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Yapontsy (会話 | 投稿記録)
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== 一般的特徴 ==
つる植物には、[[草本]](草本性つる植物 (vine))[[木本]](木本性つる植物 (liana))あり、木本になるつる植物のことを'''藤本'''という場合もある。
植物は基本的に[[光合成]]によって栄養を得る。そのため、複数の植物が一緒に暮らした場合、背の高くなるものが有利である。したがって、環境条件のよいところであれば、[[樹木]]が上を覆い、背の低い植物は、その層を通り抜けるわずかな光だけで生活することになる。しかし、背を高くするには、たとえば樹木の形を取らなければならず、そのためには体を支える[[組織 (生物学)|組織]]に多くを投資しなければならない。これに対して、つる植物であれば、背の高くなる植物に支えられることで高く伸びるので、自らが支持のための組織に投資する量が少なくてすむ。草地であっても、つる植物は他の植物の上を覆って、広い範囲を占めることが可能になる。
 
木本性つる植物は巻き付く、貼り付くなどして周囲の樹木等(ホスト)に取り付き、その樹木に自重支持を依存しながら成長する<ref name="ichihashi">{{Citation|title=野外環境下における木本性つる植物の成長特性 -自重支持依存のコストとリスクを考える|url=https://doi.org/10.18960/seitai.69.2_71|publisher=一般社団法人 日本生態学会|date=2019|accessdate=2020-05-11|doi=10.18960/seitai.69.2_71|author=市橋隆自}}</ref>。樹木では自重を支えながら高く成長するため茎肥大に大きな資源投資を必要とするのに対し、つる植物の成長様式はその分の資源を茎伸長と葉量増加へと振り分け、よって資源を効率良く用いて生育空間と光合成生産を拡大する戦略である<ref name="ichihashi" />。
つる植物には、[[草本]](草本性つる植物 (vine))も[[木本]](木本性つる植物 (liana))もあり、木本になるつる植物のことを'''藤本'''という場合もある。
 
この戦略は、光競争の激しい環境で優占する上で、あるいは生産性の低い林内環境で成長を維持する上で大きな利点となる一方で、常にホストを獲得する必要があり、ホストが枯死した時に巻き添えを受ける等の制約を受ける<ref name="ichihashi" />。長期的には必ずしも効率の良い個体成長を可能にするわけではなく、さらに地面まで完全に落下するリスクも内包する不安定な成長様式とも言える<ref name="ichihashi" />。
つる植物は、特に温暖な地方に多く、さまざまな種が高木層まで伸び上がって生活している。茎は伸びるだけで太く丈夫にしなくてよいから成長は早い。しかし、支えてもらっている木が倒れると自分も倒れてしまう。その場合、地上に倒れたつるの先は、あらためて上を目指すことになる。したがって、寿命の長い種の場合、樹冠まで伸び上がり、落ちてきてからあらためて上に登りを繰り返すと、つるの長さは樹木の高さをはるかに越える場合が当然出てくる。
 
つる植物による宿主植物の探索には、葉が小さく長い茎を持つ特殊化したシュート(探索枝)を伸ばして、周囲の空間にある枝を探る<ref name="haruhiko">{{Citation|title=のびる、つかまる、つながる -つる植物の多様な生態と多様な研究-|url=https://doi.org/10.18960/seitai.69.2_63|publisher=一般社団法人 日本生態学会|date=2019|accessdate=2020-05-11|doi=10.18960/seitai.69.2_63|last=種子田春彦,鈴木牧,井上みずき,森英樹}}</ref>。宿主となる植物の枝にたどり着くと、この探索用のシュートから光合成に有利なたくさんの葉を付けた短い枝を発達させ、新たに獲得した宿主植物の樹冠へ進出するための足掛かりにするのである<ref name="haruhiko"></ref>。
 
つる植物の材の特徴として、引っ張りに強いことが挙げられる。一般の樹木のように直立するわけではないから左右に曲がってもかまわないが、長さの割には細い茎で、高い枝で体を支えながらそれ以下の部分を引っ張らなければならない。そのため、材には細長い縦方向の繊維が多い。また、材の主要な構成要素は[[道管]]であり、茎が細いことは水をくみ上げる点では不利である。そのため、つる植物の茎では道管が太い例が多い。
 
