「大脳皮質基底核変性症」の版間の差分

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複数のCBSの臨床診断基準が提唱されている。代表的なものはトロント基準、メイヨー基準<ref>Ann Neurol. 2003;54 Suppl 5:S15-9. PMID 12833363</ref>、ケンブリッジ基準<ref>Mov Disord. 2009 Aug 15;24(11):1593-9. PMID 19533751</ref>の3つが知られている。ケンブリッジ基準は後に改定された<ref>J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012 Apr;83(4):405-10. PMID 22019546</ref>。これらに共通する特徴としてはCBSを進行性、非対称性で失行を伴うakinetic rigidity syndromeと考えていること、それぞれの診断項目がどの時期に出現するかについては言及がないこと、診断項目は前向きの自然歴研究に基づくものではなく専門家の経験に基づくものであることといった特徴があげられる。相違点は認知機能障害の重み付けが各基準で異なっている。CBSの診断基準としては改訂ケンブリッジ基準がよく用いられる<ref>J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012 Apr;83(4):405-10. PMID 22019546</ref>。
 
その後、病理学的なCBDの表現型が非常に多彩であることが明らかになりCBS以外の表現系を含むアームストロング基準が作成された<ref>Neurology. 2013 Jan 29; 80(5): 496–503. PMID 23359374</ref>。CBS以外の表現系を含む基準という点ではアームストロング基準は画期的であるが妥当性の検証では感度、特異度とも高くなかった<ref>Mov Disord. 2014 Feb;29(2):238-44. PMID 24259271</ref><ref>J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014 Aug;85(8):925-9. PMID 24521567</ref>。CBDと[[アルツハイマー病]]の区別が困難なことが原因の一つであった。CBDとアルツハイマー病の鑑別ではDayらの検討が知られている<ref>Neurology. 2017 Mar 28;88(13):1273-1281. PMID 28235814</ref>。病初期に非対称性運動・感覚徴候、病歴腱反射亢進、[[パーキンソン症候群]]や[[ジストニア]]の3つが認められるときはCBDが示唆される。進行期に転倒、尿失禁、外眼筋障害の3つが認められるときはCBDが示唆される
 
=== 病理臨床診断CBDCBS臨床背景病理診断 ===
臨床診断CBSにおける背景病理診断は複数の報告がある。CBDは半数未満であり、PSPとアルツハイマー型認知症が20%程度であった。LingらはCBSからCBDを除外する所見としては2年以上にわたってL-DOPAが有効であること、罹患年数が10年異常であること、発症2年以内に核上性眼筋麻痺が出現することを挙げている<ref>Brain. 2010 Jul;133(Pt 7):2045-57 PMID 20584946</ref>。PSPを背景病理とするCBS (CBS-PSP) は全体の2割程度存在する。Tsuboiらの報告ではCBS-PSP5例の臨床像の検討<ref>Mov Disord. 2005 Aug;20(8):982-8. PMID 15834857</ref>からは全例で症状の非対称性を認め、4例で失行、他人の手徴候を呈し、3例で記銘力障害、2例で失語、皮質性感覚障害を認めた。リチャードソン症候群に特徴的な易転倒性はなく、NINDS-SPSPのPSP診断基準はみたさずPSPと臨床診断を行うのは困難であった。アルツハイマー型認知症を背景病理とするCBS (CBS-AD) も2割程度存在する。ShelleyらはCBS-ADとCBS-CBDの各6名を比較してCBS-AD全例で非対称性の錐体外路徴候を認め、病初期のエピソード記憶の障害はCBS-ADを示唆する病初期の非流暢性言語障害、口部失行症、道具の使用行為(視覚的または触覚的に提示された道具を無意識に使用してしまうという症状)はCBS-CBDを示唆すると報告している<ref>Mov Disord. 2009 Aug 15;24(11):1593-9. PMID 19533751</ref>。Dayらの検討<ref>Neurology. 2017 Mar 28;88(13):1273-1281. PMID 28235814</ref>によると病初期に非対称性運動・感覚徴候、病歴腱反射亢進、[[パーキンソン症候群]]や[[ジストニア]]の3つが認められるときはCBDが示唆される。進行期に転倒、尿失禁、外眼筋障害の3つが認められるときはCBDが示唆される
 
== CBDの病理診断 ==
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少数例であるが大脳皮質基底核変性症の脊髄病理の報告がある。Iwasakiらの報告<ref>Acta Neuropathol. 2005 Jun;109(6):632-8. PMID 15920662</ref>の報告では白質、灰白質にニューロピルスレッドが認められた。Tsuchiyaら<ref>Acta Neuropathol. 2005 Apr;109(4):353-66. PMID 15735950</ref>は中心前回の神経細胞脱落と錐体路変性を報告しているが脊髄病理に関しては記載していない。
 
=== 臨床病理診断CBSCBD背景病理臨床診断 ===
臨床診断CBSにおける背景病理診断は複数の報告がある。CBDは半数未満であり、PSPとアルツハイマー型認知症が20%程度であった。LingらはCBSからCBDを除外する所見としては2年以上にわたってL-DOPAが有効であること、罹患年数が10年異常であること、発症2年以内に核上性眼筋麻痺が出現することを挙げている<ref>Brain. 2010 Jul;133(Pt 7):2045-57 PMID 20584946</ref>。PSPを背景病理とするCBS (CBS-PSP) は全体の2割程度存在する。Tsuboiらの報告ではCBS-PSP5例の臨床像の検討<ref>Mov Disord. 2005 Aug;20(8):982-8. PMID 15834857</ref>からは全例で症状の非対称性を認め、4例で失行、他人の手徴候を呈し、3例で記銘力障害、2例で失語、皮質性感覚障害を認めた。リチャードソン症候群に特徴的な易転倒性はなく、NINDS-SPSPのPSP診断基準はみたさずPSPと臨床診断を行うのは困難であった。アルツハイマー型認知症を背景病理とするCBS (CBS-AD) も2割り程度存在する。ShelleyらはCBS-ADとCBS-CBDの各6名を比較してCBS-AD全例で非対称性の錐体外路徴候を認め、病初期のエピソード記憶の障害はCBS-ADを示唆する病初期の非流暢性言語障害、口部失行症、道具の使用行為(視覚的または触覚的に提示された道具を無意識に使用してしまうという症状)はCBS-CBDを示唆すると報告している<ref>Mov Disord. 2009 Aug 15;24(11):1593-9. PMID 19533751</ref>。
 
== 病理診断CBDの臨床診断 ==
病理診断でCBDと診断された例の生前の臨床像は多彩である。Lingらは病理診断されたCBD19名の臨床像を検討し、CBS-CBDは5例 (26.3%) しかいないと報告した<ref>Brain. 2010 Jul;133(Pt 7):2045-57 PMID 20584946</ref>。この5例全てにあてはまる臨床症状としては左右非対称、四肢の失行、ミオクローヌス、clumsy useless limbの4つ、4例に当てはまる症状は皮質性感覚障害、四肢の局所性ジストニアの2つでありCBDの中核症状と考えた。一方19例中8例に核上性眼筋麻痺、7例に発症2年以内の易転倒性がみられ8例 (42%) がPSP様の臨床像を呈した。