真夜中の都会の片隅で、静寂を破る1人の男が逃げ惑っていた。
懸命に走るも躓いて転倒した男の顔には、尋常ならざる焦りが浮かんでいる。顔を上げた男の目に映ったのは、赤い[[レオタード]]調の戦闘服生地に、黒いプロテクターのような物を身に着け、尖った耳と長くウェーブの掛かった金髪が目立つ少女。獣のような唸り声を上げ少女への怒りを露にする男の顔が、突如内側から食い破られたかのように弾けて崩れ、そこから[[タコ]]とも[[イカ]]とも似付かない軟体の身体を持つ[[怪物]]が出現し、少女に襲い掛かる。しかし少女は少しも恐れず腕を構えると、その拳から眩しい光線を放ち、怪物を跡形も無く消滅させた。その途端、辺りには再び静寂が訪れる。少女の姿も、いつの間にか消えていた。
一方、視界に地球を臨む[[宇宙空間]]には、半球に[[傘]]を被せたような形状の巨大な[[隕石]]型をした、異星人'''[[宇宙船]]「クトゥルフ]]'''の月」[[宇宙船]]が留まっていた。その中の一室では、2人の少女が全裸のまま[[ベッド]]でお互いの四肢を絡め合い、快楽を貪っている。組み敷いている方は'''コバルト'''、組み敷かれている方はと'''セピア'''。やがて行為を終えた後、地球を眺めながらセピアと全裸のまま[[ベッド]]で談笑していたる。二人が口付けを交わす中、コバルトに、クトゥルフの月の中枢部から呼び出しが掛かる。
身支度を整えて中枢部を訪れたコバルトの前で、数人もの従者の真ん中に立つ1人の人物が振り返った。その名は'''サー・バイオレット'''。コバルトの上司であり、クトゥルフの月の長である。サー・バイオレットは巨大ロボット・'''ディロスθ'''の操縦者にコバルトが選ばれたことと、先んじて地球に派遣した[[寄生]]怪物達が妨害を受けていることを彼女に伝える。
怪物達を妨害しているのは、真夜中の都会に現れたあの少女であった。サー・バイオレット達から'''イクサー1'''の名で呼ばれている彼女は、怪物達と戦う一方、自分とシンクロすることで能力を完全に覚醒させてくれる、1人の地球人の少女を探していた。その少女の名は、'''加納渚'''。ごく平凡な家庭で幸せに生きる、普通の女子高生である。
サー・バイオレックトゥルフは、渚の元へも怪物を向かわせていた。最初は単なる悪夢にしか思えなかった状態から、一気に級友も父母も怪物化されてしまった渚は、自分にも寄生のための[[触手]]を伸ばしてくる彼らに恐怖と絶望を覚える。イクサー1が駆け付けてその窮地を救うが、あまりにも過酷な現実に直面した渚は[[パニック]]状態に陥り、イクサー1の言葉に耳を貸さない。一方、クトゥルフの月宇宙船からは、イクサー1と渚の抹殺の使命に燃えるコバルトが、ディロスθに搭乗して地上へ降り立つ。
イクサー1は自らの分身である'''イクサーロボ'''を異空間より呼び寄せ、嫌がる渚と共に搭乗し、街を破壊するディロスθに戦いを挑む。
地球は狙われていたのだ。宇宙の彼方からやってきた放浪の民・'''[[クトゥルフ]]'''によって…。
== 登場人物 ==
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