「男はつらいよ ぼくの伯父さん」の版間の差分

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|前作=[[男はつらいよ 寅次郎心の旅路]]
|次作=[[男はつらいよ 寅次郎の休日]]
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『'''男はつらいよ ぼくの伯父さん'''』<ref>タイトルは[[ジャック・タチ]]監督の『[[ぼくの伯父さん]]』Mon Oncle([[1958年]])から採っている。</ref>(おとこはつらいよ ぼくのおじさん)は、[[1989年]][[12月27日]]に公開された[[日本映画]]。[[男はつらいよ]]シリーズの42作目。上映時間は109分。観客動員は190万人<ref name="nb_960902">『[[日経ビジネス]]』1996年9月2日号、131頁。</ref>。[[配給収入]]は14億1000万円<ref>{{映連配給収入|1990}}</ref><ref name="nb_960902" />。同時上映は『[[釣りバカ日誌2]]』。
 
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== 概要 ==
*この年本作から寅次郎甥の満男の恋をコーチする役に回っている。背景には渥美清の体調不良で派手な演技ができなくなったことがあり、撮影時に61歳になった歳で振られ役を続けていくのも脚本上酷であるという判断もあった。そのため山田洋次は次作から年に2本作っていたシリーズを次作から年1本に減らし、渥美の肩荷を減らすめに満男の登場シーンを増やし寅次郎の出番を最小限に減らす努力工夫することで、渥美の負担を減らしながら、『男はつらいよを続けていくことになった。また及川泉登場もため、当初は予定されていなかった及川泉を登場させることにもなった。以降、この形式(寅次郎・満男のそれぞれにマドンナが配置される形式)は、最終作『[[男はつらいよ 寅次郎紅の花|寅次郎紅の花]]』まで続く。そして、実現しなかった第49作『男はつらいよ 寅次郎花へんろ』で満男シリーズの完結とする構想であった。
*第42作~第45作に共通する問題であるが、この作品の「マドンナ」を誰と考えるかで、書物・ウェブサイトにより考えが分かれる。大きく分けると、(1)寿子(檀ふみ)だけをマドンナと考えるもの(例えば、『寅さん大全』)、(2)泉(後藤久美子)だけをマドンナと考えるもの(例えば、『男はつらいよパーフェクト・ガイド寅次郎全部見せます』)、(3)寿子と泉をともにマドンナと考えるもの(例えば、公式ウェブサイト)である。(2)の考え方を採ったものでも、第42作~第45作すべてに共通させているわけではなく、第45作では蝶子(風吹ジュン)をマドンナとしているもの(『男はつらいよ寅さん読本』)もあり、多種多様である。
*脚本では寅次郎が終盤、くるまやにカード式電話で電話をかける予定であった{{要出典|date=2019年8月}}。
 
== あらすじ ==
寅次郎が久々に柴又に帰ると、浪人中だが、勉強とは違った人生の悩みを抱える甥の満男(吉岡秀隆)の姿があった。さくらから満男の相談に乗って欲しいと頼まれた寅次郎は、早速近所の飲み屋に一緒に出かける。そして、満男から勉強が身につかない原因が恋であると聞き、人生について語りつつ、満男にしこたま酒を飲ませる。帰宅後、未成年にもかかわらず酒を飲ませた事に激怒する博と大喧嘩した寅次郎は、翌日旅に出てしまう。
 
一方、満男もさくら達と大喧嘩し、家出してしまう。満男は、高校時代の初恋の相手・泉(後藤久美子)が親の離婚別居後引越した名古屋までオートバイで向かう行くために、アルバイトまでしてあらかじめ準備していたのだ。泉の母親・礼子(夏木マリ)の働くスナックを探し出した満男だったが、礼子は、泉は自分と一緒にいたくないためにここにはいず、自分の妹で泉の叔母に当たる寿子(檀ふみ)の家のある佐賀にいると告げる。満男は、事故を起こしたり、[[同性愛|ホモ]]に迫られたりしながら、オートバイで佐賀に向かう。佐賀に着いた満男は、早速泉に会うことができる。満男の出現にビックリしながらも感激する泉だったが、その日は多少の時を過ごしただけで別れる。何とか宿を見つけた満男が相部屋に通されると、そこには何と寅次郎がいた。旅先で心細い気持ちでいた満男は、寅次郎に会えて安堵の表情を浮かべ、寅次郎の電話を代わってもらう形で両親に無事を知らせる。
 
