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; FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)
: [[外傷]]患者の場合、致死的な臓器損傷の有無を即座に評価するための迅速超音波検査方法の名称。これは心嚢、左右肋間、[[モリソン窩]]、[[ダグラス窩]]、[[脾臓]]周囲の6か所をすばやく超音波検査施行し、[[腹腔内出血]]がないことを確認することである。出血所見により点数化し開腹手術の必要性を評価できる。
 
== 超音波装置を用いた治療 ==
超音波装置を用いた治療として集束超音波と[[ドラッグデリバリーシステム]](DDS)に関して述べる。
 
=== 集束超音波 ===
'''強力集束超音波'''(High-Intensity Focused Ultrasound、HIFU)装置は標的部位に体外からピンポイントに[[超音波]]のエネルギーを集束できる装置であり[[前立腺癌]]、[[子宮筋腫]]、[[乳癌]]に対する低侵襲な治療法として利用されている<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/33/2/33_115/_pdf/-char/ja Drug Delivery System 33巻2 号p.115] </ref>。これは強力超音波を[[癌]]に集中させることで焦点部分の温度を80度近くに熱することで癌細胞を凝固させる治療法である。[[本態性振戦]]では[[MRI]]ガイド下で経頭蓋的に脳内の視床腹中間核(Vim核)にHIFUを照射し凝固させる治療法が2019年より保険診療で可能となっている。超音波には照射部位を振動させたりする機械的作用と加熱などを引き起こす熱的作用がある。これらは超音波の周波数や強度により変化するものの、照射強度を高くしていくと機械的作用や熱的作用が増大していく。この機械的作用と熱的作用を利用して、HIFUで特定の部位を凝固させることが可能となる。
 
=== 血液脳関門を通過するDDS ===
集束超音波の超音波照射エネルギーを徐々に下げていくと熱的作用が低下して機械的作用のみを利用することができる。この機会的作用による組織の振動は、組織内の[[毛細血管]]の[[密着結合]]を緩めることで血管透過性の亢進を導く。そのため集束超音波を用いて[[血液脳関門]]の透過性を亢進させ、治療薬を脳へ送達させる方法が考えられた。超音波照射のみで血管透過性を亢進させるためには超音波照射強度が高くなり組織障害のリスクが高まる<ref>Ultrasonics. 2008 Aug;48(4):279-96. PMID 18511095</ref>。事実、1990年の報告では[[血液脳関門]]の透過性を十分に高めるには頭蓋骨切除が必要であった<ref>Adv Exp Med Biol. 1990;267:369-81. PMID 2088054</ref>。超音波[[造影剤]]として利用される[[マイクロバブル]]を併用すると比較的低い超音波強度で超音波の機械的作用を増強させることができる<ref>Radiology. 2001 Sep;220(3):640-6. PMID 11526261</ref>。
 
マイクロバルブに超音波を照射すると振動(オシレーション)と圧壊(キャビテーション)が誘導される。マイクロバルブの振動と圧壊は[[細胞膜]]に作用し一過性の小孔を形成し、細胞外の物質が細胞内に取り込まれることが知られている。この作用をソノポレーションという。マイクロバブルを血管内投与し体外から超音波照射すると組織の血管内でマイクロバブルの振動や圧壊が誘導され、周囲の[[血管内皮細胞]]間の[[密着結合]]に作用して血管透過性を変化させることができるのではないかと考えられている<ref>J Control Release. 2015 Dec 10;219:61-75. PMID 26362698</ref><ref>Drug Discov Today Technol. 2016 Jun;20:41-48. PMID 27986222</ref>
<ref>F1000Res. 2016 Mar 10;5. pii: F1000 Faculty Rev-313. PMID 26998242</ref><ref>Front Pharmacol. 2019 Feb 7;10:86. PMID 30792657</ref>。[[血液脳関門]]の透過性の亢進の持続時間は数時間で[[可逆]]的と考えられている<ref>ACS Chem Neurosci. 2013 Apr 17;4(4):519-26. PMID 23379618</ref>。代表的な研究として下記のようなものが挙げられる。集束超音波を血液脳関門に作用させ、[[乳癌]]治療薬の[[抗体医薬]]である[[ハーセプチン]]を脳内に移行させたという研究が知られている<ref>Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Aug 1;103(31):11719-23. PMID 16868082</ref>。カナダのSunnybrook Health Sciences Centreでは[[脳腫瘍]]の患者に集束超音波とマイクロバルブを用いて[[抗癌剤]]の[[ドキソルビシン]]を脳腫瘍に送達させる治験が行われている<ref>https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02343991</ref>。一方で集束超音波とマイクロバルブの併用は無菌性炎症を起こすという報告もあり[[副作用]]が懸念される<ref>Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jan 3;114(1). PMID 27994152</ref>。
 
=== 細胞膜を通過するDDS ===
治療用超音波とマイクロバブルを併用して細胞外の薬物や遺伝子を細胞内に導入させることができる<ref>J Control Release. 2011 Jan 5;149(1):36-41. PMID 20470839</ref><ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/34/2/34_116/_pdf/-char/ja Drug Delivery System 34巻2 号p.116]</ref>。
 
== 医療以外での超音波検査 ==
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== 出典 ==
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== 外部リンク ==