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== 法的規制 ==
*[[労働基準法]]については、以下では条数のみ記す。
 
;休業期間
:女性労働者が妊娠しているか否かについて事業主は'''早期に把握'''し、適切な対応を図ることが必要であり、そのため、事業場において女性労働者からの申出、[[診断書]]の提出等所要の手続を定め、適切に運用されることが望ましい(平成18年10月11日基発1011001号)。以下の規定は、女性が管理監督者等の、いわゆる第41条該当者であっても同様に適用される
:産前においては、[[使用者]]は、6週間(多胎[[妊娠]]の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が'''休業を請求した場合'''においては、その者を就業させてはならない(第65条1項)。起算日は原則として'''自然分娩の予定日'''であるが、医師の診断の元、予定帝王切開になった場合は、帝王切開オペ日が予定日となり、その日が起算日となる。(産前休暇に入る前に女性が請求した場合のみによる)実際の出産日が予定日後である場合、休業期間はその遅れた日数分延長される。なお、出産当日は「産前」に含まれる(昭和25年3月31日基収4057号)。女性が請求しなければ、出産日まで就業させて差し支えない。
 
:産後においては、使用者は、産後8週間を経過しない女性を、就業させることができない。ただし、産後6週間を経過した女性が'''請求した場合'''において、その者について[[医師]]が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない(第65条2項)。起算日は、1項とは異なり、'''現実の出産日'''である。
:なお、[[船員]]には労働基準法の妊産婦等の規定は適用されないが(第116条)、妊娠中の女子を船内で使用することは原則禁止される([[船員法]]第87条)。産後8週及び軽易な作業については船員についても労働基準法と同様である。
:この場合の「出産」には、[[妊娠]]第4月以降の[[流産]]、[[早産]]及び[[妊娠中絶|人工妊娠中絶]]<ref>妊娠中絶の場合は産前6週の問題は生じない(昭和26年4月2日婦発113号)。</ref>、並びに、[[死産]]の場合も含む(昭和23年12月23日基発1885号、昭和26年4月2日婦発113号)。
 
:使用者は、'''妊娠中の女性'''が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない(第65条3項)。この「軽易な業務」については、他に軽易な業務がない場合において新たに軽易な業務を創設してまで与える義務はない(昭和61年3月20日基発151号)。また軽易な業務がないためにやむを得ず休業する場合においては、[[休業手当]]を支払う必要はない。
;=== 休業期間 ===
:産前産後休業期間中に、その女性労働者が属する[[労働組合]]による[[争議行為]]([[ストライキ]]等)が行われたとしても、その期間は当該女性労働者の産前産後休業として取り扱われる(昭和27年7月25日基収383号)。
産前においては、[[使用者]]は、6週間(多胎[[妊娠]]の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が'''休業を請求した場合'''においては、その者を就業させてはならない(第65条1項)。ILO183号条約に対応している。
:女性労働者が妊娠しているか否かについて事業主は'''早期に把握'''し、適切な対応を図ることが必要であり、そのため、事業場において女性労働者からの申出、[[診断書]]の提出等所要の手続を定め、適切に運用されることが望ましい(平成18年10月11日基発1011001号)。
*起算日は原則として'''自然分娩の予定日'''である。
:これらの規定は女性が管理監督者等の、いわゆる第41条該当者であっても同様に適用される。
**[[医師]]の診断の元、予定日が変更となった場合(予定[[帝王切開]]になった場合等)は、その日を起算日とする取り扱いも可能であるが、実際には[[就業規則]]等の定めによる。
:なお、[[船員]]には労働基準法の妊産婦等の規定は適用されないが(第116条)、妊娠中の女子を船内で使用することは原則禁止される([[船員法]]第87条)。産後8週及び軽易な作業については船員についても労働基準法と同様である。
*実際の出産日が予定日後である場合、休業期間はその遅れた日数分延長される。なお、出産当日は「産前」に含まれる(昭和25年3月31日基収4057号)。
;解雇の制限
*女性が請求しなければ、出産日まで就業させて差し支えない。
:使用者は、産前産後休業期間中、及びその後30日間は、当該労働者を[[解雇]]してはならない(第19条)。[[懲戒解雇]]の場合であっても同様である。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合には、行政官庁(所轄[[労働基準監督署]]長)の認定を受けた上で解雇制限が解除される。船員にも同様の規定がある(船員法第44条の2)<ref>船員の解雇制限の解除についての認定は、[[国土交通大臣]]が行う。</ref>。なお、産前6週間の女性が休業を請求せずに就労している場合は解雇制限の対象とはならないが、労働基準監督署ではその期間は当該女性労働者を解雇しないよう[[行政指導]]を行っている(昭和25年6月16日基収1526号)。
 
