乳動物におけるグルコース ({{chem|C
{|class="wikitable" style="text-align:left;font-size:small;"
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!H<sup>+</sup>/ATP比 = 13/3<ref name="Hinkle2005"/>
|-
|rowspan="2"|
|Glu/Asp||rowspan="2"|2 NADH + 2 ATP||rowspan="2"|8 NADH + 2 FADH<sub>2</sub> + 2 GTP||112 (10×10+2×6)||'''38''' (10×3+2×2+4)||31 ((112–4))/4+4)||28.92 ((112–4)/(13/3)+4)
|-
|αGP||104 (8×10+4×6)||36 (8×3+4×2+4)||29.5 ((104–2)/4+4)||27.54 ((104–2)/(13/3)+4)
|-
|rowspan="2"|
</ce>||Glu/Asp||rowspan="2"|2 NADH + 3 ATP||rowspan="2"|8 NADH + 2 FADH<sub>2</sub> + 2 GTP||112 (10×10+2×6)||'''39''' (10×3+2×2+5)||32 ((112–4)/4+5)||29.92 ((112–4)/(13/3)+5)▼
▲|Glu/Asp||rowspan="2"|2 NADH + 3 ATP||rowspan="2"|8 NADH + 2 FADH<sub>2</sub> + 2 GTP||112 (10×10+2×6)||'''39''' (10×3+2×2+5)||32 ((112–4)/4+5)||29.92 ((112–4)/(13/3)+5)
|-
|αGP||104 (8×10+4×6)||37 (8×3+4×2+5)||30.5 ((104–2)/4+5)||28.54 ((104–2)/(13/3)+5)
|-
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| || – ATP (2 ATP 相当,
ATP → [[アデニル酸|AMP]] + [[ピロリン酸|PP<sub>i</sub>]])
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