「整数環」の版間の差分

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[[数学]]において[[代数体]]&nbsp;{{mvar|K}} の'''整数環'''(せいすうかん{{lang-en-short|ring of integers}})とは{{mvar|K}} に含まれるすべての[[整な元]]からなる[[環 (数学)|環]]である整な元とは[[有理整数]]係数の[[単多項式]] {{math|''x''<sup>''n''</sup> + ''c''<sub>''n''−1</sub>''x''<sup>''n''−1</sup> + ⋯ + ''c''<sub>0</sub>}} の[[多項式の根|根]]であるこの環はしばしば {{math|O<sub>''K''</sub>}} あるいは <math>\mathcal O_K</math> と書かれる任意の有理整数は {{mvar|K}} に属しその整元であるから環&nbsp;{{math|'''Z'''}} はつねに {{math|O<sub>''K''</sub>}} の[[部分環]]である
 
環&nbsp;{{math|'''Z'''}} は最も簡単な整数環である<ref>体を指定せずに''整数環''と言った場合にはすべてのそれらの環のプロトタイプな対象である「通常の」整数の環&nbsp;{{math|'''Z'''}} を指すそれは抽象代数学における単語「[[wikt:整数|整数]]」の曖昧さの結果である</ref>すなわち{{math|1='''Z''' = O<sub>'''Q'''</sub>}} ただし {{math|'''Q'''}} は[[有理数]][[可換体|体]]である<ref name=Cas192>{{harvnb|Cassels|1986|p=192}}.</ref>そして実際[[代数的整数論]]では{{math|'''Z'''}} の元はこのためしばしば「有理整数」と呼ばれる
 
代数体の整数環は体の一意的な極大{{仮リンク|整環|en|order (ring theory)}}である
 
== 性質 ==
整数環 {{math|O<sub>''K''</sub>}} は[[有限生成加群|有限生成]] {{math|'''Z'''}}&nbsp;[[環上の加群|加群]]である実際それは[[自由加群|自由]] {{math|'''Z'''}}&nbsp;加群でありしたがって'''整基底''' (integral basis), すなわち次のような基底を持つ:{{math|'''Q'''}} ベクトル空間 {{mvar|K}} の[[基底 (線型代数学)|基底]] {{math|''b''<sub>1</sub>, … ,''b''<sub>''n''</sub> ∈ O<sub>''K''</sub>}} であって{{math|O<sub>''K''</sub>}} の各元&nbsp;{{mvar|x}} は {{math|''a''<sub>''i''</sub> ∈ '''Z'''}} で一意的に
:<math>x=\sum_{i=1}^na_ib_i</math>
と表せる{{sfn|Cassels|1986|p=193}}{{math|O<sub>''K''</sub>}} の自由 {{math|'''Z'''}} 加群としての階数 {{mvar|n}} は {{mvar|K}} の {{math|'''Q'''}} 上の{{仮リンク|体拡大の次数|label=次数|en|Degree of a field extension}}に等しい
 
代数体の整数環は[[デデキント整域]]である<ref name=Sam49>{{harvnb|Samuel|1972|p=49}}.</ref>
 
==例==
{{mvar|p}} が[[素数]]で{{mvar|ζ}} が[[1の冪根|1の {{mvar|p}} 乗根]]で{{math|1=''K'' = '''Q'''(ζ)}} が対応する[[円分体]]のとき{{math|1=O<sub>''K''</sub> = '''Z'''[''ζ'']}} の整基底は {{math|(1, ''ζ'', ''ζ''<sup>2</sup>, … , ''ζ''<sup>''p''−2</sup>)}} で与えられる{{sfn|Samuel|1972|p=43}}
 
{{mvar|d}} が[[平方因子を持たない整数]]で{{math|1=''K'' = '''Q'''({{sqrt|''d''}})}} が対応する[[二次体]]のとき{{math|O<sub>''K''</sub>}} は{{仮リンク|二次の整数|en|quadratic integer}}の環でありその整基底は次で与えられる:{{math|''d'' ≡ 1 ([[合同算術|mod]] 4)}} のとき {{math|(1, (1 + {{sqrt|''d''}})/2)}} で{{math|''d'' ≡ 2, 3 (mod 4)}} のとき {{math|(1, {{sqrt|''d''}})}} である{{sfn|Samuel|1972|p=35}}
 
==乗法的構造==
整数環においてすべての元は[[既約元]]への分解を持つが環は[[一意分解定理|一意分解]]の性質を持つとは限らない:例えば整数環 {{math|'''Z'''[{{sqrt|−5}}]}} において元 {{math|6}} は2つの本質的に異なる既約元への分解を持つ<ref name=Sam49 /><ref>{{cite book|last=Artin|first=Michael|title=Algebra|date=2011|publisher=Prentice Hall|isbn=978-0-13-241377-0|page=360}}</ref>:
:<math> 6 = 2 \cdot 3 = (1 + \sqrt{-5})(1 - \sqrt{-5}) \ . </math>
 
整数環はつねに[[デデキント整域]]でありしたがってイデアルの[[素イデアル]]への一意分解を持つ{{sfn|Samuel|1972|p=50}}
 
整数環 {{mvar|O{{sub|K}}}} の[[単数]]全体は[[ディリクレの単数定理]]により[[有限生成アーベル群]]である[[捩れ部分群]]は {{mvar|K}} の[[1の冪根]]全体からなる捩れなし生成元の集合は''{{仮リンク|基本単数|en|Fundamental unit (number theory)}}''の集合と呼ばれる{{sfn|Samuel|1972|pp=59–62}}
 
==一般化==
[[非アルキメデス的局所体]] {{mvar|F}} の整数環を絶対値が 1 以下の {{mvar|F}} のすべての元の集合として定義する;これは強三角不等式により環である{{sfn|Cassels|1986|p=41}}{{mvar|F}} が代数体の完備化であればその整数環は代数体の整数環の完備化である代数体の整数環はすべての非アルキメデス的完備化において整数であるような元の全体として特徴づけられる<ref name=Cas192/>
 
例えば{{mvar|p}}&nbsp;進整数 {{math|'''Z'''<sub>''p''</sub>}} は [[p進数|{{mvar|p}} 進数]] {{math|'''Q'''<sub>''p''</sub>}} の整数環である
 
==脚注==