「江川卓 (野球)」の版間の差分

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[[第55回全国高等学校野球選手権大会|夏の甲子園]]に再び怪物江川現る、ということで開幕前から全国の高校野球ファンのその投球に期待が高まった。組み合わせ抽選会で作新学院注目の初戦は[[柳川高等学校|柳川商]](福岡)となった。春の甲子園大会以降、江川の実力を知る全国の有力校は江川を攻略しないと全国優勝はないと、作新学院・江川を徹底的にマークしており、柳川商の名将・福田監督(柳川商野球部を23年間率いて9回甲子園に出場)も組み合わせ抽選会後の報道陣のインタビューに対して、「江川江川と騒ぎなさんな。キャッチャーが捕れるやないか。バットに当てられないわけがない。秘策がありますよ」と語っている。
 
[[1973年|同年]]8月9日、1回戦の対柳川商戦(福岡)、江川を見るために全国のファンがテレビに釘付けになり、電力供給不足のリスクから[[関西電力]]が大手会社に[[エスカレーター]]と[[冷房]]のストップを要請する事態となった<ref>[http://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/p-bb-tp3-20110809-817603.html 73年、江川雨中の押し出し/夏の甲子園]([[日刊スポーツ]]、2011年8月9日)</ref>。柳川商は対作新学院・江川向けの奇策として、攻撃面では4番・[[徳永利美]](のち法大→新日鉄)以外の選手全員がバントの構えからヒッティングに出る「プッシュ打法」、いわゆる[[バスター|バスター打法]]を徹底した。江川の速球の球威に負けないよう、バットをふた握りほど短く持ち、しかもバットを握る両手を離して打つようにして必死にくらいつき、観衆がどよめいた。江川はこの打線に対しても5回までに15アウトのうちの10アウトを三振で奪って圧倒したが、6回表、ついに146イニングぶりの1失点を喫した。7回裏に作新学院は同点に追い付いたが、柳川商は作新学院向けに守備面でも奇策を見せた。栃木県予選チーム打率が.204と、およそ県予選優勝校とは思えない作新学院打線を知る柳川商は、9回裏1対1、作新学院1死満塁サヨナラ場面で、なんと中堅手を三塁手と投手の間に守らせる超変則内野手5人(投手、捕手を除く)シフトを敷いた。甲子園史上初めて目にするこの内野守備陣形に大観衆は驚嘆して大きくどよめいた。そこでも作新学院は2番できず者がヒッティングに出たがスクイズをしゴロになった打球は投手右横にいた中堅手のグラブに当たっ三塁手前に飛び、三塁手が本塁封殺。次打者の3番・江川はレフトフライに倒れ、延長戦に突入している。さらに延長12回裏1死満塁で同じく5人内野手シフトで投手ゴロ本塁封殺14回裏1死三塁の場面でも同じく5人内野手シフトで、狙い通り内野ゴロをその中堅手がさばき、打者走者をアウトにして切り抜けるなど、徹底した守りで作新学院に得点を許さず、江川に食い下がった。試合は延長15回の激闘の末、作新学院が2対1でサヨナラ勝ち。江川は6回失点以後も柳川商を圧倒し続け、7回以降零封13三振を奪い、結局この試合を1失点完投、15回の参考記録ながら大会史上2位の23奪三振を記録している<ref group="†">延長戦による記録であるため参考記録扱い。公式記録における1位は[[松井裕樹]]([[桐光学園中学校・高等学校|桐光学園]])の22奪三振。参考記録を含めた1位は[[板東英二]]([[徳島県立徳島商業高等学校|徳島商]])の18回25奪三振。</ref>。また、この試合から38年後、福田監督は「江川君に対して試合前にホラを吹いて申し訳なかった。江川君は最高のピッチャーでした」と語っている<ref>{{Cite web|url=https://www.ninomiyasports.com/archives/78411|title=ノンフィクション・シアター・傑作編|accessdate=2018年9月2日|publisher=二宮清純}}</ref>。【対柳川商戦での6連続三振内訳】全22球:直球20、カーブ2。 ボール4、ストライク18(直球17)。 そのうち空振り10、ファウル6、見送り1。 カーブ空振り1。
 
8月16日、2回戦の相手は銚子商(千葉)、この日は木曜日にも関わらず、テレビのある場所はどこも試合を見ようという黒山の人だかりができ、江川人気の高さを見せつけた。しかし、銚子商の好投手・[[土屋正勝]](のち中日)を相手に、作新学院打線はここでも点が取れず、0対0のまま延長戦に突入。試合途中から降り出した雨はその後、勢いを増し、12回裏の銚子商の攻撃が始まる頃にはバケツをひっくり返したような状況となった。強い雨でポケットに入れたロージンも固まってしまう中、濡れたボールが滑り、制球を乱した江川は12回裏1死満塁のピンチを招くと、カウント2ストライク3ボールから内野手全員をマウンドに集め、「次の球は力いっぱいのストレートを投げたい」と告げた。江川はそのとき、「ふざけるな、ここで負けたら終わりなんだからちゃんとストライクを入れろ」と言われることも覚悟していたというが、ナインから「春も夏もここまで来られたのはお前のおかげなんだから、お前の気の済むように投げればいいじゃないか」と笑顔で言われ、江川は心の靄がとれた。「ああ、このチームにいて本当に良かった」と思ったという<ref name="『豪球列伝』の江川の項参照。">『豪球列伝』の江川の項参照。</ref>。この直後、江川が投じた169球目の渾身のストレートは明らかに高く外れるボールで押し出し。0対1でサヨナラ負けとなった。