「星を継ぐもの」の版間の差分

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『'''星を継ぐもの'''』(ほしをつぐもの、原題:''Inherit the Stars'')は、[[ジェイムズ・P・ホーガン]]による[[サイエンス・フィクション|SF小説]]。[[1977年]]に上梓されたホーガンのデビュー作である。日本では1981年第12回[[星雲賞]]海外長編賞を受賞している。
 
あり得ない現実と事実を突き付けられ、その謎を解き明かしつつ[[人類]]の生い立ちを解明していく[[ハードSF]]の代表作のひとつ。作品発表当時に人類進化上の謎として知られていた[[ミッシングリンク]]、[[小惑星帯]][[月]]の起源、なかんずく月が表と裏で異なる様相を示す理由について、SFの視点から解釈を与えている。
 
2015年現在で累計45万部を売り上げ、[[創元SF文庫]]最大のヒット作となっている<ref>{{cite web|url=https://www.nishinippon.co.jp/feature/f_sicence_fiction/article/174424/ |title=<4>5万年のアリバイ崩し【星を継ぐもの】|date=2015-06-09|accessdate=2018-09-30|website=西日本新聞}}</ref>。
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[[月|月面]]で真紅の宇宙服を着た[[人間]]の[[ミイラ|遺骸]]が発見された。この人物は何者なのか?
 
各国の組織に照会するも該当する行方不明者は居なかった。のみならず[[放射性炭素年代測定|C14法]]による遺骸の年代測定では彼は[[石器時代|5万年前]]に死亡したとの結果が得られ、'''チャーリー'''と名付けられたこの人物、そして、彼が所属し、月で発見されたことから'''ルナリアン'''と呼ばれる様になった人類集団の出自は全く謎であった。
 
その正体を探るために、ニュートリノを使用して物質を透過撮影できるトライマグニスコープが手配されると共に、その開発者であるヴィクター・ハントにも調査への参加が要請された。スコープを駆使して少しずつ齎された情報と数少ない所持品を手がかりにあらゆる分野の[[学問]]を総動員した分析が始まった。だが、その指し示す事象は矛盾だらけだった。
 
所持品の中に現代技術を駆使しても造る事の出来ない超小型の原子力パワーパックが見つかり、使用されていた放射性物質の崩壊からも5万年前という値が裏付けられた。だが、こんな高度な技術が地球に存在した痕跡は無い。これに対し生物学者のクリスチャン・ダンチェッカーはチャーリーの遺骸を調べ上げ、「彼」が間違いなく[[ヒト]]であると断言し出身地は地球であると主張する。一方で、ダンチェッカーは、チャーリーの持っていた携行食料と思われるものを調べ、その材料となった水棲生物の肉体構造が、地球生物のものと根本的に異なり、とても地球産とは思われないことに悩む。また、手帳と思われるものを透過撮影して浮かび上がった[[記号]]の[[解読]]は言語学者の協力を得ても困難を極めた。もしが、それはチャーリー[[文字]]なら内容記した日記であると判明する。彼月面の部隊に配属された軍人であり、地球上の戦闘観察、月面の基地から放たれたエネルギー波が地球上の敵を灼く様子を記録にとどめていた。だが、有史以前地球に大規模な戦争の痕跡は見られないそしてまた、カレンダーらしきものも見出されたが、現在の地球とは相容れない暦法から成り立っていた。携帯食料と思われるものの素材は水棲生物の様だが、その肉体構造は地球生物のものと根本的に異なり、とても地球産とは思われなかった。相矛盾する事象を整理し、数々の仮説が立てられ、謎が少しずつ解き明かされていくかに見えつつも、別の事実がその仮説を否定する。その繰り返しがいつまでも続き結論に行き着く見込みは立たなかった。果たして、チャーリーは一体何者なのか、どこから来たのか、何故、ここに居たのか、そしてどこに行こうとしていたのか?
 
さらに[[木星]]の[[衛星]][[ガニメデ (衛星)|ガニメデ]]を訪れた探検調査隊が発見した驚異の物体が混迷の度を増した。それは人類にとってまったく未知の知性体の手になる宇宙船の残骸であり、内部から大柄な体躯の搭乗員が発見された。ガニメデで発見されたことから'''ガニメアン'''と名づけられた彼ら種族を調査したところ、その肉体構造は件の水棲生物と相似していることも明らかになった。直接現地ガニメデに赴いてこれを目の当たりにしたハントやダンチェッカーらは更に深まる謎に悩まされるが、やがて、人類の生い立ち、そして、かつての太陽系の姿につき、一つのストーリーが形作られていく。
 
(以下『[[ガニメデの優しい巨人]]』に続く)