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[[File:The viaduct La Polvorilla, Salta Argentina.jpg|thumb|280px|鋼橋。]]
== 語源 ==
日本語の「はがね」の由来は[[刃物]]に用いる[[金属]]を意味する「{{読み仮名|刃金|はがね}}」である。かつて鋼とは焼入れによって硬化する鉄合金をさし、[[鉄器時代]]以来、[[鍛造]][[鍛接]]、熱処理や研磨技術によって刃物類が製作されてきた。ここを原点にさまざまな鉄合金が発達し、そのつど鋼の定義は拡大解釈されて現在に至っている。現在では刃物専用以外でも、[[精錬]]技術によって造られた鉄鋼材全般を{{読み仮名|鋼|はがね}}・{{読み仮名|鋼鉄|こうてつ}}と呼び、[[錬鉄]]・[[鋳鋼]]などを含めることがある。
現在では刃物専用以外でも、[[精錬]]技術によって造られた鉄鋼材全般を{{読み仮名|鋼|はがね}}・{{読み仮名|鋼鉄|こうてつ}}と呼び、[[錬鉄]]・[[鋳鋼]]などを含めることがある。
 
鉄鋼はドイツ語の「{{lang|de|Eisen und Stahl}}」の訳が語源とされているが、日本で最初に「鉄鋼」という呼び名が使われたのは雲伯鉄鋼[[合資会社]](現・[[日立金属]]安来工場)の社名が原点とされている{{要出典|date=2009年4月}}。雲伯鉄鋼合資会社による鉄鋼製品の源流は「[[たたら製鉄]]」であるが、ここでいう「鉄鋼」とは[[特許|新案特許]]「製鋼法」([[明治]]39年([[1907年]])取得)からなる錬鉄をさし、新[[特許法]]の錬鉄(伊部式包丁鉄と言う)が出発となる。
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== 定義 ==
[[File:Diag phase fer carbone1.PNG|thumb|380px|Fe-C[[状態図]]<br />炭素量と温度により、鉄はさまざまな組織となる。]]
鉄の性質は、含まれる[[炭素]]の量で大きく変化する。[[鉄鉱石]]を還元したものを[[銑鉄]]といい、4%4%から5%5%の炭素を含む。これをそのまま[[鋳型]]に流したものが「鋳物」とも呼ばれる[[鋳鉄]]である。鋳鉄はもろくて[[可塑性]]がなく、鎚で叩いたり、曲げたりすると割れてしまう。
 
もろい銑鉄から炭素を除去すると、鉄は強靭になるとともに可塑性を持ち、叩いて整形([[鍛造]])したり、曲げたり、延ばしたりの加工が可能になる。この炭素の少ない鉄が鋼鉄である。
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== 歴史 ==
世界で初めて鋼を開発したのは、[[紀元前1400年]]ごろの[[ヒッタイト]]であると考えられている。ヒッタイトは[[炭]]を使って鉄を[[鍛造]]することにより鋼を製造し<ref>「文明の誕生」p128-129  小林登志子  中公新書  2015年6月25日発行</ref>、[[アナトリア]]を中心に鉄を主力とする最初の文明を築いた。この製法は厳重に秘匿されていたものの、[[前1200年のカタストロフ]]と呼ばれる大動乱によって紀元前1190年頃にヒッタイトが滅亡すると、製鋼技術はヒッタイトを滅ぼした[[海の民]]や、[[エジプト]]や[[メソポタミア]]といった近隣の諸国へと伝播し、さらにそこから遠方へと伝わっていった。
 
[[産業革命]]以前の世界においては各国で鋼が製造されたが、なかでも最も名高かったものは[[インド]]において生産されるウーツ鋼であった。ウーツ鋼はインド国内で消費されるほか、[[中東]]方面へも盛んに輸出され、とくに[[シリア]]の[[ダマスカス]]において[[刀剣]]に加工されたものは非常に高い評価を受けていた<ref>『世界文明における技術の千年史 「生存の技術」との対話に向けて』p137  アーノルド・パーシー 林武監訳、東玲子訳、新評論、2001年6月。ISBN 978-4-7948-0522-5</ref>。このことから、ウーツ鋼は[[ダマスカス鋼]]という名前で広く知られるようになった。ウーツ鋼は[[るつぼ]]によって生産されたが、[[19世紀]]初頭までには生産が途絶え、現代においては製法は失伝している。日本においても[[たたら製鉄]]によって[[玉鋼]]と呼ばれる鋼が生産され、主に[[日本刀]]の原料として使用された。ウーツ鋼や玉鋼に見られるように、近代以前の世界において鋼の主な使用法は、硬度の要求される刀剣の材料としてのものであったが、16世紀以降、[[オスマン帝国]]で鋼は銃の砲身に使用されるようになり、この製法は[[ムガル帝国]]にも伝わった<ref>『世界文明における技術の千年史 「生存の技術」との対話に向けて』p138-139  アーノルド・パーシー 林武監訳、東玲子訳、新評論、2001年6月。ISBN 978-4-7948-0522-5</ref>。しかし、大量に生産することはどこの文明圏においてもできなかった。[[18世紀]]に入ると[[イギリス]]で徐々に製鋼法の改善がはじまり、1740年代には[[ベンジャミン・ハンツマン]]によってるつぼを使用して良質の鋼が作られたものの、これは量産することは不可能であった。この後も様々な鋼の生産法が開発されるものの、真に工業的に大量生産ができるようになるのには[[ヘンリー・ベッセマー]]による1856年の[[転炉|転炉法]]の発明を待たねばならなかった。
 
