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{{See Wiktionary}}
{{Otheruses||仏教用語の覚|悟り}}
{{読み仮名|'''覚'''|さとり}}は、[[日本]]の[[妖怪]]の一つ。[[鳥山石燕]]による[[江戸時代]]の妖怪画集『[[今昔画図続百鬼]]』に記述があるほか、日本全国で人の心を見透かす妖怪として民話が伝えられている。
 
== 古典 ==
[[ファイル:SekienSatori.jpg|right|thumb|200px|[[鳥山石燕]]『[[今昔画図続百鬼]]』より「覚」]]
『今昔画図続百鬼』には以下のように、[[飛騨国|飛騨]]や[[美濃国|美濃]](後の[[岐阜県]])の山奥に、人間の心を見透かす妖怪「覚」が住むと述べられている。
 
{{quotation|
飛騨美濃の深山に{{読み仮名|玃|かく}}あり 山人呼んで覚と名づく
 
色黒く毛長くして よく人の{{読み仮名||こと}}をなし よく人の{{読み仮名||こころ}}を察す あへて人の害をなさず
 
人これを殺さんとすれば、先その{{読み仮名||こころ}}をさとりてにげ去と云<ref name="稲田">{{Harvnb|稲田他編|1992|p=114}}</ref>
}}
 
挿絵にある妖怪画は、江戸時代の[[類書]]『[[和漢三才図会]]』にある[[カク猿|{{読み仮名|&#x7383;|やまこ}}]]をモデルにしたものと見られている<ref name="村上">{{Harvnb|村上|2005|p=155}}</ref>。「&#x7383;」は本来は[[中国]]の伝承上の動物であり<ref name="多田2004">{{Harvnb|多田|2004|p=154}}</ref><ref>{{Cite book|和書|author=[[實吉達郎]]|title=中国妖怪人物事典 |year=1996|publisher=[[講談社]]|isbn=978-4-06-207883-2|pages=53-55}}</ref>、人の心を読むという伝承はないが、『和漢三才図会』では人の心を読むといわれる飛騨・美濃の妖怪「{{読み仮名|黒ん坊|くろんぼう}}」を挙げ「思うに、これは&#x7383;の属だろうか」と述べている<ref>{{Cite book|和書|author=寺島良安|others=[[島田勇雄]]・竹島純夫・樋口元巳訳注|origyear=1712|year=1987|title=[[和漢三才図会]]|publisher=[[平凡社]]|volume=6|series=[[東洋文庫 (平凡社)|東洋文庫]]|isbn=978-4-582-80466-9|pages=142-143}}</ref>。『今昔画図続百鬼』にも、「覚」が人の心を読むという記述があるが、これは「黒ん坊」の記述を引いたものと見られている{{Sfn|村上|2005|p=339}}。
 
「&#x7383;」を「かく」とも読むことから、より簡単な漢字である「覚」が代字として用いられ、この「覚」が訓字で「さとり」と誤読されたことから、「&#x7383;」とは別種の「覚」という妖怪の伝承が生まれた、との解釈もある<ref name="多田2004" /><ref name="多田2000">{{Harvnb|多田|2000|p=154}}</ref>。
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[[山梨県]][[西八代郡]]の[[富士山_(代表的なトピック)|富士山麓]]の「おもいの魔物<ref name="丸山">{{Harvnb|丸山他|p=1955|pp=292-293}}</ref>」や[[相模国|相州]]([[神奈川県]])の「山鬼<ref name="藤沢">{{Harvnb|藤沢|1976|pp=137-141}}</ref>」をはじめ、[[東北地方]]<ref name="丸山" /><ref>{{Cite web|author=渡部豊子|date=2006-04-09|url=http://www.rg-youkai.com/tales/ja/06_yamagata/07_satori.html |title=サトリの化物|publisher=[http://www.rg-youkai.com/ スーちゃんの妖怪通信]|accessdate=2014-4-19}}</ref><ref name="石川">{{Cite journal|和書|author=石川純一郎|date=1960-9|title=檜枝岐昔話集|journal=あしなか||issue=通巻70号|page=48|publisher=山村民俗の会|accessdate=2014-4-13|url=http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/0030198.shtml |id={{NCID|AN00406352}}}}</ref>、[[中部地方]]<ref name="丸山" /><ref name="早川">{{Harvnb|早川|1927|pp=172-173}}</ref>、[[中国地方]]<ref name="丸山" /><ref name="五来">{{Harvnb|五来|1984|pp=32-35}}</ref>、[[九州地方]]など日本各地に<ref name="丸山" />、[[サル]]のような姿の怪物<ref name="南方">{{Harvnb|南方|1926|pp=562-563}}</ref><ref>{{Cite web|author=宗優子|date=2005-09-15|url=http://www7a.biglobe.ne.jp/~youkai-kids/17-satori/yokai17-satori.html |title=No17.覚(さとり)|work=[http://www7a.biglobe.ne.jp/~youkai-kids/index.html 宗優子の妖怪キッズ]|accessdate=2014-4-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120627130517/http://www7a.biglobe.ne.jp/~youkai-kids/17-satori/yokai17-satori.html |archivedate=2012-6-27}}</ref>、または[[山男]]<ref name="早川" /><ref name="南方" />、[[天狗]]<ref name="五来" />、[[タヌキ]]などが人間の心を読む妖怪の[[民話]]が伝承されており、これら一連が「サトリのワッパ」として分類されている<ref name="丸山" />。
 
