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'''商号'''(しょうごう)とは、個人[[商人 (商法)|商人]]や[[会社]]が[[営業]]を行うにおいて[[自己]][[表示]]するために使用する名称。
 
== 日本法における商号 ==
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=== 商号の選定 ===
==== 商号の選定の方法 ====
;[[会社]]及び外国会社を除く商人の商号
:商号の選定に関する立法主義には、営業の実態と合致したものに限るとする'''商号真実主義'''もあるが、日本の商法は[[会社]]及び外国会社を除く商人について、原則として、その[[]]、氏名その他の名称をもって[[自由]]に商号を付けることができるものとして'''商号自由主義'''を採用する(商号選択の自由。[[b:商法第11条|商法11条]]1項、旧商法16条)。
;会社の商号
:会社法は、[[会社]]について、その[[名称]]が商号であるとしており([[b:会社法第6条|会社法6条]]1項、旧商法17条、旧有限会社法3条第1項)、逆に会社でない者は商号に会社であることを示す文字を使用することができない([[b:会社法第7条|会社法7条]]、旧商法18条)。また、会社は、その種類に従い、商号中に[[株式会社]]、[[合名会社]]、[[合資会社]]、[[合同会社]]の文字を用いなければならない(会社法6条、旧商法17条、旧有限会社法3条第1項)。
:[[持分会社]]がその商号中に退社した社員の氏若しくは氏名又は名称を用いているときは、退社した社員は、その名称の使用をやめることを請求できる([[b:会社法第613条|会社法613条]])。
;各種業法などに定める名称の使用
:[[銀行]]、[[労働金庫]]、[[信用金庫]]、[[保険会社]]、[[信託会社]]、[[無尽会社]]、[[農業協同組合]]、[[漁業協同組合]]、[[事業協同組合]]、[[生活協同組合|消費生活協同組合]]など特にその[[信用]]維持を確保すべきものとして[[法律]]で定められている一定の[[業種]]については、商号や名称の中に「銀行」、「労働金庫」、「信用金庫」などそれぞれの業種を示す文字を使用しなければならないものとされている([[銀行法]]6条1項、[[労働金庫法]]8条1項、[[信用金庫法]]6条1項、[[保険業法]]7条1項、[[信託業法]]14条1項、[[無尽業法]]4条1項、[[農業協同組合法]]4条1項、[[水産業協同組合法]]3条1項、[[中小企業等協同組合法]]6条1項、[[消費生活協同組合法]]3条1項)。他方で、これらの業種にない者はその名称や商号に「銀行」や「労働金庫」などの文字を用いることを禁じられている(銀行法6条2項、労働金庫法8条2項、信用金庫法6条2項、保険業法7条2項、信託業法14条2項、無尽業法4条2項、農業協同組合法4条2項、水産業協同組合法3条2項、中小企業等協同組合法6条2項、消費生活協同組合法3条2項など)。
:また、「[[日本銀行]]」など特定の[[法人]]に限って独占使用が認められている特定の名称については、その名称の使用が認められている法人以外の者がその文字を用いることはできない([[日本銀行法]]13条、[[日本電信電話株式会社等に関する法律]]8条、[[日本たばこ産業株式会社法]]4条、[[成田国際空港株式会社法]]4条、[[株式会社日本政策金融公庫法]]5条1項など)。
 
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;商号単一の原則
:商人は複数の商号を保有することができるが、同一[[営業]]については同一営業所で複数の商号を持つことはできない。
;会社の名称等に関する規制
:前述のように、会社はその会社の種類に従って「株式会社」や「合名会社」などの文字を用いなければならず(会社法6条2項)、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある[[文字]]を用いることができない(会社法6条3項)。また、会社でない者は会社であると誤認されるおそれのある文字を名称や商号に用いることができない(会社法7条)。
;他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止
:何人も、不正の目的をもって、他の商人や他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない([[b:商法第12条|商法12条]]1項・[[b:会社法第8条|会社法8条]]、旧商法21条)。これに違反した者は、100万円以下の[[過料]]に処せられる([[b:商法第13条|商法13条]]・[[b:会社法第978条|会社法978条]]3号、旧商法22条)。
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アルファベットが使用できることとなったことに合わせて、登記上の商号を片仮名からアルファベットに変更している会社もある(ティーディーケイ株式会社→[[TDK]]株式会社、ケイディーディーアイ株式会社→[[KDDI]]株式会社、エヌティエヌ株式会社→[[NTN]]株式会社、株式会社アクセス→株式会社[[ACCESS (企業)|ACCESS]]、株式会社ワウワウ→株式会社[[WOWOW]]、株式会社ジュージヤ→株式会社[[JEUGIA]]、アスティ株式会社→[[ASTI]]株式会社、株式会社エスティネット→株式会社[[STNet]]、ジューキ株式会社→[[JUKI]]株式会社など)。
 
従来より容認されている[[スペース|空白]]( )や[[中黒]](・)の入った商号を使用している[[企業]](株式会社[[ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント]]など)も、商業[[登記規則]]の改正に伴い、近年増加している。
 
