「持ち時間」の版間の差分

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あらかじめ定めた持ち時間を過ぎると即時間切れとなる設定。制限時間がくると、無情に対局時計の旗が落ちる様子から[[ギロチン]]とも呼ばれる。最も単純な方式で、対局時間もあらかじめ定めた時間よりも延長しないこと、どのような[[対局時計]]でも対応していることから、アマチュアの大会や[[早指し]]、練習対局などで主に採用される。
 
シビアで緊張感がある一方、時間切れ間際での棋譜のレベル低下や盤上の勝負と無関係な時間切れによる決着、終盤時間に追われた対局者による局面の乱雑化(駒や石の位置が正確に分からなくなる)や[[対局時計]]を叩きあう見苦しい状況などが起こりうるため、プロによる公式な大会ではほとんど採用されない。
 
=== 秒読み ===
囲碁や将棋で主に行われる設定。持ち時間を使い終わった後も一定時間内に指し(打ち)続ければ時間切れにはならないという方式で、時計係が秒数をカウントすることから「[[秒読み]]」と呼ばれる。すでに盤上でほぼ勝負がついている場合、次の手にほとんど時間をとる必要はないため、秒読みを採用することで「勝負に勝って試合で負ける」ような事態を避けることができる。
 
指し切りの問題点を解消できる代わりに、採用するには時計係や秒読みに対応したデジタル式の[[対局時計]]が必要となる。加えて、対局終了の時間が定まらず、延々と続く可能性があるため、アマチュアの大会では進行の遅延を招くとして敬遠されがちである(決勝や準決勝など上位対局にのみ採用されるケースもある)
加えて、対局終了の時間が定まらず、延々と続く可能性があるため、アマチュアの大会では進行の遅延を招くとして敬遠されがちである(決勝や準決勝など上位対局にのみ採用されるケースもある)。
 
=== フィッシャーモード ===
あらかじめ定められた持ち時間に加え、一手ごとに決められた時間が加算されていく設定。加算時間より早く次の手を指すと、残りの加算時間分持ち時間が増える点で秒読みと異なる。考案者である[[ボビー・フィッシャー]]からフィッシャーモード(Fischer mode)(Fischer mode) と呼ばれる。
 
秒読みと同様、指しきり方式の問題点を解消した方式だが、対応したチェスクロックを必要とする。また、設定によっては持ち時間が増え続けるという事態も起こりうるが、チェスは将棋などに比べると一局が短いので、あまり弊害がない。また、公式な競技会で採用されるため、チェスクロックにはフィッシャーモードへの切り替えができる物もある。
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!colspan="2"| 棋戦!!タイトル戦<ref name=":0">日本将棋連盟公式サイトの表記に準ずる。</ref>!!本戦!!予選
|-
|colspan="2" style="background-color:#ffcccc"|'''[[竜王戦]]'''||8時間(2日制、七[[番勝負]])||5時間(挑戦者決定三番勝負、決勝トーナメント)||5時間(ランキング戦)<br />3時間★(残留決定戦)
|-
|rowspan="2" style="background-color:#ffcccc"|'''[[名人戦 (将棋)|名人戦]]'''<br />'''[[順位戦]]'''|| style="background-color:#ffcccc"|2016年度から|| rowspan="2"| 9時間(2日制、七番勝負)|| colspan="2"| 6時間([[順位戦]]A級・B級1組)<br />6時間★(順位戦B級2組以下)
|-
| style="background-color:#ffcccc"|2015年度まで|| colspan="2"| 6時間(順位戦)
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|colspan="2" style="background-color:#ffcccc"|'''[[王将戦]]'''||8時間(2日制、七番勝負)||4時間(挑戦者決定リーグ)||3時間(二次予選、一次予選)
|-
|rowspan="2" style="background-color:#ffcccc"|'''[[棋聖戦 (将棋)|棋聖戦]]'''|| style="background-color:#ffcccc"|2010年度から|| rowspan="2" | 4時間(1日制、五番勝負)|| rowspan="2" | 4時間(決勝トーナメント)||3時間(二次予選)<br />1時間★(一次予選)
|-
| style="background-color:#ffcccc"|2009年度まで||3時間(最終予選、二次予選、一次予選)
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| style="background-color:#ffcccc" colspan="2"|'''[[清麗戦]]'''|| style="border-right:none" | 4時間★|| style="border-left:none" | (1日制、五番勝負)||3時間★||2時間★
|-
| style="background-color:#ffcccc" colspan="2"|'''[[マイナビ女子オープン]]'''|| style="border-right:none" | 3時間★|| style="border-left:none" | (1日制、五番勝負)||3時間★||40分★(トーナメント)<br />30分☆(予備予選)
|-
| style="background-color:#ffcccc" colspan="2"|'''[[女流王座戦]]'''|| style="border-right:none" | 3時間|| style="border-left:none" | (1日制、五番勝負)||3時間(トーナメント)||3時間★(二次予選)<br />40分★(一次予選)<br />15分☆(アマチュア予選)
|-
| style="background-color:#ffcccc" colspan="2"|'''[[女流名人戦 (将棋)|女流名人戦]]'''|| style="border-right:none" | 3時間|| style="border-left:none" | (1日制、五番勝負)|| colspan="2" | 2時間(女流名人リーグ、予選)
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=== 歴史 ===
昭和の初めまでは、持ち時間制は採用されていなかった模様である<ref>『[[近代将棋]]』連載の「名人義雄」によると、[[日本将棋連盟]]設立前の対局である、1921年の[[木村義雄 (棋士)|木村義雄]]四段対[[金子金五郎]]四段(段位は当時)戦では持ち時間は設定されておらず、3日間の長丁場の戦いとなっている。</ref>。
 