木本性つる植物の影響は樹木個体にとどまらず、倒木などによって生じるギャップ内において、樹木の成長を抑制することによって森林全体の炭素蓄積量を減少させることや、樹木に比べて幹が細い木本性つる植物は、幹の大きさに対する蒸散量が樹木よりも多いことから森林の水循環に貢献しているなど、森林動態にまで影響することが示唆されている<ref>{{Cite journal|和書|author=森英樹|date=2019|title=木本性つる植物フジの空間分布特性とクローン繁殖戦略|journal=森林遺伝育種|volume=8|issue=3|pages=131-137|publisher=森林遺伝育種学会|ref=harv|doi=10.32135/fgtb.8.3_131}}</ref>。
 
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巻き付くために特に分化した紐状の構造。それを他のものに巻き付けることで植物体を固定する。巻き鬚は単独のものも、枝分かれしたものもある。[[エンドウ]]では巻き鬚は葉の先端にあり、葉の一部が変化したものと考えられる。[[トウツルモドキ]]では、葉先が伸びて巻き鬚の機能をもつようになっている。[[ウツボカズラ]]は、葉先からツルが伸び、先端に捕虫のうを持つが、このつるが巻き鬚の働きもかねている。[[ブドウ]]類の巻き鬚は葉の基部から出て、葉と対生する。[[サルトリイバラ]]類では、たく葉の先端が伸びて巻き鬚になっている。
 
巻きひげは、何かに触れるとその先端で巻きつくと同時に、より基部に近い位置で螺旋状にねじれを生じて、植物体を引き寄せる。螺旋状になった巻きひげは、ばねのように働いて緩やかに植物体を固定する役割を果たす。つる植物の巻きひげは、自己識別能力(自株と同種の他株を見分ける能力)と同種識別能力(同種と他種を見分ける能力)を持つことが明らかになっている<ref>{{Citation|title=巻きひげにおける自他・自種識別能力|url=https://doi.org/10.18960/seitai.69.2_93|publisher=一般社団法人 日本生態学会|date=2019|accessdate=2020-05-11|doi=10.18960/seitai.69.2_93|author=山尾僚,深野裕也}}</ref>。ちなみに、この螺旋をよく見ると、途中で向きが反転している。ひっぱられた場合も、この形であれば、ねじれてちぎれることが少ない。
 
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樹冠まで伸び上がるつる植物の場合、樹上の日当たりのよい場所で花を咲かせるものがある。このような種では、森林の地上で生育している時と、樹冠で葉を茂らせる時とで、その葉が大きく変わるものがある。[[テイカカズラ]]や[[イワガラミ]]、[[ツルマサキ]]などがその例であるが、多くの場合、後者はより大きく、のっぺりとしたものになっている。
 
つる植物は、支えとする植物より高くはなれないのが筋であり、その上を高い木が覆うのを止められない。しかし、自分より高くなるものを邪魔するものもある。[[クズ]]は二次林などの上を覆うことがある。その場合、樹木の若い枝にクズのつるが絡み付き、若枝をねじ曲げてしまう場合がある。そのため樹木はクズを越えて成長することができず、場合によっては枯死する。近年、人工林ではつる植物による枯死被害が問題化している<ref>{{Citation|title=ヒノキ造林地における植栽木のつる被害とその発生機構|url=https://doi.org/10.11519/jjfs1953.71.10_395|publisher=日本森林学会|date=1989|accessdate=2020-05-11|doi=10.11519/jjfs1953.71.10_395|author=鈴木和次郎}}</ref><ref>{{Cite web|title=研究の“森”からNo.57|url=http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/mori/mori-57.html|website=www.ffpri.affrc.go.jp|accessdate=2020-05-11}}</ref>
 
森林の中で木が倒れたりしてすきま(ギャップ)が生じると、成長の早いつる植物がそこを覆うことがある。森林外縁にも、つる植物が覆いのような群落を作ることがある。これを[[マント群落]]と言う。