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{{Infobox order
[[Image:Turner VC f&b.JPG|right|thumb|200px|ヴィクトリア十字章]]
|title = ヴィクトリア十字章
'''ヴィクトリア十字章'''(ヴィクトリアじゅうじしょう、Victoria Cross)は、[[イギリス]]および[[英連邦王国]]構成国の軍人に対し授与される最高の戦功章。敵前での勇敢な行為を対象とした顕彰における第1レベルの賞とされる[[勲章#クロス|クロス章]]であり、受章者は'''“VC”'''の[[ポスト・ノミナル・レターズ]]<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ">[[:en:Post-nominal letters|Post-nominal letters]]/名前の後に付ける爵位、勲位、学位等の略称。</ref>を使用することが許される{{#tag:ref|デコレーションの中には[[ポスト・ノミナル・レターズ]]の使用が認められていないものもある<ref>''London Gazette'': no. 56878. p. 3353-3353. 14 March 2003. Supplement No.1.</ref>。|group=注}}。[[グレートブリテン及び北アイルランド連合王国]]およびほとんどの[[英連邦王国]]構成国においては、[[ポスト・ノミナル・レターズ]]<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ"/>の記載順位や佩用序列が全ての勲章・記章の最上位に位置付けられている<ref>''London Gazette'': no. 56878. p. 3353. 14 March 2003. Supplement No.1.</ref>。
|image = [[File:Victoria Cross 2.jpg|250px]]
|caption = <!--画像説明-->
|awarded_by = [[連合王国]]君主
|type = 戦功章 / 十字章
|house = <!--王室によるものであれば王室・王朝名-->
|religion = <!--宗教-->
|ribbon = <!--綬(リボン)-->
|motto = <!--標語(モットー)-->
|founder = [[ヴィクトリア (イギリス女王)|ヴィクトリア女王]]
|eligibility = 敵前において勇気を見せた軍人
|for = 君主の意向
|status = <!--状態(存続、休止、廃止)-->
|date = <!--存続期間-->
|established = [[1856年]][[1月29日]]
|first_induction = [[1957年]][[7月29日]]
|last_induction = <!--最後の任命(授与、叙任、叙勲)日-->
|total = <!--合計人数(定数)-->
|recipients = <!--代理受取人-->
|individual = <!--関連事項-->
|higher = 無し
|lower = [[ジョージ・クロス]]
|same = <!--同位の勲章-->
|image2 = [[File:UK Victoria Cross ribbon bar.svg|90px]]
|caption2 = 略綬
}}
[[ファイル:GuyGibson.grave.jpg|right|thumb|200px|ヴィクトリア十字が刻まれた受章者([[ガイ・ギブソン]])の墓。]]
 
'''ヴィクトリア十字章'''(ヴィクトリアじゅうじしょう、Victoria Cross)は、[[イギリス]]および[[英連邦王国]]構成国の軍人に対し授与される最高の戦功章。敵前での勇敢な行為を対象とした顕彰における第1レベルの賞とされる[[勲章#クロス|クロス章]]であり、受章者は'''“VC”'''の[[ポスト・ノミナル・レターズ]]<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ">[[:en:Post-nominal letters|Post-nominal letters]]/名前の後に付ける爵位、勲位、学位等の略称。</ref>を使用することが許される{{#tag:refEfn|デコレーションの中には[[ポスト・ノミナル・レターズ]]の使用が認められていないものもある<ref>''London Gazette'': no. 56878. p. 3353-3353. 14 March 2003. Supplement No.1.</ref>。|group=注}}。[[グレートブリテン及び北アイルランド連合王国]]およびほとんどの[[英連邦王国]]構成国においては、[[ポスト・ノミナル・レターズ]]<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ"/>の記載順位や佩用序列が全ての勲章・記章の最上位に位置付けられている<ref>''London Gazette'': no. 56878. p. 3353. 14 March 2003. Supplement No.1.</ref>。
 
