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おうし座T型星は[[主系列星]]の前段階にある星で、F,G,K,M 型の[[スペクトル型]]を持つ観測可能な[[恒星]]の中で最も若い。質量は2[[太陽質量]]以下である。おうし座T型星の表面温度は同じ質量を持つ主系列星の温度とほぼ同じだが、おうし座T型星は半径が大きいため、同質量の主系列星よりも明るい。中心温度は非常に低く水素燃焼は起こらない。代わりにおうし座T型星では星本体が[[ケルビン・ヘルムホルツ機構|自己重力で収縮]]する際に放出されるエネルギーで輝いている。このような収縮が約1億年続いた後、おうし座T型星は主系列星になる。典型的なおうし座T型星は1日から12日という早い周期で[[自転]]しており、非常に活動的で不規則に変光する。
 
おうし座T型星の表面には面積の大きな[[太陽黒点|黒点]]が存在することが示唆されており、これが変光の一要因であると考えられている。また強度が強くかつ変動する[[X線]]や[[電波]]も放射している(その強度は太陽の約1,0001000倍に達する)。おうし座T型星の多くは極めて強力な[[恒星風]]を放出している。さらに別の変光の原因として、おうし座T型星はガス円盤に囲まれているものが多く、この円盤に含まれる物質の塊(原始惑星や[[微惑星]])が星の光を遮ることでも変光が起きると考えられている。
 
おうし座T型星のスペクトルを観測すると、太陽や他の主系列星に比べて多量の[[リチウム]]が存在していることが分かる。リチウムは約250万K以上の温度では[[原子核融合|核融合反応]]によって失われるため、主系列星にはほとんど含まれない。1990年代に50個以上のおうし座T型星のリチウム存在量を観測した研究によると、おうし座T型星に含まれるリチウムの消費量は星の大きさに強く依存しており、このことから、[[林トラック]]と呼ばれる主系列前段階後期の対流が非常に強く不安定な時期に、中心部で[[陽子-陽子連鎖反応]]と同様の「リチウム燃焼」と言うべき核融合反応が起こり、これが重力収縮と並んでおうし座T型星の主なエネルギー源の一つとなっていることが示唆されている<ref name="lithium">[http://adsabs.harvard.edu/abs/1994A&A...282..503M Martin, E.L., et al., A&amp;A, 282, no.2, 503-517, 1994]</ref>。おうし座T型星の速い自転は内部の物質の混合を促進し、リチウムが核融合で消費される恒星中心部へのリチウムの輸送量を増やすことになる。一般にこの段階の星は[[角運動量保存則]]によって、年齢が経って収縮が進むほど自転速度は速くなる。このため、年齢が進んだ星ほどリチウムの消費率は大きくなる。またリチウム燃焼は温度が高いほど、また星の質量が大きいほど反応速度が上がり、最大で1億年を少し越える程度の期間持続すると見積もられている。