「F・D・C・ウィラード」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
編集の要約なし
3行目:
 
{{Infobox animal
| name = F. D. C. ウィラード
| image =
| caption = F. D. C. Willard, a [[Siamese cat]], squinting astutely at the camera
| othername = フェリックス・ドメスティクス、チェスター
| species = [[猫]]
20行目:
==背景==
 
アメリカの物理学者・数学者のジャック・H・ヘザリングトン([[ミシガン州立大学]])は、1975年、科学論文誌『[[フィジカル・レビュー|フィジカル・レビュー・レターズ]]』に、[[低温物理学]]分野における研究成果を発表しようとしていた。
しかし、[[レビュー]]のために論文を渡された同僚の一人が、単独著者の論文であるにも関わらず文中で一人称複数が用いられているため、論文は[[リジェクト]]されるであろうと指摘した。そこでヘザリングトンは、一人称単数へと変更するため論文をタイプライターで打ち直すことに時間を費やしたり、あるいは共著者を招き入れるのではなく、ヘザリングトンは架空の共著者を作り出すことを選択した。<ref name=Zankl>{{citation |first = Heinrich |last = Zankl |chapter = Einsteins preußischer Schatten und Hetheringtons Kater |trans-chapter = Einstein's Prussian shadow and Hetherington's cat |language = German |title = Erlebnis Wissenschaft |publisher = WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. |location = Weinheim |year = 2008 |isbn = 978-3-527-32114-8 |chapter-url = http://www.wiley-vch.de/books/sample/3527321144_c01.pdf |pages = 14–15 }}</ref>
 
==発表==
[[File:FDC Willard - lapa.svg|thumb|upright=0.7|F・D・C・ウィラードの"署名"]]
 
ヘザリングトンの飼い猫チェスターという名のシャム猫を飼っていたのだが、この猫の父親の名「ウィラード」と言った。
同僚たちが自分の猫の名前であることに気が付くかもしれないと案じたヘザリングトンは、ペットのギブンネーム(名)としてにはイニシャルを用いたほうが良かろうと考えた。
アメリカ人の大部分は二つ以上のギブンネームを持っていることを知っていたので、ヘザリングトンは元々の名である「チェスター」に加え、[[イエネコ]]の学名 "Felis domesticus" に由来する二つのギブンネームを作り、この三つを「F・D・C」と略した。
ジャック・H・ヘザリングトンとF・D・C・ウィラードの共著という形をとった論文 "Two-, Three-, and Four-Atom Exchange Effects in [[体心立方格子構造|bcc]] [[ヘリウム3|³He]]" は『フィジカル・レビュー・レター』誌に[[アクセプト]]され、35号(1975年11月)で発表された<ref>{{citation |first1 = J. H. |last1 = Hetherington |first2 = F. D. C. |last2 = Willard |title = Two-, Three-, and Four-Atom Exchange Effects in bcc ³He |url = http://prl.aps.org/abstract/PRL/v35/i21/p1442_1 |journal = Physical Review Letters |volume = 35 |page = 1442–1444 |year = 1975 |bibcode = 1975PhRvL..35.1442H |doi = 10.1103/PhysRevLett.35.1442 }}</ref><ref name=AO>{{citation |url = http://www.atlasobscura.com/articles/in-1975-a-cat-coauthored-a-physics-paper |last = Grundhauser |first = Eric. |title = In 1975, a Cat Co-Authored a Physics Paper |work = Atlas Obscura |date = August 30, 2016 }}</ref>。
 
3年後の1978年、[[グルノーブル]]で開かれた第15回{{仮リンク|低温物理学国際会議|en|The International Conference on Low Temperature Physics}}において、ヘザリングトンの共著者の正体が明かされた。
ヘザリングトンは友人や同僚に自身の書いた論文の写しを送っていたのだが、そこには共著者の"署名"として猫の足形が載せられていたのである<ref>{{citation |first = R.L. |last = Weber |title = More Random Walks in Science |url = https://books.google.com/books?id=YrbanNOQ-bcC |date = 1982 |publisher = CRC Press |isbn = 978-0-85498-040-6 |pages = 110–111 }}</ref>。
 
後に、F・D・C・ウィラード単著の小論 "L'hélium 3 solide. Un [[反強磁性|antiferromagnétique]] nucléaire"が執筆され、1980年9月フランスの著名な科学雑誌『{{仮リンク|ラ・レシェルシェ|en|La Recherche}}』において発表された<ref>{{citation |first = F. D. C. |last = Willard |title = L’hélium 3 solide. Un antiferromagnétique nucléaire |journal = La Recherche |volume = 114 |year = 1980 }}</ref><ref name=AO/>。これを最後にF・D・C・ウィラードは学術著作の世界から姿を消した。
 
==関連項目==
44行目:
{{authority control}}
 
{{DEFAULTSORT:えふたふるていしいういらあと}}
[[Category:1968年生]]
[[Category:1982年没]]