:事業主は、その[[雇用]]する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求し、又は産前産後休業をしたこと等を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならず([[男女雇用機会均等法]]第9条3項)、妊娠中及び産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇その他不利益な取扱いは、[[無効]]となる(最判平26.10.23)。ただし、事業主が当該解雇がこれらを理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない(男女雇用機会均等法第9条4項)。男女雇用機会均等法に罰則の定めはないが、[[厚生労働大臣]]は、違反した事業主に対して勧告することができ、事業主が勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる(男女雇用機会均等法第29条、第30条)。また事業主が職場における産前産後休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、男女雇用機会均等法上の各種の雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより当該労働者が離職した場合、当該離職者は[[雇用保険]]の基本手当の受給に当たり、「特定受給資格者」として扱われ、一般の受給資格者よりも所定給付日数が多くなる。また特定受給資格者を発生させた事業主は、雇用保険法上の各種の助成金を当分の間受けられなくなる。
:産後においては、使用者は、産後8週間を経過しない女性を、就業させることができない。ただし、産後6週間を経過した女性が'''請求した場合'''において、その者について[[医師]]が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない(第65条2項)。起算日は、1項とは異なり、'''現実の出産日'''である
*起算日は、1項とは異なり、'''現実の出産日'''である。
:*この場合の「出産」には、[[妊娠]]第4月以降の[[流産]]、[[早産]]及び[[妊娠中絶|人工妊娠中絶]]<ref>妊娠中絶の場合は産前6週の問題は生じない(昭和26年4月2日婦発113号)。</ref>、並びに、[[死産]]の場合も含む(昭和23年12月23日基発1885号、昭和26年4月2日婦発113号)。
:*産前産後休業期間中に、その女性労働者が属する[[労働組合]]による[[争議行為]]([[ストライキ]]等)が行われたとしても、その期間は当該女性労働者の産前産後休業として取り扱われる(昭和27年7月25日基収383号)。
 
=== 軽易な業務への転換 ===
:使用者は、'''妊娠中の女性'''が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない(第65条3項)。この「軽易な業務」については、他に軽易な業務がない場合において新たに軽易な業務を創設してまで与える義務はない(昭和61年3月20日基発151号)。また軽易な業務がないためにやむを得ず休業する場合においては、[[休業手当]]を支払う必要はない。
 
;=== 解雇の制限 ===
:使用者は、産前産後休業期間中、及びその後30日間は、当該労働者を[[解雇]]してはならない(第19条)。[[懲戒解雇]]の場合であっても同様である。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合には、行政官庁(所轄[[労働基準監督署]]長)の認定を受けた上で解雇制限が解除される。船員にも同様の規定がある(船員法第44条の2)<ref>船員の解雇制限の解除についての認定は、[[国土交通大臣]]が行う。</ref>。なお、産前6週間の女性が休業を請求せずに就労している場合は解雇制限の対象とはならないが、労働基準監督署ではその期間は当該女性労働者を解雇しないよう[[行政指導]]を行っている(昭和25年6月16日基収1526号)。
 
:事業主は、その[[雇用]]する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求し、又は産前産後休業をしたこと等を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならず([[男女雇用機会均等法]]第9条3項)、妊娠中及び産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇その他不利益な取扱いは、[[無効]]となる(最判平26.10.23)。ただし、事業主が当該解雇がこれらを理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない(男女雇用機会均等法第9条4項)。男女雇用機会均等法に罰則の定めはないが、[[厚生労働大臣]]は、違反した事業主に対して勧告することができ、事業主が勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる(男女雇用機会均等法第29条、第30条)。また事業主が職場における産前産後休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、男女雇用機会均等法上の各種の雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより当該労働者が離職した場合、当該離職者は[[雇用保険]]の基本手当の受給に当たり、「特定受給資格者」として扱われ、一般の受給資格者よりも所定給付日数が多くなる。また特定受給資格者を発生させた事業主は、雇用保険法上の各種の助成金を当分の間受けられなくなる。
 
== 賃金支払等 ==