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'''白馬非馬'''(はくばひば)は、概念に関する古代[[中国]]の思想。「白馬非馬説」「白馬は馬にあらず」とも呼ばれる。[[兒説]]や[[公孫竜]]らによって唱えられた。
 
=== 兒説 ===
白とは色に名付けられた概念であり、馬とは形に名付けられた概念であるから、色と形という二つの概念が組み合わさってできた白馬と、形という一つの概念からできた馬は別物である、という詭弁の論理である。
 
『公孫竜子』には、白馬を視覚で捉えるとき、「白い」という色彩が、「馬」という形に組み合わされて白馬になるが、もし視覚で捉える色彩を独立させて考えてみると「白馬」とは無意味な言葉である、と書かれている。
 
兒説はこの説によって自分がその時属していた[[稷下の学士]]の他の学者たちを降参させたことで有名である。
 
兒説は、[[韓非子]]にも話が載せられている。「兒説が白馬に乗って関を通る時、馬には通行税がかけられていたため、役人は税を取ろうとした。しかし、兒説は白馬非馬説を唱えて税を免除されようとしたが、結局役人の方が引かず、税を取られてしまった」という話である。
 
=== 公孫竜子説 ===
『公孫竜子』には、白馬を視覚で捉えるとき、「白い」という色彩が、「馬」という形に組み合わされて白馬になるが、もし視覚で捉える色彩を独立させて考えてみると「白馬」とは無意味な言葉である、と書かれている。
 
公孫竜は兒説より時代はやや遅れるが、[[名家 (諸子百家)|名家]]に属して[[平原君]]の食客となった。しかし、その末路は不幸であり、彼の唱える白馬非馬説を、[[道家]]の[[慎到]]が「そんな論理など在っても役に立たない」と否定し、平原君も次第に公孫竜を遠ざけてしまった。
 
=== 記号論理による解釈 ===
論理学者の前原昭二は、〈白馬〉という概念を {{mvar|F}}、〈馬〉という概念を {{mvar|G}} で表すと、〈白馬は馬にあらず〉という言葉は以下の {{math|(1)~(4)}} の 4 通りに解釈できると説明した{{Sfn|前原|1967|pp=18-19}}。
 
{| class="wikitable"
|+ 〈白馬は馬にあらず〉の解釈
! # !! 論理式 !! 日本語による解釈 !! 説明
|-
! {{math|(1)}}
| {{math|∀{{mvar|x}}({{mvar|F}}({{mvar|x}}) → ¬{{mvar|G}}({{mvar|x}}))}} || {{mvar|F}}は必ず{{mvar|G}}ではない || {{mvar|F}}は必ず「{{mvar|G}}ではない」
|-
! {{math|(2)}}
| {{math|¬∀{{mvar|x}}({{mvar|F}}({{mvar|x}}) → {{mvar|G}}({{mvar|x}}))}} || {{mvar|F}}は必ずしも{{mvar|G}}ではない || 「{{mvar|F}}は必ず{{mvar|G}}」ではない
|-
! {{math|(3)}}
| {{math|∀{{mvar|x}}({{mvar|F}}({{mvar|x}}) ⇄ ¬{{mvar|G}}({{mvar|x}}))}} || {{mvar|F}}とは{{mvar|G}}でないということである || {{mvar|F}}とは「{{mvar|G}}でない」ということである
|-
! {{math|(4)}}
| {{math|¬∀{{mvar|x}}({{mvar|F}}({{mvar|x}}) ⇄ {{mvar|G}}({{mvar|x}}))}} || {{mvar|F}}と{{mvar|G}}とは違う概念である || {{mvar|F}}と{{mvar|G}}とは同じ概念ではない
|}
 
そして、〈白馬は馬にあらず〉という言葉の解釈を上記の {{math|(1)~(4)}} の 4 通りに限った場合には、正しい命題として理解するには {{math|(4)}} による解釈しかないと解説した{{Sfn|前原|1967|pp=18-19}}。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
*{{Cite book|和書
*[[陳舜臣]] 『中国の歴史2⃣ 大統一時代 漢王朝の光と影』 ([[平凡社]])
|author=[[陳舜臣]]
|date=1986-04
*[[陳舜臣]] 『|title=中国の歴史2⃣  2 大統一時代  漢王朝の光と影』 ([[平凡社]])
|publisher=[[平凡社]]
|isbn=978-4-582-48722-0
|ref={{Harvid|陳|1986}}
}}
*{{Cite book|和書
|author=前原昭二
|date=1967-10
|title=記号論理入門
|series=日評数学選書
|publisher=[[日本評論社]]
|isbn=978-4-535-60104-8
|ref={{Harvid|前原|1967}}
}}
**{{Cite book|和書
|author=前原昭二
|date=2005-12
|title=記号論理入門
|edition=新装版
|series=日評数学選書
|publisher=日本評論社
|isbn=978-4-535-60144-4
|ref={{Harvid|前原|2005}}
}}
 
== 関連項目 ==
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== 外部リンク ==
*{{kotobank|白馬非馬論|世界大百科事典}}
*{{Kotobank|白馬は馬に非ず|デジタル大辞泉}}
*[{{Wayback|url=http://www006.upp.so-net.ne.jp/china/HUMAN2E.HTML |title=中国的こころ 列伝]|date=20160520201740}} - 兒説の箇所を参照。
 
{{DEFAULTSORT:はくはひは}}
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