== 製鋼法 ==
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転炉(転炉製鋼法)は[[1856年]]に[[イギリス]]の発明家[[ヘンリー・ベッセマー]]が開発した。彼の名を取って[[ベッセマー法]]と名づけられた本技術によって初めて鉄鋼の大量生産が可能となった。このベッセマー転炉においては、[[珪石]]製の[[煉瓦]]を内部に張った炉に銑鉄を入れ加熱空気を送ると不純物や余分な炭素が燃焼(酸化)して除去できる。この方法によって20トンの製鉄を30分以下で行うことが可能となった。発明当初の技術ではリンの除去は不可能であったが、1887年に[[シドニー・ギルクリスト・トーマス]]が[[白雲石]]粉末を裏張りした転炉を用いる方法を開発し、このトーマス転炉においてリンを[[リン酸カルシウム]]の[[溶滓]](ようさい)として分離させることが可能となった。この溶滓は[[肥料]]に転用された。現在では1946年に[[オーストリア]]で開発された空気の代わりに[[酸素]]を用いるLD転炉法が主流となっている<ref name="osawa2-3.2" />。また、[[1949年]]にはそれまで底から酸素を送り込んで不純物を除去していたものが、上から酸素を吹きつけるだけでも撹拌が起きて不純物が除去されることがわかり、上部から酸素を送り込む工法が主流となった。しかし上部からの酸素だけでは撹拌が弱くなるため、1970年代にはふたたび底吹きが主流となる。しかし今度は上部の温度が上がりにくくなるという欠点が現れ、結局1980年代以降は上部からの酸素供給を基本とし、底部から補助的に空気を送り込む混合式の吹込みが主流となった{{Sfn|新日鉄住金|2004|pp=68&ndash;69}}。
 
平炉は[[反射炉]]の一種で、1856年にシーメンス兄弟(カール・ウィルヘルム・シーメンスとフレデリック・シーメンス)によって炉の構造が発明され、マルタン父子(ピエール・ マルタンとエミール・マルタン)によって製鋼法が発明された<ref>中沢護人、「[http://repositoryhdl.dlhandle.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstreamnet/2261/31412/1/sk016009002.pdf 平炉法の発明の経過]p245-247(「生産研究」第』 1964年 16巻 9号、1964年)中沢護人, 東京大学生産技術研究所</ref>ことから、両者の名を取ってシーメンス・マルタン法と呼ばれる。鉄鉱石と屑鉄([[スクラップ]])を混合し加熱して不純物を酸化・除去し、適度の炭素を残す。熱源は電気アークである<ref name="osawa2-3.2" />。しかし平炉法は冷えた材料の加熱を行うため、初期のものは鋼の製造まで10時間を要した。1960年代には3時間まで時間が短縮されたものの、転炉はこの過程を30分で行えるため勝負にならず、日本では1960年代以降この方式での製鋼は行われていない{{Sfn|新日鉄住金|2004|pp=67&ndash;68}}。
 
このほかにスクラップを用いる[[電気炉]]生産方式(電気炉製鋼法)がある。[[日本]]での生産割合は、転炉製鋼法が約75%、電気炉製鋼法が約25%である。
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}}
* {{cite book ja-jp
|author=新日鉄住金株式会社(編著)
|title=カラー図解 鉄と鉄鋼がわかる本
|publisher=日本実業出版社
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}}
*{{Cite journal ja-jp
|author = 高木 節雄
|year = 1997
|title = 鉄の強化機構と限界強度
|journal = まてりあ
|volume=36
|issue = 7
|publisher = 日本金属学会
|pages = 675&ndash;679
|doi =10.2320/materia.36.675
|ref={{Sfnref|高木|1997}}
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{{wiktionary|はがね|鋼|鋼鉄|steel}}
*{{Kotobank}}
* 「[http://www.hitachi-metals.co.jp/tatara/index.htm たたらの話]」([[日立金属]])
* 社団法人 [https://www.isij.or.jp 日本鉄鋼協会] (ISIJ)
* 社団法人 [http://www.jisf.or.jp 日本鉄鋼連盟] (JISF)
* 社団法人 [http://www.jssc.or.jp 日本鋼構造協会] (JSSC)
* {{Wayback |url=http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/press236.html |title=低温でもしなやかで強い鉄、超微細結晶粒鋼の靭性の逆温度依存性を発見(独立行政法人物質・材料研究機構、2008年5月23日)|date=20080610085520 }}
 
{{デフォルトソート:はかね こう}}