イギリスの[[勲章]]は[[勲章#オーダー|オーダー]](Order)と[[勲章#デコレーション|デコレーション]](Decoration)に分けられ、デコレーションには[[勲章#クロス|クロス]](Cross)、[[勲章#メダル|メダル]](Medal)およびデコレーション{{#tag:ref|メダルとクロスもデコレーションに含まれるが、名称が“〜Decoration”となっているものもあり、これらは概ねオーダーより下位に位置する<ref>[[#小川{{Sfn|小川]] P 93</ref>。|groupp=93}}の種類があるが、受章者によって騎士団が形成され、[[勲位]]が与えられるのはオーダーだけであり、ヴィクトリア十字章を含むクロスやメダル、あるいは章の名称に“Decoration”が付く章は、功績や栄誉に対して与えられる功労章あるいは記章である<ref>[[#{{Sfn|小川|小川]] P p=87-119</ref>}} 。そして、クロス章は勲章とは言えないとする見方もあるので<ref>[[#{{Sfn|君塚|君塚]] P p=16</ref>}}、本項では「ヴィクトリア十字章」とするが、それらも広い意味での勲章ではあり、日本では'''ヴィクトリア十字勲章'''<ref>リチャード・ホームズ 『戦闘-戦闘と戦争の歴史を知る 古代の戦闘から、第一次世界大戦まで』 ジェフ・ダン&ジェフ・ブライトリング写真、同朋舎出版、1997年3月。ISBN 978-4-8104-2249-8。P 58</ref>あるいは'''ヴィクトリアクロス勲章'''<ref>『ワイド版/第二次世界大戦全史 別冊1 - 勲章記章軍装』矢野庄介訳、ツル・インターナショナル社、1968年。p 1</ref>と表記されることも多い。
 
イギリスの[[勲章]]は[[勲章#オーダー|オーダー]](Order)と[[勲章#デコレーション|デコレーション]](Decoration)に分けられ、デコレーションには[[勲章#クロス|クロス]](Cross)、[[勲章#メダル|メダル]](Medal)およびデコレーション{{#tag:ref|メダルとクロスもデコレーションに含まれるが、名称が“〜Decoration”となっているものもあり、これらは概ねオーダーより下位に位置する<ref>[[#小川|小川]] P 93</ref>。|group=注}}の種類があるが、受章者によって騎士団が形成され、[[勲位]]が与えられるのはオーダーだけであり、ヴィクトリア十字章を含むクロスやメダル、あるいは章の名称に“Decoration”が付く章は、功績や栄誉に対して与えられる功労章あるいは記章である<ref>[[#小川|小川]] P 87-119</ref>。そして、クロス章は勲章とは言えないとする見方もあるので<ref>[[#君塚|君塚]] P 16</ref>、本項では「ヴィクトリア十字章」とするが、それらも広い意味での勲章ではあり、日本では'''ヴィクトリア十字勲章'''<ref>リチャード・ホームズ 『戦闘-戦闘と戦争の歴史を知る 古代の戦闘から、第一次世界大戦まで』 ジェフ・ダン&ジェフ・ブライトリング写真、同朋舎出版、1997年3月。ISBN 978-4-8104-2249-8。P 58</ref>あるいは'''ヴィクトリアクロス勲章'''<ref>『ワイド版/第二次世界大戦全史 別冊1 - 勲章記章軍装』矢野庄介訳、ツル・インターナショナル社、1968年。p 1</ref>と表記されることも多い。
__TOC__
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== 概要 ==
ヴィクトリア十字章は[[1856年]][[1月29日]]、[[クリミア戦争]]において戦功をあげた軍人に対し初めて授与された。初期のヴィクトリア十字章は全て[[セヴァストポリの戦い (クリミア戦争)|セバストポリ]]包囲戦]]において[[ロシア帝国陸軍]]から捕獲した[[中国]]製の[[青銅砲]]から鋳造されている。[[第一次世界大戦]]中からは[[義和団の乱]]において中国軍から捕獲した大砲も原材料として用いられるようになった。これらの大砲の砲身は[[ウーリッジ]]のRoyal Artillerry Barracksにおかれている。大砲の残り、メダルの鋳造に用いられる部分は現在358[[トロイオンス]]だけがのこっており、[[ダニントン]]の15 Regiment Royal Logistic Corpsで保管されているが、ここからは80から85のメダルの鋳造が可能であると見積もられている。メダルの製造はヴィクトリア十字章が制定されたときから[[ロンドン]]のHancocksが行っている。
[[ファイル:GuyGibson.grave.jpg|right|thumb|200px|ヴィクトリア十字章が刻まれた受章者([[ガイ・ギブソン]])の墓。]]
ヴィクトリア十字章は[[1856年]][[1月29日]]、[[クリミア戦争]]において戦功をあげた軍人に対し初めて授与された。初期のヴィクトリア十字章は全て[[セバストポリ]]包囲戦において[[ロシア]]軍から捕獲した[[中国]]製の[[青銅砲]]から鋳造されている。[[第一次世界大戦]]中からは[[義和団の乱]]において中国軍から捕獲した大砲も原材料として用いられるようになった。これらの大砲の砲身は[[ウーリッジ]]のRoyal Artillerry Barracksにおかれている。大砲の残り、メダルの鋳造に用いられる部分は現在358[[トロイオンス]]だけがのこっており、[[ダニントン]]の15 Regiment Royal Logistic Corpsで保管されているが、ここからは80から85のメダルの鋳造が可能であると見積もられている。メダルの製造はヴィクトリア十字章が制定されたときから[[ロンドン]]のHancocksが行っている。
 
