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== 素材 ==
伝統的には、[[木材|木]]・[[竹]]・[[ヨシ]]などの[[植物]]を[[ロープ]]で縛り合わせて作られた簡易的で小型のものが多い(『世界大百科事典 イ-イン』 平凡社 1972年 p.59)。大きいものは[[チチカカ湖]]で用いられる[[バルサ]]を用いたいかだで、長さは20メートルになる(『世界大百科事典 イ-イン』 p.59)。形状はアジアでは「平面型」が多いが、[[コロマンデル海岸]]の[[双胴船]]では「内凹型」がある(『世界大百科事典 イ-イン』 p.59)
 
; [[木材|木]]
: 例として、[[バルサ]](世界一軽い木材)があり、バルサという語自体が[[スペイン語]]で「いかだ」を意味する。古代[[ペルー人]]はこの軽材で筏を作り、ポリネシアの島々まで遠距離航海を行ったとされる(筏のような簡素的舟でも長距離航行は可能だった)<ref>『雑学 実用知識 特装版』 三省堂企画編修部 編 第6刷1991年(1988年) p.311.</ref>。日本では、『[[万葉集]]』巻第一・50番において、いかだを真木=[[ヒノキ]]や[[スギ]]で作ったと記す歌が見られる。日本の場合、10[[石 (単位)|石]](2.3立方ーメートル)程度の木材を1列に横に並べる(『世界大百科事典 イ-イン』 p.59)。韓国・[[南海島]]・[[済州島]]のパルソン(筏船)には手すりがみられる(『世界大百科事典 イ-イン』 p.59)
; [[竹]]
:日本では『[[日本書紀]]』[[孝徳天皇|孝徳]][[日本書紀|紀]]の[[白雉]]4年([[653年]])7月条に、[[薩摩半島]]沖で[[難破]]した[[遣唐使]]船の5人の生存者が付近の島に漂着した際、その島に生えていた竹を採って筏(いかだ)を製作して帰還を果たしたという記録がある。このとき筏を制作した門部金(かどべのかね)はこの功績により褒美を賜ったという。台湾のテッパイ(竹筏)には[[帆]]がある(『世界大百科事典 イ-イン』 p.59)
; [[皮]]
:[[東アジア]]から[[南アジア]]の河川では、羊皮筏子やアレキサンダー・ボートといった、動物の皮に空気を入れた袋を浮力材としたいかだが今日でも[[渡し船]]などに利用されている。過去にはこの種のいかだは[[救命ボート]]としてインド洋の交易船に積まれていた<ref>三杉隆敏、榊原昭二 編著『海のシルク・ロード事典』新潮選書、1988年。ISBN 4106003414、p.109.</ref>。[[イグサ]]や[[パピルス]]を用いている地域としては、南米の[[チチカカ湖]]やアフリカの[[チャド湖]]・[[ナイル川]]がある(『世界大百科事典 イ-イン』 平凡社 1972年 p.59)
 
『[[万川集海]]』には、「[[甕]]筏」といって、[[槍]]などの長柄で骨組みを組み、その下に甕([[焼き物]]の器)を取り付け、浮力とする(図面には、4つの甕を付けている)、即席の複合筏の記述があり、「甕の他、[[釜]]、[[桶]]、[[杵]]、[[臼]]など用いても良く、蒲筏・葛籠筏などがある」と記し、日常の民具から筏を製作する工夫があったことがわかる。
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=== 行軍 ===
戦術・戦略の目的上、行軍で河川を渡らなければならない場合、筏を用いることがある。早急に行動しなければいけない状況下では、本格的に舟を造るより即席性がある筏を作る方が技術的にも[[時間短縮|時短]]できるためであり、例として、[[源頼義]]は[[前九年の役]]において盾を筏としたと記され<ref>『[[寛永諸家系図伝]]』第一、続群書類従完成会</ref>、また[[承久の乱]]では、東軍が宇治川を渡る際、初めは馬をそのまま用いたが、のちに民家を壊した木材で筏を組んだとされる<ref>[[山本幸司]] 『日本の歴史09 頼朝の天下草創』 [[講談社]] 2001年 p.197.</ref>。また、馬を並べてつなげ、川を渡る行為を日本では「馬筏」と呼ぶ(『広辞苑』)。この場合、下流を下るのではなく、対岸を渡るために使用されている。
 
一説に、『[[古事記]]』に記述される[[浮橋]]や高橋も筏とされる(『世界大百科事典 イ-イン』 p.59)。
 
外国の例では、[[韓信]]が囮の船で敵を釘づけにしている間に木桶で筏を作って魏に侵入したとされる他、近代期の戦争においても例は見られ、[[ドニエプル川の戦い]](ドニエプル空挺作戦、9月23日)にソ連が筏を使用した他、日本軍も[[アドミラルティ諸島の戦い]]において、マヌス島(3月25日から29日)に渡る際、使用している。本格的な舟に比べれば、水面からの高さが低く、それなりに視認しづらい利点があるが、防御性は皆無である。
 
===観光・レジャー===
; いかだレース :近年、河川・湖沼・海岸などさまざまな場所において、参加者の創意工夫によって作られたいかだによるいかだレースのイベントが各地で行われている(似た観光として、[[たらい舟]]が見られる)。:
:一例として、TBS系列の番組『[[アイ・アム・冒険少年]]』の一企画では、芸能人・有名人による無人島脱出に自作の筏レースが行われている。
;急流下り : [[急流下り]]では[[絶叫マシン]]的なスリル感を演出するために、いかだが用いられることがある。
 
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===海用イカダ===
[[Fileファイル:Jangada DETAIL-kl.jpg|thumb|right|200px|ジャンガダ]]
古代の[[ポリネシア]]・[[ミクロネシア]]人が南太平洋一円を活動する際に、[[アウトリガーカヌー]]や[[コンティキ号]]のようないかだを使っていたと考えられている。
 
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[[家紋]]の一つとして、筏紋・花筏紋がみられ、例として、「丸に筏紋」がある<ref>『日本家紋総覧 コンパクト版』 [[新人物往来社]] p.105.</ref>。
 
花筏という言葉は、桜の花が川に大量に散り、浮かぶ様子を表した語でもある(『広辞苑』)
 
== 脚注 ==