「観念的競合」の版間の差分

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{{Law}}
{{日本の刑法}}
'''観念的競合'''(かんねんてききょうごう、{{lang-de|[[w:de:Tateinheit|Tateinheit]]}}または Idealkondurrenzrecht)とは、[[刑法]]の[[罪数]]論上の概念、用語の一つであり、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合([[b:刑法第54条|刑法54条]]1項前段)をいう。「'''一所為数法'''(いちしょいすうほう)」ともいう。観念的競合の処罰については、その最も重い刑により処断するとされる(同項。吸収主義)。
 
複数の行為である場合は[[併合罪]]となり刑の加重がされる([[b:刑法第25条|刑法45条]]~[[b:刑法第48条|48条]])のと比べ、[[処断刑]]が軽くなる。
行為が1個か複数かによる区別は、[[ローマ法]]にまで遡ることができるとされる。その後のヨーロッパ法学の中では、「個々の犯罪には個々の刑罰を科す」という厳格な併科主義が一般的にとられていたが、次第に、それが過酷すぎることから、1個の行為で行われた複数の犯罪については併科せずに重い刑が軽い刑を吸収するという考え方が生じ、それが[[刑法典 (ドイツ)|ドイツ刑法]]に引き継がれた<ref>後掲参考文献『罪数論の研究』1頁以下</ref>。
 
日本で、1880年(明治13年に公布された[[s:刑法 (明治13年太政官布告第36号)|旧刑法]]では、「数罪倶発」の場合には「一ノ重キニ従テ処断ス」と規定されており([[s:刑法 (明治13年太政官布告第36号)#a100|100条]]1項)、吸収主義がとられた。これは[[フランス]]刑法の影響だけでなく[[律令|律]]の伝統によるものであるとされる。当時の学説では、「想像的数罪倶発」(観念的競合)の場合は一罪にすぎず、実質は数罪倶発ではないとするものがあったが、大審院は1904年、罪数は法益侵害の個数によるとして、観念的競合は数罪であり、旧刑法100条が適用されるとした(大審院明治37年1月21日判決・判決録10輯51頁)<ref>[[小野清一郎]]『犯罪構成要件の理論』有斐閣・昭和28年、364頁以下</ref>。
 
[[小野清一郎]]はドイツ法学者の[[フランツ・フォン・リスト]]、{{仮リンク|エバーハルト・シュミット|de|Eberhard Schmidt (Rechtswissenschaftler) |preserve=1}}、[[マックス・エルンスト・マイヤー]]の論を引用し「観念的競合(想像的数罪)」説を次のとおり説明した。
{{quote|観念的競合は一罪であるか、数罪であるか、学説上争の存するところであって、有力なる学説はこれをもって「外見上の犯罪競合」scheinbare Verbrechenskonkurrenz にすぎずとし{{sfn|Liszt-Schmidt|1932}}、また「真正なる法条競合」echte Gesetzeskonkurrenz なりとなすのである{{sfn|Mayer|1923}}。…この意味において私はいわゆる観念的競合は真正なる犯罪競合であり、ただその処罰において実在的競合(併合罪)の例によらざるをものであると解する|小野誠一郎『刑法講義』{{sfn|小野清一郎|1932}}}}
 
日本の現行刑法(明治40年法律第45年)は、ドイツ刑法の影響を受け、併合罪については吸収主義から加重主義に改める一方、観念的競合については、ドイツ刑法52条を継受して吸収主義をとった。そのため、一罪(観念的競合)と数罪(併合罪)の区別が重要な意味を持つこととなった。
 
== 参考文献 ==
* {{cite book | title = [https://books.google.co.jp/books?id=sngrAQAAMAAJ Der allgemeine Teil des deutschen Strafrechts] | last =Mayer | first =Max Ernst | author-link = | publisher = C. Winter | location = | year =1923 | oclc = | isbn= | page= | ref = harv }}
* {{cite book | title = [https://books.google.co.jp/books?id=GZcBogEACAAJ Lehrbuch des deutschen Strafrechts] | last = Liszt-Schmidt| first = | author-link = | publisher = Gruyter| location = | year =1932 | oclc = | isbn= | page= | ref = harv }}
* {{Cite book|和書|author=[[小野清一郎]]| translator=| title=[{{NDLDC|1279247/138}} 刑法講義 : 総論]| page=| publisher=[[有斐閣]]| location =| year=1932| isbn=| ref=harv}}
* 只木誠『罪数論の研究』成文堂・平成16年・ISBN 978-4792316464