ヴィクトリア十字章授与の告知は、伝統に従い[[ロンドン・ガゼット]]紙で行われる。
 
メダルは幅35ミリメートルの十字形で、王冠にライオンの像がかたどられ、"For Valour(勇気に対して)"の文字が刻まれている。付属する勲符、リボンを含めた重量は27グラムほどである。同一人が再度受章する場合は、リボンに付ける飾板のみが授与され、略綬に描かれるヴィクトリア十字が増える。
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File:UK Victoria Cross w bar ribbon bar.svg|ヴィクトリア十字章2回受章を示す略綬。
</gallery>
 
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[[File:Guy Gibson Medals.jpg|right|thumb|200px|ヴィクトリア十字章受章者(ガイ・ギブソン)のメダルバー。最上位(左端)にヴィクトリア十字章が位置し、その次にディスティンギッシュト・サービス・オーダーが置かれている。]]
「敵前において勇気を見せた軍人」に対してのみ授与される。また、“勇気”の基準が厳しく、世界各国において制定されている戦功章の中で最も受章が困難な勲章であるといわれている。
 
クロス章は一般的にはオーダーより下位に位置するが、ヴィクトリア十字章の佩用位置やポスト・ノミナル・レターズ([[:en:Post-nominal letters|Post-nominal letters]])<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ"/>を列記する際の順番は「あらゆる勲章・記章の上位」とされている<ref group="注">{{Efn|ポスト・ノミナル・レターズではその上に[[準男爵]](Baronet)以上の[[爵位]]が位置付けられる。</ref>}}。このような特別な扱いのクロス章にはほかに[[ジョージ・クロス]]があり、ヴィクトリア十字章と最高位のオーダーである[[ガーター勲章]]の間に位置する。[[ジョージ・クロス]]はヴィクトリア十字章に匹敵する勇気を“敵前以外の場所”で見せた場合に与えられる。この2つの十字章は受章者の団体を共有しており、名称を“[[:en:Victoria Cross and George Cross Association|Victoria Cross and George Cross Association]]”としている。
 
[[オーストラリア]]、[[カナダ]]、[[ニュージーランド]]等の英連邦王国に属する国では、イギリス本国の勲章の一部について自国の勲章を代わりに制定しているが、最高の戦功章はヴィクトリア十字章あるいはその国のヴィクトリア十字章であるとしている。[[1993年]]に制定されたカナダ・ヴィクトリア十字章は[[ラテン語]]の代わりに[[英語]]の文字が刻まれている([[2005年]][[8月]]現在受章者はいない)。
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[[ファイル:Alphonse_de_Neuville_-_The_defence_of_Rorke's_Drift_1879_-_Google_Art_Project.jpg|right|thumb|200px|ロークス・ドリフトの防衛戦]]
[[File:Johnson Beharry, VC.jpg|right|thumb|200px|ジョンソン・ベハリー]]
1856年から合計1,355のヴィクトリア十字章が授与されている。当初はイギリス本土出身の生存者のみに授与されていたが、[[20世紀]]初頭には死後にも授与されるようになり、その対象もイギリス軍指揮下にある全ての軍人となった。[[1914年]]、[[インド]]兵士に対して[[植民地]]出身者として初めて授与された。
 