翌日、満男は自分の行動が泉にとって迷惑なのではないかと感じ始めてしまい、東京に帰ろうかと寅次郎に相談する。満男の一途な恋に自分自身をダブらせ、妙に納得した寅次郎は、恋の指南を決心する。[[小野小町]]と[[深草少将]]の[[百夜通い]]の話をするうち、満男に頼まれる形で、一緒に泉の家へ向かう。郷土史研究家で人に説明するのが大好きな祖父<ref>厳密には泉の「祖父」ではない。嘉一の実父で、寿子の義父なので、泉と血のつながりはない。</ref>が寅次郎たちを迎え入れ、寅次郎をすっかり気に入り、ぜひ泊まってゆけという。寅次郎は泉の叔母・寿子(檀ふみ)に好意を持ったこともあって、腰の引けている満男を巻き込んで、泊まらせてもらうことにする。寿子の夫の嘉一(尾藤イサオ)だけは他人が家に泊まるのを嫌がっていたが、しぶしぶ了解する。
 
翌日は日曜日。寅次郎は郷土史研究会の老人たちのお供をして吉野ヶ里遺跡巡りに出かける。満男も泉と連れだってバイクで吉野ヶ里など散策を楽しんだ。ところが、帰宅が遅くなってしまい、高校教師の嘉一から嫌みを言われる。満男は反省していたところに図星を突かれて卑屈になり、嘉一の元に身を寄せる泉を責めるようなことを言ってしまうが、「幸せだからそんなことがえる」と反駁されて、後味の悪い別れになってしまう。
 
翌日、泊まりの郷土巡りから祖父を連れ帰って泉の家を訪れた寅次郎は、嘉一に満男の行為につき、保護者として注意を受ける。それに対し、「私のようなできそこないが、こんなことを言うと笑われるかもしれませんが、私は甥の満男は間違ったことをしてないと思います。慣れない土地へ来て、寂しい思いをしているお嬢さんを慰めようと、両親にも内緒ではるばるオートバイでやってきた満男を、私はむしろよくやったと褒めてやりたいと思います」と、喧嘩腰でない実に紳士的な口調でかばう。<ref>立川志らくは、「寅の進化は日本人独特の微妙な進化だ。」と題した文章(『男はつらいよパーフェクト・ガイド寅次郎全部見せます』p.94)の中で、この部分の寅次郎の「大人の対応」を「寅の進化」の一例として挙げている。</ref>寿子に行先を訊かれ、風の吹くままという趣旨の答えをしながら、「ものの例えですよ。根無し草みたいなもんですからね」と付け足すあたりに、人生を歩んできた深みのようなものが感じられる。<ref>『男はつらいよパーフェクト・ガイド寅次郎全部見せます』p.191所収の「漂泊と定住のあいだ」は、この場面、若い頃の寅次郎であれば「ここで肩で風を切って立ち去る場面」であるが、「彼はもう初老といっていい年齢にさしかかっている。あてどない旅暮らしの表も裏も知り尽くし」ているので、このような言葉が付け足されたのだろうと述べている。</ref>寅次郎は、さらに泉の通う高校を訪ね、泉に「あたし、ちっとも怒ってないって」と満男への伝言を頼まれる。
 
満男柴又に帰ると、とても温かく迎え入れられ、両親と和解する。ちょうどそのとき、寅次郎がくるまやに電話をし、みなが寅次郎への感謝の気持ちを伝える。かくして、和気あいあいとした雰囲気で、満男の初めての家出騒動は解決する。
 
正月になり、満男が外出から帰るとそこには泉がいた。泉は、寅次郎にもらった「愚かな甥」を引き立ててくれるよう頼む年賀状を読んで、笑うのだった。