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{{出典の明記|date=2015年5月}}
[[ファイル:Praezession.svg|thumb|地球の自転(R)、歳差(P)、章動(N)の概念図]]
'''章動'''{{R|astro-dic}}(しょうどう、{{Lang-en-short|nutation}})とは、物体の[[回転]]運動において、[[歳差]]運動をする[[回転軸]]の動きの短周期で微小な成分をさす。ここでは、天体[[地球]]における章動について記述する。
 
== 概要 ==
[[File:歳差運動.png|thumb|極軸に働くトルクと歳差運動(太陽の場合)]]
地球の自転軸に見られる運動には、歳差、章動、極運動(揺動)がある。
 
地球は、南極と北極を結ぶ極軸を中心に自転している。地球は完全な球形ではなく南北に潰れた回転楕円体であるため、地球の公転軌道面(黄道面)に近い方向にある太陽や月からの引力が潮汐力として働き、極軸の傾斜を起こそうとするトルクが働く。歳差と章動は、このトルクによって引き起こされるものであり、太陽や月、各惑星の軌道の様々な周期成分があることによって起きる歳差運動中の小振幅で周期の早い変化成分を章動と呼んでいる。
[[天文学]]においては、章動とは[[惑星]]の[[自転]]軸に見られる微小な運動の一種である。[[春分点]]の[[歳差]]を引き起こす[[潮汐力]]の強さが時間とともに変化するため、歳差の速度が一定でないことが原因で起こる成分である'''天文章動'''と、[[自由歳差運動]]による成分である'''自由章動'''から成る。
 
[[地球]]の場合、潮汐力の主要な源は[[太陽]]と[[月]]である。これらの[[天体]]が互いの位置関係を絶えず変化させるために、地球の自転軸に章動をもたらす。地球の章動のうち最も大きな成分は18.6年周期の変動でおよそ9[[秒 (角度)|秒]]に相当し、章動定数と呼ばれている{{R|astro-dic_2}}。これは月の軌道([[白道]])と[[黄道]]の[[交点 (天文)|交点]]である[[平均昇交点]]が歳差によって黄道上を一周する周期に等しい。章動にはこれ以外にも主要な周期成分があり、高精度の天文計算を行う際にはそれらの効果も考慮する必要がある。
 
章動の値はふつう、黄道に平行な成分と垂直な成分に分けて表される。黄道に沿った平行な方向に働く成分は'''黄経における章動''' (nutation in longitude, Δψ) と呼ばれ{{sfn|片山真人|2017|p=74}}、黄道に垂直な方向の成分は'''黄道傾斜角における章動''' (nutation in obliquity, Δε) と呼ばれる{{sfn|片山真人|2017|p=74}}。これらの値は、地球上での観測から天体の見かけの位置を計算する際に重要になる。惑星の動力学は非常に良く分かっているので、章動の値は数十年以上の期間にわたって数秒角の精度で計算することができる。
 
地球の運動には、自転軸に対して地球本体が移動する[[極運動]]がある。極運動は数ヶ月先までしかその値を計算することができない。これは極運動が自由運動による成分のほかに[[海流]]や[[大気]]循環、[[核 (天体)|地球の核]]の運動など急速かつ予測困難な変動による影響を受けるためである。