一日あたり最も多くの受章者を出した戦闘は[[1857年]][[11月16日]][[第一次インド独立戦争]]([[セポイの大反乱]]における[[ラクナウ]](Lucknow)包囲戦である。この日の戦功に対し24のヴィクトリア十字章が贈られている。一度の戦闘において最も多くの受章者を出したのは[[ズールー戦争]]におけるロークス・ドリフト([[:en:Rorke's Drift|Rorke's Drift]])の防衛戦([[1879年]][[1月22日]])で、この戦闘では11個のヴィクトリア十字章が授与された。また[[ボーイスカウト]]運動の創始者[[ロバート・ベーデン・パウエル]]卿も、[[ボーア戦争]]における[[マフェキング]]の包囲戦での功績に対してこれを贈られている。
 
[[第一次世界大戦]]においては、最終的に633名に授与された。そのうち187名は死後の授与である。一例として、ウォルター・リッチーの名を挙げる。彼は[[ソンムの戦い]]の初日、部隊の仲間とともにドイツ軍の塹壕に突入し、ドイツ軍の反撃に晒され仲間が全員死んだ後も「突撃せよ!」と叫び続け、士気を鼓舞した功績による。
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第二次世界大戦以後にヴィクトリア十字章を受章したのは12名のみである。4名は[[朝鮮戦争]]で、1名は[[1965年]]の[[マレーシア]]と[[インドネシア]]の紛争で、4名が[[ベトナム戦争]]で、2名が[[フォークランド紛争]]における戦功により受章した。
 
[[イラク戦争]]においては、[[2004年]][[5月]]に武装勢力の待ち伏せ攻撃中に2度にわたり同僚を軍用車両の中から救助した、[[グレナダ]]出身の[[{{仮リンク|ジョンソン・ベハリー]]([[:en:Johnson Beharry|en{Johnson Beharry]])}}に対して授与されている<ref>''LONDON GAZETTE'': no. 57587. p. 3369. Friday 18 March 2005.</ref>。生存している者に対してヴィクトリア十字章が授与されたのは[[1969年]]以来のことである<ref>[http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/+/http://www.operations.mod.uk/telic/newsItem_id=3169.htm ナショナルアーカイブス]</ref>。
 
これまでにヴィクトリア十字章を2度受章したのはイギリスの軍医であるNoel Chavasse、Arther Martin Leake、[[ニュージーランド]]出身のCharles Uphamの3名のみである。
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[[日本]]に関連したところでは、[[下関戦争]]における戦功から、以下の2名のイギリス人と1名のアメリカ人に授与されている。
* [[ダンカン・ボイズ]]
* [[{{仮リンク|トーマス・プライド]] [[:|en:|Thomas Pride (VC)|Thomas Pride]]}}
* [[ {{仮リンク|ウイリアム・シーリー]] [[:|en:William_Henry_Harrison_Seeley|William Seeley]] William_Henry_Harrison_Seeley}}(アメリカ人)
 
このほか、第二次世界大戦中の1945年8月9日に[[女川湾]]での戦闘で最後のカナダ人戦死者となった海軍パイロット、[[:en:Robert Hampton Gray{{仮リンク|ロバート・ハンプトン・グレー]]大尉|en|Robert Hampton Gray}}にも贈られた。
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== 注釈 ==
{{Notelist}}
{{Reflist|group=注}}
 
== 脚注 ==
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* {{Cite book|author=Duckers, Peter|year=2009|title=British Military Medals - A Guide for the Collector and Family Historian|publisher=Pen & Sword Books Ltd|location=South Yorkshire|id=ISBN 978-1-84415-960-4|ref=Duckers}}
* {{Cite book|author=Ailsby, Christopher|year=1989|title=Allied Combat Medals of World War II vol.1 : Britain, the Commonwealth and Western European Nations|publisher=Haynes Publishing Group|location=Avon|id=ISBN 978-0-85059-927-5|ref=Christopher}}
* {{Cite book|和書|author=小川賢治|date=2009-03|title=勲章の社会学 |publisher=晃洋書房|id=ISBN 978-4-7710-2039-9|ref={{SfnRef|小川}}}}
* {{Cite book|和書|author=君塚直隆|year=2004|title=女王陛下のブルーリボン-ガーター勲章とイギリス外交-|publisher=NTT出版|id=ISBN 4757140738|ref={{SfnRef|君塚}}}}
 
== 関連項目 ==