「日本の商標制度」の版間の差分

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=== 定義 ===
日本では、[[商標法]]が「商標」「商標権」を定めている。商標法における商標の定義は以下のとおりである
 
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すなわち、人の知覚によって認識することができるもののうち、
* 文字 → 商品やサービスの名称(文字列、[[フォント]]の種類やスタイルといった書式は問わない
* 図形 → 商品やサービスを絵で表したもの
* 記号 → 社標など(企業のロゴ、作品名のタイトルロゴなど)
* 立体的形状 → 容器の形状など
* 色彩 → 2色以上の組み合わせによる、企業のイメージカラーなど
* 色彩
* 音(企業のCMで用いられる、[[サウンドロゴ]]など)
* 音
であって、モノ(商品)や生産・販売したり、サービス(役務)を提供する事業者が、それを識別するために用いるもの、となる。文字、図形、記号、立体的形状、色彩は組み合わせることができる。なお、政令委任規定が追加された平成27年4月時点で政令で定められているものはない。これは、将来保護ニーズが高まったものについて法律を改正することなく登録を認めることができるよう措置したものである
 
=== 商標権の効力 ===
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==== 専用権と禁止権 ====
商標権の効力は専用権と禁止権に分けられ、それぞれ以下の範囲の効力をもつ(「専用権」と「禁止権」の文言は商標法の文面にはあ用いていないことに注意)。
; 専用権
: 商標権者(専用使用権でそう設定したときの、専用使用権者を含む)は、指定商品又は指定役務について登録商標を使用する権利を専有する(25条)。
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==== 商標権の効力が及ばない商標 ====
26条には、その商品の普通名称など、商標権の効力が及ばない商標(他の商標の一部となつているものを含む。)が規定されている。これに該当する場合には、商標権の効力が及ばない。普通名称などは特定人に使用を独占させることが好ましくないと考えられるからである。たとえば、「アスカレーター」が商標登録されていても、それに類似する「エスカレーター」が普通名称である場合は「アスカレーター」に係る権利の効力は、「エスカレーター」の使用行為には及ばない(26条1項3号)。
 
また、商品や広告に対して他者の商標を形式的に表示していても、商品やサービスが何人(例えば権利者)であるかの業務に係るものであると認識するような態様ではない(商標的使用ではない)場合は、商標権の効力が及ばない(第26条1項6号)。例えば、商標的に使用されていない、題名、キャッチフレーズ、説明文、小説や漫画中の会話、デザイン等の形式的な使用(商標的使用ではないと認められる限り)は商標権侵害とはならない。<ref name="平成26年特許法等の一部を改正する法律における商標法の改正の概要">[http://www.tokugikon.jp/gikonshi/276/276tokusyu03.pdf]平成26年特許法等の一部を改正する法律における商標法の改正の概要</ref><ref name="商標権侵害とは何ですか。 | 日本弁理士会 近畿支部">[http://www.kjpaa.jp/qa/46505.html]商標権侵害とは何ですか。 | 日本弁理士会 近畿支部</ref>
 
==== 先使用権 ====
他者が登録した商標について、その商標を登録以前から使用していた者は、当該商標を引き続き使用する権利を有する(33条)。ただし、先使用権が認められるためには、単にその商標を登録前から使用していただけでは足りず、その商標を使用していたことが需要者の間に広く認識されていた(周知)ことが必要である
 
==== 存続期間 ====
商標権の存続期間は設定日から10年間であるが(19条1項)、商標権者の更新登録の申請により更新することができる(同条2項)とされている。更新には回数の制限がないため、更新を繰り返すことで、理論上永久より権利が永を存させることもできる。特許権、意匠権、著作権のような他の知的財産権と異なり、商標権が永続できるのは、権利者が名称を継続して使用する限りにおいては、名称の価値(商品のブランド価値)は時が経っても陳腐化することがないと考えられるからである。一方、商標権の存続期間を10年とし、必要な場合に何回でも更新することができることとしたのは、何らの制限なしに商標権が永久に存続できとすようになると、権利者が業務の廃止(倒産)などの理由により商標権存続を希望しできなくなったような場合、商標が時代の推移とともに反公益的な性格を帯びるようになった場合、長期間にわたって使用されていない大量の登録商標が存在し続けることによって商標制度本来の趣旨を逸脱するような事態となる場合等に不当な結果を招くこととなるからである
 
=== 商標登録の手続 ===
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=== 商標登録の取消しおよび無効 ===
所定の理由がある場合には商標登録が取り消されたり無効とされたりすることがある。取消しまたは無効にする主な手段は以下のとおりである
 
; 異議の申立て
: 商標登録後も、商標掲載公報の発行の日から2月以内であれば、何人も特許庁長官に対して異議の申立てを行うことができる(43条の2)。異議申立てがあった場合、3人または5人の審判官による審理が行われ、43条の2第1号および2号に定められた取消理由があると判断された場合には、登録は取り消され、権利(専用使用権、通常使用権を含む)は初めからなかったものとされる(取消しの遡及効、43条の3第3項)。
; 無効審判
: 3条や4条などの規定に違反した商標が誤って商標登録された場合や、商標登録後に無効理由が生じた場合には、利害関係人は商標登録を無効にすることを請求できる(無効審判、46条)。一定の私益的な無効理由については、5年の除斥期間が設けられており、除斥期間経過後は無効審判の請求ができない(47条)。これは、登録後一定期間経過するとその商標に信用が化体するため、無効にする利益よりもすでに生じている信用を優先させたものである。なお、公益的な無効理由については、信用を優先させることは適当ではないため、除斥期間は設けられていない。
; 不使用取消審判
: 法は、名称に化体された信用を保護するために権利者に専用権および禁止権を認めているのであり、実際に使用されない名称には信用が化体しないから、使用されていない名称に保護を与え続ける必要はない。そこで、継続して3年以上日本国内で指定商品等について登録商標が使用されていない場合には、何人も登録商標の取消しを請求することができる(不使用取消審判、50条1項)。これに対し、商標権者(又は使用権者のいずれか)が使用していたことを立証できない場合には、商標権は審判の請求の登録の日に遡って消滅する(50条2項、54条2項)。なお、不使用取消審判の請求がされることを知ってから、取消しを免れるために駆け込み的に使用を始めても、取消しを免れることはできない(50条3項)。
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== 商標の登録と用語 ==
* [[商標]](TM): 正式に登録を受けていない商標。(前述
* 登録商標(®): 商標登録を受けている商標(2条5項)。
* 商標登録: 商標権の設定の商標原簿への登録手続き。登録されると商標権が発生する。(登録商標でない商標の保護は[[不正競争防止法]]による)
* 商標登録表示: 商標権者・使用権者が登録商標を付するときに、その商標に付するよう努めなければならない、その商標が登録商標である旨の表示(73条)。 - 具体的な表示のしかたは商標法施行規則17条
 
== 不正競争防止法による保護 ==
商標権における専用権・禁止権は、登録商品・登録役務またはそれらに類似するものに対して効力がある。
 
しかし商標が需要者の間に広く認識されている周知のものや、需要者以外にも全国的に広く知られている著名なものについては、不正競争防止法により保護される。商標の登録の有無を問わず、他者による商品名や店名等の商標的な使用が対象となるため保護範囲が広い。<ref name="不正競争防止法テキスト">[http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/20181201unfaircompetitiontext.pdf]不正競争防止法テキスト</ref><ref name="不正競争防止法違反とは(METI/経済産業省)">[http://www.meti.go.jp/policy/ipr/infringe/about/unfair.html]不正競争防止法違反とは(METI/経済産業省)</ref>
 
== 脚注 ==