「空間ベクトル」の版間の差分

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この記事では、[[ユークリッド空間]]内の幾何ベクトル、とくに 3次元のものについて扱い、部分的に一般化・抽象化された場合について言及する。本項目で特に断り無く空間と呼ぶときは、[[3次元実ユークリッド空間]]のことを指す。
 
== 概要数学的な記述 ==
[[Image:OrderedLineSegment.png|thumb|right|点 S を始点とし、点 T を終点とする有向線分]]
空間内に二つの点 ''S'' と ''T'' をとり、''S'' から ''T'' へ向かう[[線分]]を'''有向線分'''と呼ぶ。''S'' を'''始点'''(してん、<span lang=en>initial point, source</span>, しっぽ)、''T'' を'''終点'''(しゅうてん、<span lang=en>terminal point, target</span>, あたま)と呼び、向きの区別のために終点 ''T'' の側の端に山を書いて線分を矢印にする。
 
[[image:SameVectors.png|thumb|right|互いに同じ向きに平行な長さの等しい有向線分に対応するベクトルは互いに等しい]]
ある点 ''S'' に向きと大きさをった量 '''v''' が作用しているとき、'''v''' の作用と同じ向きで、長さが '''v''' の作用の大きさに比例するように有向線分 <math>\overrightarrow{ST}</math> をとって '''v''' を
:<math>\mathbf{v} = \overrightarrow{ST}</math>
と表現する。
と表現する。別の点 ''S''&prime; に同じように '''v''' の作用の向き、大きさにあわせて有向線分 <math>\overrightarrow{S'T'}</math> をつくるとこれらは互いに平行 <math>(\overrightarrow{ST} \parallel \overrightarrow{S'T'})</math> になるが、これも元の量 '''v''' を表すものとして
 
と表現する。別の点 ''S''&prime; に同じように '''v''' の作用の向き、大きさにあわせて有向線分 <math>\overrightarrow{S'T'}</math> をつくるとこれらは互いに平行 <math>(\overrightarrow{ST} \parallel \overrightarrow{S'T'})</math> になるが、これも元の量 '''v''' を表すものとして
:<math>\mathbf{v} = \overrightarrow{S'T'}</math>
と記し、同じものとみなすというのが向きと大きさを持った量という'''ベクトル'''の概念の幾何学的な表現('''幾何学的ベクトル''')である。
 
[[Image:Scalar multiplication of vectors.png|thumb|left|ベクトルのスカラー倍]]
あるベクトル '''a''' と同じ方向で大きさの比率('''スカラー''')が ''k'' であるようなベクトルを ''k'''''a''' と表す。また、'''a''' と同じ大きさで逆の向きをつベクトルは &minus;'''a''' と表す。同様に、'''a''' と逆の向きをち大きさの比率が ''k'' であるようなベクトルは &minus;''k'''''a''' と記す。これをベクトル '''a''' のスカラー ''k'' 倍あるいは単に'''スカラー倍'''(スカラー乗法)と呼ぶ。
 
[[Image:Vector addition.png|thumb|right|ベクトルの和]]
二つのベクトル '''a''', '''b''' の和 '''a''' + '''b''' を、それらの始点を合わせたときにできる平行四辺形の(始点を共有する)対角線に対応するベクトルと定める(三つ以上のベクトルの和も、二つの和をとる演算から帰納的に定める)。'''a''', '''b''' がどんなものであっても '''a''' + '''b''' = '''b''' + '''a''' が成り立っていることに注意されたい。
 
また逆に、あるベクトルを二つ(以上)の異なるベクトルの和に分解することができる。とくに''xyz''-空間の各軸の方向で長さ 1 の有向線分に対応するベクトル('''基本ベクトル'''、[[単位ベクトル]])を ''x'', ''y'', ''z'' の各軸でそれぞれ '''i''', '''j''', '''k''' と置くと、任意のベクトル '''v''' は
:<math>\mathbf{v} = v_x \mathbf{i} + v_y \mathbf{j} + v_z \mathbf{k}</math>
の形に表せる。

ここで、[[ピタゴラスの定理]]を用いると、ベクトル '''v''' の大きさ ||'''v'''|| は
:<math>\lVert\mathbf{v}\rVert = \sqrt{v_x^2 + v_y^2 + v_z^2}</math>
によって求まる。
 
ベクトルの始点を ''xyz''-座標系の原点に合わせると、任意のベクトルはその終点の座標によって一意的に表すことができる
:<math>\mathbf{v} := v_x \mathbf{i} + v_y \mathbf{j} + v_z \mathbf{k}
\leftrightarrow (v_x, v_y, v_z) =: P(\mathbf{v}).
</math>
このとき、空間内の点 ''Q'' に対して ''Q'' = ''P''('''v''') となるベクトル '''v''' を点 ''Q'' の'''[[位置ベクトル]]'''と呼ぶ。
 
==歴史==
いわゆる矢印ベクトルは物理学の教育では力学の初歩から導入されるため、ベクトルも古典力学と同時(17世紀ごろ)に発生したと思われるかもしれないが、実はもっと後の19世紀になって現れたものである。今でこそベクトルや行列などを使って、物理学や幾何の問題を解くといったことは常識であるが、ベクトルが誕生する以前の数学や物理学では[[初等幾何学]]、[[解析幾何学]]や[[四元数]]などを利用していた。今日我々が知っているベクトルの概念は、およそ200年もの時間を掛けて徐々に形成されてきたものである。そこでは何十人もの人々が重要な役割を果たしてきた<ref name="Crowe">Michael J. Crowe, [[A History of Vector Analysis]]; see also his [https://web.archive.org/web/20040126161844/http://www.nku.edu/~curtin/crowe_oresme.pdf lecture notes] on the subject.</ref>。ベクトルの先祖は[[四元数]]であり、ハミルトンが1843年に複素数の一般化によって考案したものである。ハミルトンは最初に、二次元における複素数と複素平面のような関係を満たすような数を三次元空間にも見いだそうとしたが失敗し、なぜか三つの数の組では二次元の場合の複素数と複素平面のように三次元空間を記述できないことが判明した。