「スキージャンプ (航空)」の版間の差分

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== 黎明期 ==
[[File:830 Squadron Barracuda taking off from HMS Furious at the start of Operation Mascot.jpg|thumb|250px|「フューリアス」に仮設されたスキージャンプ台]]
[[航空母艦]]が実用化された直後は、まだ航空機が軽かったため、艦上機自身が滑走して得た力と母艦が風上に突進することで生じる力をあわせた合成風力だけでも、十分に発艦することができた。その後、[[第二次世界大戦]]期になると、航空機の重量が増して、発艦を補助する手段が求められるようになったため、[[カタパルト]]が用いられるようになった{{Sfn|Green|2015|p=57}}。
 
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== VTOL機での使用 (STOVL方式) ==
[[File:Sea Harrier FRS1 800 NAS taking off HMS Invincible (R05) 1990.JPEG|thumb|250px|「[[インヴィンシブル (空母)|インヴィンシブル]]」のスキージャンプ勾配を利用してからする[[BAe シーハリアー|シーハリアーFRS.1]]]]
[[1960年代]]、イギリスの[[ホーカー・シドレー]]社は、世界初の実用[[垂直離着陸機]]として[[ホーカー・シドレー ハリアー|ハリアー]]の開発を進めていた。まずは[[イギリス空軍|空軍]]向けの[[攻撃機]]版が開発されていたが、[[1969年]]頃からは、海軍向けの[[艦上戦闘機]]版の研究も着手された{{Sfn|Calvert|2019}}。
 
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このアイデアはしばらく顧みられなかったが、[[1976年]]にホーカー・シドレー社のフォザード技師長によって採択され、本格的な研究が開始された。この結果、兵装最大積載状態であれば短距離離陸(STO)距離を50パーセント以上減少させ、またSTO距離を一定とした場合はミリタリーロードを30パーセント増加できると考えられた。例えば25ノットの向かい風がある時、スキージャンプ台を用いずにシーハリアーが発進する場合は、{{Convert|600|ft|m}}の滑走で{{Convert|10000|lb|kg}}の燃料・兵装を搭載して発進することができるのに対し、勾配角15度のスキージャンプ台を用いた場合は、同じ滑走距離で搭載量を{{Convert|13000|lb|kg}}に増大させるか、同じ搭載量で滑走距離を{{Convert|240|ft|m}}に短縮させられると算出された{{Sfn|Calvert|2019}}。
 
[[ベッドフォード (イングランド)|ベッドフォード]]の使用されていない[[誘導路]]に実験用のスキージャンプ台が設置されて、1977年8月より試験飛行が開始された。試験には、空軍の[[ホーカー・シドレー_ハリアー#ハリアーGR.1|ハリアーGR.1]]と、BAeがデモンストレーション用に自費製作した複座のハリアーT.52が使用された。この結果、スキージャンプ台の恩恵が確認され、試験を担当したテストパイロットであるジョン・ファーレイは、「これまで経験したことのない、総合的に[[Win-Win]]の最善のアイデア」と評した。当初、勾配角は6度とされていたが、後に20度までの様々な角度で試験が行われ、12度が最善であると結論された{{Sfn|Calvert|2019}}。
 
インヴィンシブル級の1・2番艦では、艦首に設置された[[シーダート (ミサイル)|シーダート]][[艦対空ミサイル#艦隊防空ミサイル|艦隊防空ミサイル]]の発射機との干渉を避けるため、勾配角は7度とされた。その後、3番艦では設計を修正する時間的な余裕があったため、勾配角12度とされており、1・2番艦でも後に同様に改修された{{Sfn|Calvert|2019}}。
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ただしSTOBAR方式では、発艦のためにCATOBAR方式よりも長い滑走レーンを必要とし、航空機の運用効率が低くなる{{Sfn|小原|2019}}。[[最大離陸重量]]も制約され、例えば[[Su-33 (航空機)|Su-33]]シリーズの場合、発艦可能な重量は26トンまでとされている<ref>{{Cite news|url=http://archive.defensenews.com/article/20130928/DEFREG/309280009/Chinese-Media-Takes-Aim-J-15-Fighter|title=Chinese Media Takes Aim at J-15 Fighter|archiveurl=http://webarchive.loc.gov/all/20150810120751/http://archive.defensenews.com/article/20130928/DEFREG/309280009/Chinese-Media-Takes-Aim-J-15-Fighter#|archivedate=2015-08-10|newspaper=[[:en:Defense News|Defense News]]|author=Wendell Minnick|date=28 September 2013}}</ref>。このため、STOBAR方式は、CATOBAR方式の導入を志向する海軍にとっての過渡的な存在とも評されている{{Sfn|井上|2019}}。
 
またこのような艦上での運用とは別に、[[アメリカ軍]]では、地上基地でのスキージャンプの利用に着目した。これは、戦時に攻撃を受けて[[滑走路]]が破壊されても、スキージャンプを使えば短い誘導路からでも発進できると考えたもので、1980年10月に海軍の[[T-2 (航空機・アメリカ)|T-2C]]を用いてデモンストレーションを行った後<ref>{{Cite journal|author1=J.W. Clark|author2=M. Walters|title=CTOL ski jump - Analysis, simulation, and flight test|volume=23|number=5|year=1986|journal=J.Journal of Aircraft|publisher=[[アメリカ航空宇宙学会]]|url=https://arc.aiaa.org/doi/10.2514/3.45319}}</ref>、1982年から1986年にかけて、[[F-14 (戦闘機)|F-14]]や[[F/A-18 (航空機)|F/A-18]]、[[F-15 (戦闘機)|F-15]]や[[F-16 (戦闘機)|F-16]]、[[A-10 (航空機)|A-10]]を用いて発進実験が行われた。この試験の際には、9度のスキージャンプ台を使えば、総重量15トンの状態のF/A-18の滑走距離を50パーセント近く短縮し、117メートルの滑走で離陸させることができたとされる{{Sfn|岡部|2016}}。
 
== 脚注 ==