==== 会社名と商号 ====
前述のように、例えば[[株式会社]]の場合、「○○株式会社」または「株式会社○○」のように、その商号中に「株式会社」を含まなければならない<ref>法的には、「○○株式会社□□」のように法人種別を途中に入れても構わないが、実例はごく限られる。</ref>。他に会社の形態にはかつての[[有限会社]]や現在の[[特例有限会社]][[合名会社]][[合資会社]]および[[合同会社]]についても同様である。
 
「会社名」または「社名」は[[商法]]や会社法で定められたものでなく、[[社会通念]]としての呼称(呼び方)であり、「○○株式会社」であっても、会社の形態を含まず「○○」であっても一般的に認識されている。ただし、「○○」と称した場合、[[同一]]のものが有ることがあり、注意を要する。また商号である「○○株式会社」など一つの[[法務局]]の管轄地域内であればその[[本社]]は一つしか商号として[[登記]]上認められない。本社が或る法務局の管轄地域にあり、その会社が別の法務局の管轄地域内に本社業務以外の拠点を置く場合は、「○○株式会社△△営業所」など、[[支店]]、[[営業所]]、出張所、[[工場]]、製造所などを含めて表し、[[本社]]では無いことを唱わなければならない。また、[[英語|英文]]社名が[[定款]]で定められることがあるが、これは日本法上の商号ではない。
 
==== [[屋号]]との違い ====
 
=== 名板貸 ===
自己の商号の使用を他人に許諾した商人は、誤認して取引をした者に対し、[[連帯]]して[[債務]]の[[弁済]]責任を負う([[名板貸責任]]、[[b:商法第14条|商法14条]]、[[b:会社法第9条|会社法9条]]、旧商法23条)。ただし、営業主と誤認するについて重大な[[過失]]があつた者に対しては責任を負わない(判例<ref>[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=28067&hanreiKbn=01 売掛代金請求](最高裁昭和41年1月27日判決)</ref>)。
 
=== 商号権 ===
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;商号使用権(積極的商号権)
:自らの商号を他人から[[妨害]]されずに用いることができる権利(商法12条1項、会社法8条1項)
;商号専用権(消極的商号権)
:自らの商号と[[誤認]]されるおそれのある商号を他人が[[不正]]に用いることを排除する権利(商法12条2項、会社法8条2項)
 
==== 不正競争防止法による商号の保護 ====
[[著名]]性を有する他人の商号と[[同一]]もしくは[[類似]]した商号の使用するなどの行為は[[不正競争防止法]]上の「不正競争」となり(不正競争防止法第2条)、[[差止請求権]]や[[損害賠償]]請求権が認められることになる。
*差止請求権(不正競争防止法第3条)
*損害賠償請求権(不正競争防止法第4条)
 
==== 類似商号規制の廃止 ====
かつては、商法において、同一[[]][[]][[]][[]]内で同一[[事業]]目的である場合には商号[[登記]]を認めない規制(類似商号規制)があったが<ref>この規定を悪用し、有名企業等の本店移転等の際に、移転予定先の市区町村において商号を登記し、移転を妨害するなどの事例があった(有名なものとして「[[東京ガス]]事件」)。この場合、[[営業]]の実体が無いにもかかわらず、当該商号を登記するのは[[濫用#民法|権利の濫用]]に他ならないとして、登記を無効とする判断がなされた(同事件の昭和36.9.29最高裁判決)。</ref>、会社法の施行時の商法改正に伴い廃止された。同一商号による不正競争に対しては、[[不正競争防止法]]で対応すれば十分とされたためである。
 
=== 商号の譲渡・相続 ===
;商号の譲渡
:商号は営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、有償もしくは無償を問わず、[[譲渡]]することができ、[[商業登記|登記]]すれば第三者に対抗できる([[b:商法第15条|商法15条]]、旧商法24条)。営業を譲り受けた商人が譲渡人の用いていた商号を続用する場合には商法15条に定められる責任を伴う。
;商号の相続
:商号は[[相続]]の対象となる([[b:商業登記法第30条|商業登記法30条]]3項・[[b:商業登記法第32条|商業登記法32条]])。
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[[英米法]]では商号はtrade name<ref name="eibei950">鴻常夫、北沢正啓編修『英米商事法辞典』、1998年、950頁</ref>またはbusiness name<ref name="eibei127">鴻常夫、北沢正啓編修『英米商事法辞典』、1998年、127頁</ref>という。
 
商号は[[個人事業主]]である[[商人]]や、[[法人]][[会社]]において定められ、それぞれの営業ないし事業の[[グッドウィル]](日本語でいう[[のれん (会計)|のれん]])を示すための[[機能]]を有している<ref name="eibei950" />。
 
英米法でも[[不正競争]]禁止の[[法理]]により商号は[[商号権]]の[[侵害]]から[[保護]]を受ける<ref name="eibei950" />。
 
なお、英米法では組合(partnership)が事業に用いる[[名称]]も商号(business name)という<ref name="eibei127" />。
 
== 脚注 ==