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[[数学]]における'''無限降下法'''(むげんこうかほう、{{Lang-en-short|infinite descent)descent}}, {{Lang-fr-short|méthode de descente infinie}}、{{Lang-la-short|la descente infinie}}<ref>{{Harvtxt|高瀬|2019|p=130}}</ref>)とは、[[自然数]]が[[整列集合]]であるという性質を利用した、[[証明]]の一手法である。[[背理法]]の一種であり、[[数学的帰納法]]の一型とも見なせる。17世紀の数学者[[ピエール・ド・フェルマー]]が創によって者でありめられたとされ、彼はこの証明法を好んで用いた。紀元前3世紀にユークリッドが(最も古い使用えば『[[ユークリッド原論|原論]]』7にある<ref name=":1">{{Cite web|url=https://brilliant.org/wiki/general-diophantine-equations-fermats-method-of/|title=Fermat's Method of Infinite Descent {{!}} Brilliant Math & Science Wiki|website=brilliant.org|language=en-us|access-date=2019-12-10}}</ref>。典型的な例は『原論』第7巻 命題31の証明)使用していた[[ユークリッド]]は「すべて主張もあ合成数は素数で割り切れ(『原論』の用語では「通約できる」)」ことを無限降下法で示した<ref name=":0">{{要出典Cite web|url=https://www.cut-the-knot.org/WhatIs/WhatIsInfiniteDescent.shtml|title=What Is Infinite Descent|website=www.cut-the-knot.org|access-date=2017年6月2019-12-10}}</ref>
 
== 概要 ==
自然数に関する[[命題]]の証明に威力を発する場合があり、典型的には[[ディオファントス方程式|不定方程式]]に自然数解が存在しないことを示す際に用いられる。具体的には、自然数解が存在すると仮定し、ひとつの解から(ある意味で)より「小さい」別の自然数解が構成できることを示すのである。その構成法より、小さい解を次々に得ることができるはずであるが、自然数の(空集合でない)部分集合には最小のものがあるから、これは[[矛盾]]である。よって、仮定が間違っていたのであり、解が存在しないことが示されたことになる。小さい解を次々に得る様子が「無限に降下」していくように感じられることから、「無限降下法」と呼ばれる。
 
この証明は次のように書き換えることもできる。解が存在するとすると、最も「小さい」ものが存在する。先の構成法から、より小さいものが得られるが、これは最も「小さい」という仮定に矛盾する。よって、解は存在しない。
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を得る。よって ''q'' も偶数である。''q'' = 2''Q'' とすると、
{{Indent|<math>\sqrt{2} = \frac{P}{Q}</math>}}
であるから、{{math|''p'' > ''P'', ''q'' > ''Q''}} により分数表示としてより小さなものが見付かったことになる。この手続きは何度でも繰り返すことができるから、いくらでも小さなものを得ることができる。しかし、自然数の範囲では、それは不可能なはずである。したがって、仮定が誤りだったのであり、2の平方根は無理数である。
 
=== ある不定方程式 ===
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== 歴史 ==
フェルマーは、無限降下法をしばしば「私の方法」と呼び、この方法によって数々の命題を証明したと主張した。彼は詳しい証明をほとんど残していないが、『[[算術 (書物)|算術]]』への45番目の書き込みにおいて、唯一完全に近い証明を残している<ref>『フェルマーを読む』 {{Harvtxt|足立|1986|pp. =156 - 159}}</ref><ref>『フェルマーの大定理』{{Harvtxt|足立|2006|pp=93-95, 2.4 節99-101}}</ref>。ここで彼が証明したことは、「三辺の長さが有理数である直角三角形の面積は平方数にならない」という定理であり、言い換えると「1 は[[合同数]]ではない」ということである。この証明中に、不定方程式
''x''<sup>4</sup> - ''y''<sup>4</sup> = ''z''<sup>2</sup>
が非自明な整数解を持たないこと(これより[[フェルマーの最終定理]]の ''n'' = 4 の場合が導かれる)を、無限降下法によって示している。
 
