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== 刑事訴訟法 ==
{{日本の刑事手続}}
[[刑事訴訟法]](昭和23年7月10日法律第131号)上の'''捜索'''とは、[[被告人]]の身体、物又は[[住居]]その他の場所につき、人や物を発見するために行われる[[強制処分]]である。
 
[[日本国憲法第35条]]により、[[逮捕]]に伴う捜索を除いては、権限を有する[[裁判官|司法官憲]]が発する[[令状]]無しにその住居、書類および所持品についてこれをなされない権利を何人も有すると規定されており、その具体的な手続きや方法などについては、刑事訴訟法や、[[刑事訴訟規則]](昭和23年12月1日最高裁判所規則第32号)、[[犯罪捜査規範]](昭和32年7月11日国家公安委員会規則第2号)などの法令で規定されている。
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令状に基づいて捜索する際は、処分を受ける者または立会人(立会人は規範141条2項による)に対してこれを提示しなければならない(刑訴法222条1項、110条)。また、住居主等のその場の管理者・責任者等に立ち合わせなければならず、これができない場合は隣人または[[地方公共団体]]の職員を立ち会わせなければならない。必要な場合は、被疑者を立ち会わせることができる。ただし、犯人を逮捕するための捜索(刑訴法220条1項1号)で緊急を要する場合は、立会人を要しない(刑訴法222条1項は110条を準用しているが、201条を準用していない)。
 
捜索に当たっては、錠や封を開き、その場の出入りを禁止し、その禁止に従わない者を退去させるなど必要な処分をすることができる(刑訴法222条1項、111条1項)。ただし、必要以上に器物を損壊し、書類を乱さないよう注意しなければならず、原状回復に努めなければならない(規範140条2項)。
 
夜間(日の出前・日没後)の捜索は、令状に特に記載がない場合はすることができない(刑訴法222条4項)。これは、私人の夜間における平穏を保護するためと解されている。ただし、[[旅館]]等夜間も公衆が出入りする場所や、[[賭場]]など風俗を害する行為に常用されるものと認められる場所については、前述の記載無しに夜間の捜索ができる(同条3項)。また、日没前に着手した捜索は、日没後も継続できる(同条4項)。
 
捜索の際は秘密を守り、処分を受ける者の名誉を害しないよう注意する(規則93条)とともに、必要以上に関係者に迷惑をかけないよう注意し(規範140条)なければならない。
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*[[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律]]102条
*[[金融商品取引法]]211条
*[[国税取締法]]1322
*[[犯罪による収益の移転防止に関する法律]]28条
 
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[[国税徴収法]](昭和34年4月20日法律第147号)142条では、[[国税]]の[[滞納処分]]を行うため、[[財産]]調査の一環として、徴収職員による捜索の権限を認めている。この処分は、[[強制処分]]であるが、差押可能財産の発見を目的とするものであって、犯罪捜査を目的とするものではないこと、犯罪捜査より強制力が低いことから、[[日本国憲法第35条|憲法35条]]の適用はなく、[[裁判所]]の[[令状|捜索差押許可状]]は必要ではない<ref>[https://www.bengo4.com/c_1009/b_807924/ 家宅捜索について教えてください‼国税徴収法に基づく家宅捜索と刑事訴訟法に基づく家宅捜索とではどちらがより強い強制力を行使出来ますか?やっぱし、裁判所の令状なしで出来る国税徴収法なのでしょうか? - 弁護士ドットコム]</ref><ref>[[川崎民商事件|川崎民商事件最高裁大法廷判決]]において、租税徴収のための手続に[[日本国憲法第35条|憲法35条]]が適用されない要件として、「たしかに、(中略)検査拒否に対する罰則は、(中略)収税官吏による当該帳簿等の検査の受忍をその相手方に対して強制する作用を伴なうものであるが、(中略)収税官吏の検査は、もつぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であつて、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではない。 また、右検査の結果過少申告の事実が明らかとなり、ひいて所得税逋脱の事実の発覚にもつながるという可能性が考えられないわけではないが、そうであるからといつて、右検査が、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めるべきことにはならない。さらに、強制の態様は、収税官吏の検査を正当な理由がなく拒む者に対し、刑罰を加えることによつて、間接的心理的に右検査の受忍を強制しようとするものであるが、強制の度合いは、それが検査の相手方の自由な意思をいちじるしく拘束して、実質上、直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているものとは、いまだ認めがたい。(中略)収税官吏の検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、憲法35条の法意に反するものではない。」と判示している。上記判例に照らせば、相手方の自由意思を著しく拘束しない国税徴収法142条の捜索よりも、相手方の自由意思を著しく拘束する[[犯罪]][[捜査]]のための捜索の方が、強制力が強いということになる。よって、[[令状]]が必要である[[捜査機関]]([[司法警察職員]]・[[検察官]]・[[検察事務官]])による捜索の方が強制力が強いため、無令状による捜索を認める[[国税徴収法]]142条は、憲法35条に抵触しないと解されている。</ref>。
 
しばしば、「[[司法警察員]]による捜索には裁判所の捜索差押許可状が必要であるが、徴収職員による捜索には裁判所の捜索差押許可状が必要ないので、強い権限を行使できる」という誤った認識があるが、国税徴収法の捜索よりも刑事訴訟法の捜索の方が権限は強く、閉鎖してある[[]][[]][[金庫]]等の開扉(142条3項)については、徴収職員が自ら開くのは、滞納者等が徴収職員の開扉の求めに応じないとき、不在のとき等やむを得ないときに限るとされ([https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/06/02/142/01.htm 基本通達7])、[[]]の除去に当たって、器物の損壊等は、必要最小限度にとどめるよう配慮するとされている([https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/06/02/142/01.htm 基本通達8])。これに対して、犯罪捜査を目的とする刑事訴訟法の捜索については、そのような配慮がなされることはなく、被疑者が開扉しない場合、[[エンジンカッター]]などを用いて開扉することも可能である<ref>[https://mainichi.jp/graphs/20191002/mpj/00m/040/001000f/1 家宅捜索に入るため、中核派の拠点「前進社」の扉をエンジンカッターで切断する機動隊員=東京都江戸川区で2019年10月2日午前8時26分、毎日新聞社撮影]</ref><ref>[https://r.nikkei.com/article/DGXNASHC06020_W0A001C1AC8000 2010年10月6日に大阪府警捜査4課が、闇賭博場「福助」=大阪市西成区萩之茶屋3=をモーターボート競走法違反容疑で家宅捜索した際、解錠要求に応じなかったため、警告の上、鉄製ドアを爆破している。]</ref>。
 
捜索中に[[wikt:禁制品|禁制物]]([[麻薬]]・[[覚醒剤]]・[[拳銃]]等)が発見された場合、国税徴収法による捜索の場合、[[動産]]として差し押さえることができないが<ref>「差押えの対象となる財産は、譲渡又は取立てができるものでなければならない。」とされており([https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/01/01/047/01.htm 基本通達第47条関係8])、動産は、公売による譲渡で現金化するが、禁制物は、[[公売]]に付すことができないから、差押の客体としての適格性を欠くことになる。</ref>、刑事訴訟法による捜索の場合、禁制物の差押も被疑者の逮捕も可能である。
 
捜索に際して、徴収職員には拳銃の携行が認められていないが、司法警察員には拳銃の携行が認められている。