かつては非常に長い持ち時間の棋戦も多く、最初のタイトル戦である[[名人戦 (将棋)|名人戦]]では、持ち時間15時間の3日制を採用していた。また、「南禅寺の決戦」として知られる[[坂田三吉]]と[[木村義雄 (棋士)|木村義雄]]の対局では、持ち時間を30時間と設定し、7日間にわたる対局となっている。
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21世紀に入ってから持ち時間が短縮された例がある。2005年に[[新人王戦 (将棋)|新人王戦]]の持ち時間が4時間から3時間になった。2007年には[[朝日オープン将棋選手権]]が[[朝日杯将棋オープン戦]]に移行された際、持ち時間が3時間(1分未満は切り捨て)から40分([[対局時計]]使用)に大きく短縮されている。2009年には棋聖戦の一次予選の持ち時間が1時間(対局時計使用)に短縮されている。
 
第75期順位戦からは、B級2組以下はチェスクロック方式に変更された。近年、将棋は前述のように[[早指し]]化傾向にあるが、第75期順位戦の変更ではそういった意図は無く、昼食、夕食休憩を短縮した関係や棋譜係を務める奨励会員の負担を軽減するためである。
 
=== 指し直し局の持時間 ===
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説明の都合上ある局面になった(すなわち直前の手が打たれた)のが午前11時きっかりとし、次の手番を黒とする。すると、
 
* 一手目:時計は11時00分(50秒)を指しているので黒に消費時間は記録されない。
* 二手目:時計は11時01分(40秒)を指しているので白に消費時間1分が記録される。
* 三手目:時計は11時02分(30秒)を指しているので黒に消費時間1分が記録される。
* 四手目:時計は11時03分(20秒)を指しているので白に消費時間1分が記録される。
* 五手目:時計は11時04分(10秒)を指しているので黒に消費時間1分が記録される。
* 六手目:時計は11時05分(00秒)を指しているので白に消費時間1分が記録される。
 
結果、黒に消費時間2分、白に消費時間3分が記録されることになる。
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!棋戦名!!番勝負!!本戦!!予選
|-
|'''[[棋聖 (囲碁)|棋聖戦]]'''||8時間(2日制)||5時間(リーグ戦)||5時間(最終予選)<br />3時間(予選A・B・C)
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|'''[[名人 (囲碁)|名人戦]]'''||8時間(2日制)||5時間(リーグ戦)||5時間(最終予選)<br />3時間(予選A・B・C)
|-
|'''[[本因坊戦]]'''||8時間(2日制)||5時間(リーグ戦)||5時間(最終予選)<br />3時間(予選A・B・C)
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|'''[[十段 (囲碁)|十段戦]]'''||3時間(1日制)||3時間||3時間
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== チェス ==
[[Fileファイル:Kozlovskaya.jpg|thumb|後手(黒)の右側に置かれた対局時計(1968年)]]
[[ファイル:Chess-clock-dgtxl.JPG|right|thumb|FIDEの認定マークが付いた対局時計]]
チェスでは19世紀中ごろから持ち時間の制限が始まり、時間を公平に測るため[[砂時計]]が使用された。自分の手番が終わると時計を逆さまにして、砂が落ちきったら負けとされていた。
 
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秒読み対局では、相手に特定の応手を強制する着手で考慮する時間をキープする「時間つなぎ」も、しばしば行われる。
ただし、ほんのわずかな局面のずれが勝敗に直結する将棋・チェスでは無意味な時間つなぎが即負けにつながるケースが多く、めったなことでは行えない([[千日手]]になる状態を利用することで、局面に影響させず行うことは可能)。囲碁では比較的時間つなぎのリスクは少ないが、[[コウ|コウ材]]を使ってしまうために不利をもたらす可能性がある。
 
他方で、あえて時間を使い切り、自身を秒読みに追い込むことで集中力を保つことができるという面もあり、各人にあった時間戦略が必要となる。
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== 参考文献 ==
* 井口昭夫『本因坊名勝負物語』[[三一書房]] 1995年
 
== 関連項目 ==
* [[長考]]
* [[早指し]]
* [[封じ手]]
* [[対局時計]]
 
{{チェス}}