「核酸医薬」の版間の差分

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==== デリバリー ====
静脈内投与のような全身投与で[[siRNA]]を作用させるには多くの障壁がある。siRNAのみでは生体内で標的臓器および細胞にデリバリーされないため、何らかの形で[[DDS]]を付加する必要がある<ref>Yale J Biol Med. 2012 Jun;85(2):187-200. PMID 22737048</ref><ref>Nat Rev Drug Discov. 2009; 8(2): 129–138. PMID 19180106</ref>。[[リポソーム]]や[[ナノ粒子]]がよく知られたDDSであるがコレステロール-siRNAコンジュゲートも優れたデリバリー効果を示す。コレステロール-siRNAコンジュゲートは2004年にsiRNAのベンチャー企業であるアルナイラム社によって報告された<ref>Nature. 2004 Nov 11;432(7014):173-8. PMID 15538359</ref>。siRNAの[[センス鎖]]の3’末端にピロリジンリンカーを介して[[コレステロール]]が結合したものである。[[血漿蛋白質]]である[[アルブミン]]との親和性を示し、siRNA単体と比較して血中半減期が長くなっている。また、[[ヌクレアーゼ]]耐性化を目的としてホスホロチオエート結合と2'-O-メチル化がなされている。アポリポタンパク質Bに対するコレステロール-siRNAコンジェゲートを50mg/kgで静脈内投与することで肝臓および空腸においてmRNA抑制効果が認められた。RACE (rapid amplification of cDNA ends)-PCR法によるRNAi特異的なmRNA切断断片を検出することで[[RNAi]]が誘導されたことを証明している。2007年にはコレステロール-siRNAコンジュゲートが[[LDL]]および[[HDL]]と相互作用し、その取込にはそれぞれ[[LDL受容体]]およびスカベンジャー受容体クラスBタイプ1(SR-B1)が必要であることも示された<ref>Nat Biotechnol. 2007 Oct;25(10):1149-57. PMID 17873866</ref>。本技術はsiRNAを静脈内投与によりRNAiを誘導した世界初の報告例である。コレステロール-siRNAコンジュゲートを[[血液脳関門]]を構成する脳微小血管内皮細胞にデリバリーした報告もある<ref>Mol Ther. 2011 Dec;19(12):2213-21. PMID 21915100</ref>。
siRNAのみでは生体内で標的臓器および細胞にデリバリーされないため、何らかの形でDDSを付加する必要がある。siRNAにコレステロールを直接結合させることでsiRNAの肝臓へのデリバリーを格段に向上させたという報告がある<ref>Nature. 2004 Nov 11;432(7014):173-8. PMID 15538359</ref>。
 
また[[東京医科歯科大学]]の横田らは、Toc(天然型[[ビタミンE]]、トコフェロール)を結合させたsiRNAが高い肝臓・脳集積性とRNA抑制効果を示すことを報告している
<ref>Mol Ther. 2008 Apr;16(4):734-740. PMID 28178465</ref><ref>Hum Gene Ther. 2011 Jun;22(6):711-9. PMID 21166521</ref>。
 
==== siRNAの設計 ====