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[[File:2015-12-17 Old hous in Haterumajima 波照間島集落古民家 DSCF3199.JPG|thumb|right|250px|[[フクギ]]の屋敷林([[波照間島]])]]
'''屋敷林'''(やしきりん)は、屋敷の周囲に設置された[[森林|林]]。屋敷森とも呼ばれる家屋の一方向または複数方向に配列された樹木群である。[[台風]]、[[季節風]]、[[地方風]]などの風のエネルギーを低減させて、集落や家屋を保護する手段として活用されている<ref name="pamph03" />。また、多雪域では敷地内の積雪を少なくさせる効果もある。
 
== 概説 ==
[[屋敷]]とは家の建っている敷地であり、その敷地に形成された林群を屋敷林と言う。これは一般的には[[防風林]]や[[防雪林]]として機能し、特に家々が孤立している場合は有効である。家屋に対する屋敷林の配置方向には地域における共通性、系統性が認められる事が多く、その方向は当該地域において防ぐべき強風の風向を示している。季節風が強い地域に多い<ref name="pamph03">{{Cite web |url= http://www.env.go.jp/nature/biodic/eco-drr/pamph03.pdf|title=生態系を活用した防災・減災に関する考え方 参考事例 |publisher=[[環境省]] |accessdate=2019-10-02}}</ref>。
防火林として、西日本では[[イヌマキ|マキ]]、東日本では[[シラカシ]]や[[イチイ]]を家の表側に植える例も多い<ref name="Mori">[[森隆男]](編)『住の民俗事典』 柊風舎 2019年 ISBN 978-4-86498-061-6 pp.291-297.</ref>。また、河川の近い家や水害の多い地域では、防水用として[[ハンノキ]]や、根を張る[[竹]]を植えて土壌の流出を防いでいる<ref name="Mori"/>。
 
[[防災]]以外にも、[[ウメ]]や[[カキノキ]]のように食用として利用できる樹木を植え、その昔木材流通が盛んでなかった時代には、我が家の将来の建て替えの時のための建築材料として植樹していた等の諸説もある<ref name="Mori"/>。これらの実用的な用途だけではなく、[[魔除け]]として[[ナンテン]]や[[ヒイラギ]]を植える例もあり<ref name="Mori"/>、ある種の風格をもつ[[ステータスシンボル|ステイタスシンボル]]にもなる。
 
屋敷林に使われる樹種は用途に応じて選定されるが、政策によって指定される場合もあった<ref name="Mori"/>。例えば、[[寛永]]2年(1625年)に[[松平光長]]が[[高田藩]]領内に布達した文書には、[[ツバキ]]と[[ササ]]を南側に植え、屋敷の周囲には[[スギ]]を植えること、[[エノキ]]・[[モミ]]・[[クヌギ]]は植えてはいけない、とされていた。
 
[[仙台平野]]の「'''居久根'''(いぐね)」<ref name="pamph03" />、[[砺波平野]]の「'''垣入'''(かいにょ)」<ref name="pamph03" />、[[出雲平野]]の「'''築地松'''(ついじまつ)」<ref name="pamph03" />、[[三重県]]、[[福岡県]]の「'''四壁'''(しへき)」<ref>筒井辿夫「しへきばやし 四壁林」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p346 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行</ref>、大井川扇状地<ref>[http://1073shoso.jp/www/sankyo/detail.jsp?id=18765] 9全国各地の屋敷林</ref><ref>[http://www.tsuijimatsu.com/tsuiji_matsu/other.html] 他の地方の屋敷森との違い|築地松景観保全対策推進協議会</ref>などが有名である。
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=== 居久根 ===
[[岩手県]]、[[宮城県]]、[[福島県]]、[[栃木県]]の農村部における屋敷林は「居久根(いぐね)」と言われている<ref name="仙台市史6-568">『仙台市史』特別編6(民俗)568頁。</ref>。「くね」は地境を意味し、居久根は敷地の内外を分けるものである<ref name="仙台市史6-568"/>。それと同時に、多くの居久根は屋敷の北側と西側に存在し、防風林や防雪林の役割を果たしている<ref name="仙台市史6-568"/>。居久根として用いられる樹種は[[スギ]]や[[マツ]]、[[ヒノキ]]、[[ケヤキ]]であり、それらの枯れ枝や落ち葉は燃料や堆肥として用いられた<ref name="仙台市史6-568"/>。
 
=== 築地松 ===
[[島根県]]東部の出雲平野を中心に見られる様式で、上端を一定の高さで水平に刈り揃える「陰手刈り(のうてごり)」と呼ばれる剪定方法が特徴であり、その独特な形状から「緑の[[屏風]]」とも評される<ref name="Mori"/>。冬の季節風や砂粒、雨や雪、夏の西日を防ぐ目的があるが、本来の機能は水防のために築かれた家の周囲を囲む[[土塁|土居]]を強化するためにあった<ref name="Mori"/>。そのため、植えられた樹木は強い根を張る[[クロマツ]]が主体となっている。明治時代以前には家の全周を囲っていたが、水害の減少と建築様式の変化から北と西側だけをカバーする鉤型の形状へと変化した。近年は、サルミサッシなどの普及によって住宅の耐候性が向上したことから屋敷林の必要性が低下し、[[平成]]11年(1999年)には3380戸あった築地松も、平成24年(2012年)には1516戸にまで減少している<ref name="Mori"/>。
 
== 脚注 ==
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[[Category:造園]]
[[Category:日本の都市計画]]
[[Category:日本の防災]]