多くの民話では、山中で人間の近くに現れ、相手の心を読み「お前は恐いと思ったな」などと次々に考えを言い当て、隙を見て取って食おうとするが、木片や焚き木などが偶然跳ねて覚にぶつかると、思わぬことが起きたことに驚き、逃げ去って行ったとされている<ref name="{{r|村上" /><ref name="|丸山" /><ref name="|藤沢" />}}。同様の伝承は[[南北朝時代 (中国)|南北朝時代]]の『[[荊楚歳時記]]』でも紹介されていて、こちらには漢代の『神異経』・『西荒経』に記載がある西方の山奥に住む人間の姿をした一本足の怪物山魈が登場する。この山魈は人の心は読まないものの遭遇すると高熱を発して死に至る妖怪であり春節の時期には人里に下りてくるとして非常に恐れられていたが、杣人が暖を取ろうと燃やしていた伐採した竹が爆ぜるのに驚いて逃げかえっていき、春節に爆竹を鳴らす由来となっている。古典でこうした話を綴った文献としては、妖怪をテーマとした江戸時代の[[狂歌]]本『[[狂歌百物語]]』に「{{読み仮名||}}べきぞと気取りて{{読み仮名||そま}}が火を焚けば さとりは早く当たりにぞ寄る<ref name="多田">{{Harvnb|多田編|2008|p=232}}</ref>」「人の知恵さとり難しと恐れけり ぽんと撥ね火の竹の不思議を<ref name="多田" />」などの狂歌がある。
 
前述のように民話の類型としての名は「サトリのワッパ」だが、「ワッパ」は[[童子]]を指すことから、本来は人の心を読み取る童子の話の意味で「サトリのワッパ」として伝承されていたとの指摘がある<ref name="五来" /><ref name="豊島">{{Harvnb|豊島|2005|pp=260-261}}</ref>。また、童子を[[山の神|山神]]の化身と見なし、「覚」は山神の化身である童子が零落して妖怪化した姿との解釈もある<ref name="稲田" />。
 
== 関連項目 ==
* [[悪魔]]
* [[日本の妖怪一覧]]
 
== 脚注 ==
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* {{Cite book|和書|editor=[[稲田篤信]]・田中直日編|others=[[高田衛]]監修|title=鳥山石燕 画図百鬼夜行|year=1992|publisher=[[国書刊行会]]|isbn=978-4-336-03386-4|ref={{SfnRef|稲田他編|1992}}}}
* {{Cite book|和書|editor=多田克己編|title=妖怪画本 狂歌百物語|year=2008|publisher=国書刊行会|isbn=978-4-336-05055-7|ref={{SfnRef|多田編|2008}}}}
 
== 関連項目 ==
* [[悪魔]]
* [[日本の妖怪一覧]]
 
{{DEFAULTSORT:さとり}}