「男はつらいよ 寅次郎の縁談」の版間の差分

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== あらすじ ==
冒頭では、寅が嫁入り行列に「おめでとうございます」と声を掛け、「門出に一言頂けませんでしょうか」と花嫁の父親にわれて、「二人をここまで育ててあげてくれた皆様に感謝するという気持ちを持って初めて二人は幸せになれる」と言う。
 
[[1993年]]の晩秋を迎えた頃、柴又に帰った寅は、さくら達の様子を見て、尋常ならざる雰囲気を感じ取る。聞けば、大学卒業を目前に控えながら、口べたな性格もあり、大手企業堅企業を心に30社以上受けて就職先が決まらない<ref>本編では言及されていないが、「折しもバブルが崩壊して、就職戦線は『どしゃ降り』と形容された最悪の時期」と説明している書物もある。(『男はつらいよ 寅さんの歩いた日本』p.115)</ref>満男が、博と喧嘩しヤケを起こして家を飛び出して、それから1週間以上が経過しているという事だったことを聞く。寅が帰宅した時に受け取った小包が実は満男からのもので、寅はそれを頼りに瀬戸内海の香川県・琴島<ref>架空の地名。ロケ地は香川県・[[志々島]]。</ref>まで満男を連れ戻しに行く。
 
満男は島の仕事を手伝い、看護婦の亜矢(城山美佳子)とも仲良くなっていた。狭い島の中ということもあって満男とあっさり出会えた寅は東京へ帰るよう説得するが、島での生活に自らの存在価値を感じられるようになっていた満男は、寅の言葉に耳を貸さない。寅もこのまま手ぶらでは帰れないと、島に1泊滞在することにする。そして島の長い階段の途中で休憩しているところで、満男が下宿している家の葉子(松坂慶子)に出会い、その美しさに一目で恋に落ちてしまう。葉子は、今まで病気で療養する必要があったこともあって、神戸でやっている料理屋を休んで<ref>後述のように、実は、経営に失敗して既に店を手放し、借金だけが残ったという状況になっている。この経営失敗についても、前掲『男はつらいよ 寅さんの歩いた日本』(p.115)は、バブル崩壊という世相を反映していると指摘する。</ref>、父である善右衛門(島田正吾)と島で暮らしていた。外国航路の船長をやっていた善右衛門が婚外で産ませた子であるのだが、寅の言う「不幸せに育った人間は妙に情が深い」ことが原因なのか、他のどの子どもよりも老人に懐いていた。宴会になり、老人は善右衛門と葉子[[タンゴ]]を踊る。寅は手拍子を打ち、宴会を盛り上げる。葉子はその最中、寅の肩にもたれかかり、早くも心を許している様子を見せる。
 
翌日、寅は長居しても申し訳ないと島から帰ろうとするが、善右衛門や葉子に引き留められる。たまたま時化で連絡船が欠航したことを幸いとして、満面の笑みで帰京を延期する。寅と葉子は船が再開するまでの数日ですっかり心を通じ合わせ、[[金毘羅権現|金毘羅参り]]に出かけた。葉子は、実は神戸の店は経営難で畳んでしまい、借金に追われて夜逃げするように島に戻ってきて、もう死んでもいいと思ったこともあったと言いつつ、父のそばにいるうちに気持ちがだいぶ楽になってきたところに、さらに寅に会えたことで何でも話を聞いてもらえると思えた、もっと早く会いたかったと言う。葉子は感謝の気持ちで何か寅にプレゼントしたいと思うのだが、寅は受け入れない。思い切って温泉に誘ったが、寅は「俺、風呂へは入らない」と男女の関係になることを避けてしまう。一方、満男は亜矢に弁当を作ってもらい、景色のいい丘で一緒に食べる。満男が寅の歯がゆい恋愛について語ると、亜矢は「満男さんにも遺伝してるんやね」と悪戯っぽく笑い、満男に手編みのセーターをプレゼントする。さらに満男が着ていたトレーナーを奪い、自分で着てしまうので、満男が追いかけたところ、じゃれあった先の納屋の中で二人は抱擁し、「好き」と呟く亜矢に満男もキスをする。
 
帰宅後、葉子は満男に寅が独身か尋ねる。寅に結婚経験がないのはモテないからと満男が言うと、葉子は少し怒って「男の魅力は顔やお金じゃないのよ」と言う。そして、寅の魅力を「電気ストーブのような温かさじゃのうて、ほら、寒い冬の日、お母さんがかじかんだ手をじっとと握ってくれたときのような、体のシンからあたたまるような温かさ」と評する。「じゃあ伯父さんと結婚してくれればいいじゃないですか」と満男が言うと、葉子は少し戸惑いながら「そういうことは本人の口から聞きたいの!」と怒ってしまう。そして、満男がそのことを寅に話すと寅も気まずさから怒ってしまい、二人揃って島を離れることになる。
 
翌朝、琴島への連絡船から降りた亜矢は、満男の突然の帰京に怒りを露わにして泣くが、満男はそれを振り切って船に乗る。泣きながら手を振る亜矢と、やはり泣きながら応える満男の姿のバックに、徳永英明の曲<ref>『最後の言い訳』。</ref>が流れる。一方葉子へは、満男から一筆、寅次郎との連名で書き置きをしたためた。寅は、商売があるからと言ってのため、高松で満男と別れる。二人がいなくなって寂しくなった琴島だが、本当は行くあてのない神戸に戻ると言う葉子に、善右衛門が手元に残っている全財産を渡す。葉子の窮状を寅に伝えられた善右衛門が、葉子への気持ちを示したのだ。葉子は感でむせび泣く。満男は柴又に戻り、就職活動を再開し、いろいろ考えるところがあって中小企業の面接を受けることにする。博もすっかり満男と和解し、ありのままの自分を見せればそれでいいと励ます。<ref>本作では、「今年はいよいよ社会人だね」というタコ社長の言葉、「学生時代最後の正月なんだぞ」という満男の言葉から、就職が決まったということは分かるが、具体的にどこに決まったのかは分からない。次作で、靴製造・卸会社に就職している。</ref>
 
年が明けて、葉子がひょっこりくるまやに来て、「寅さんに会えるかもと思って来たんやけどね」と笑うが、その頃、寅は旅の空。小豆島での啖呵売中に、新しい恋人と初詣に来た亜矢と再会する。そして「満男、お前はまた振られたぞ。ザマあ見ろ」と叫ぶのであった。