フェルマーはまた、友人カルカヴィへの手紙の中で、4 で割って 1 余る[[素数]]が[[二個の平方数の和]]で表せるいう命題「[[二個の平方数の和|直角三角形の基本定理]]」と呼びこの命題を無限降下法で示したと述べた{{efn|フェルマーの語る証明の概略おおよそ次以下通りであるように述べた
{{Indent|「4の倍数よりも1だけ大きい素数はどれも二つの平方数で作られる」ということを証明しなければならなくなったとき,たいへんな苦境に陥った<ref>{{Harvtxt|高瀬|2019|pp=129-135}}</ref>.}}}}。フェルマーの語る証明の概略はおおよそ次の通りである。
{{Indent|もし、4 で割って 1 余る素数のうち、二個の平方数の和で書けないものがあるとすると、それより小さいもので、同じ性質を持つものを構成することができる。この構成法により、次々に小さなものを得ることができる。これは矛盾である。}}
無限降下法は、典型的には「解が存在しない」などの否定的命題の証明に用いられるが、このように肯定的命題にも用いられる<ref>詳しい証明は、例えば『フェルマ{{Harvtxt|シャの系譜』 ラウ|オポルカ|1994|loc=第2章}}にある。</ref>。
 
フェルマー以後も、無限降下法の考えはしばしば用いられている。たとえば、[[楕円曲線]]の[[有理点]]のなす[[群 (数学)|群]]が[[有限生成アーベル群]]であることを主張する[[モーデルの定理]]の証明には、有理点の高さに関する、無限降下法と似た議論が用いられる<ref>『楕円曲線論入門』 {{Harvtxt|シルヴァーマン|テイト|2012|loc=3.1 節}}</ref>。
 
== 脚注 ==
{{reflist脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
*{{Cite book|和書
* [[足立恒雄]]『フェルマーの大定理』[[筑摩書房]]、2006年 ISBN 978-4480090126
|author=[[足立恒雄]]
* 足立恒雄『フェルマーを読む』[[日本評論社]]、1986年 ISBN 978-4535781535
|date=1986-06
* シャーラウ、オポルカ著、志賀弘典訳『フェルマーの系譜』日本評論社、1994年 ISBN 978-4535782136
|title=フェルマーを読む
* シルバーマン、テイト著、足立恒雄他訳『楕円曲線論入門』[[シュプリンガー・ジャパン|シュプリンガー・フェアラーク東京]]、1995年 ISBN 978-4431706830
|publisher=[[日本評論社]]
|isbn=978-4-535-78153-5
|ref={{Harvid|足立|1986}}
}}
*{{Cite book|和書
|author=足立恒雄
|date=2006-09
|title=フェルマーの大定理 整数論の源流
|series=ちくま学芸文庫 ア24-1 Math & Science
|publisher=筑摩書房
|isbn=978-4-480-09012-6
|ref={{Harvid|足立|2006}}
}}
*{{Cite book|和書
|last=シャーラウ
|first=W.
|last2=オポルカ
|first2=H.
|translator=志賀弘典
|date=1994-11
|title=フェルマーの系譜 数論における着想の歴史
|publisher=日本評論社
|isbn=978-4-535-78213-6
|ref={{Harvid|シャーラウ|オポルカ|1994}}
}} - 注記:英語版 ''From Fermat to Minkowski : lectures on the theory of numbers and its historical development'' (New York : Springer, 1985)の翻訳。
*{{Cite book|和書|first=J.H.|last=シルヴァーマン|first2=J.|last2=テイト|others=足立恒雄・木田雅成・小松啓一・田谷久雄 共訳|date=2012-07|title=楕円曲線論入門|publisher=丸善出版|isbn=978-4-621-06453-5|ref={{Harvid|シルヴァーマン|テイト|2012}}}} - 注記:原著 ''Rational points on elliptic curves'' (New York ; Tokyo : Springer-Verlag, 1992)の訳. 第2版謝辞(1994.6)あり。
*{{Cite book|和書
|author=[[高瀬正仁]]
|date=2019-01
|title=フェルマ 数と曲線の真理を求めて
|seires=双書・大数学者の数学 17
|publisher=現代数学社
|isbn=978-4-7687-0500-1
|ref={{Harvid|高瀬|2019}}
}}
 
== 外部リンク ==