「金瓶梅」の版間の差分

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== 特徴 ==
『金瓶梅』は『[[西遊記]]』『[[水滸伝]]』『[[三国志演義]]』とならんで四大奇書と呼ばれるものではあるが、他の三書が街で多数の演者により語られてきた、講談を基に編集された書であるのとは異なり、一人の人物が緻密に構成して書き上げたという点で、中国の[[白話小説]]でも画期的なものである<ref name="inami">[[井波律子]]『中国の五大小説 下 水滸伝・金瓶梅・紅楼夢』(岩波新書、2009年)、『金瓶梅』の巻 p124-127</ref>。『金瓶梅』は中国文学史上、それまでの『水滸伝』や『三国志演義』などの波乱万丈のストーリーを特徴とする小説からの転換点にあたり、その後の『[[儒林外史]]』や『[[紅楼夢]]』などの小説に大きな影響を与えた。中国文学者[[中野美代子]]は、著書『中国人の思考様式-小説の世界から-』([[講談社現代新書]]、1974年)で、作者と読者(聴衆ではなく)の一対一の関係の設立した中国での最初の小説として、[[魯迅]]以降の近代小説の先駆的存在と述べている<ref>荒木、1990年、p.2</ref>。複数の作者がいるという説もあるが、第一回から西門慶が死んで財産が散り散りになってしまうことが予告され、それに向かってそれぞれの登場人物の結末に周到に伏線が張られていることから、複数の作者がいたとは考えにくい<ref>日下、1995年、pp.34-35</ref> 。
 
『金瓶梅』は『水滸伝』のプロットを利用しているほかにも、一回ものの講談を基にした話本<ref>話本とはもともとは講釈師の台本のことである。</ref> 、これを模した白話短編小説の擬話本、事件や裁判を描いた公案小説、[[元曲]]などの引用や影響も多くみられる<ref>井波律子『中国の五大小説.下 水滸伝・金瓶梅・紅楼夢』(岩波新書、2009年) p188-190</ref>。当時の他の小説も、他の本からの引用やパロディが使われていたが、それが分かったからと言って作者の創作方法や創作意図が明らかになるわけではない<ref Name="HananP22">ハナン:荒木訳、1994年、p.22</ref> 。しかし『金瓶梅』の場合、なぜ作者がその素材を選び、それをどのように使用しているのかということは『金瓶梅』を理解する上での重要なテーマで<ref Name="HananP22"/>、パトリック・ハナンが1963年に初めてこのテーマを扱った網羅的な論文を発表した(''Source of the Chin P'ing Mei'' Asia Major N.S. vol X Part I, 1963)。