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'''FACOM 9450'''(ファコムキューヨンゴーマル)は[[1981年]]より[[富士通]]が日本で販売していた企業向け[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]の名称である。[[オフィスコンピュータ|オフコン]]や[[ワークステーション]]に分類されることもある。
 
[[ハードウェア]]はパナファコム(現・(1987年より[[PFU]])が開発・製造を担当し、[[OEM]]で調達された。同社および松下電器産業(現・[[パナソニック]]。以下、松下)からもそれぞれのブランドで販売された。[[ソフトウェア]]は[[オフィススイート|オフィスソフト]]のシリーズである[[EPOCファミリ]]が用意されたほか、9450シリーズ独自の特徴として[[FACOM]] Mシリーズ([[メインフレーム]])やFACOM Kシリーズ(拠点[[サーバ|サーバー]]・ワークステーション)との連携が強化されている。標準[[オペレーティングシステム|OS]]はシリーズ専用に開発された'''APCS'''(Advanced Personal Computer System)。競合機種は[[日本電気]] [[N5200]]、[[日本アイ・ビー・エム|日本IBM]] [[マルチステーション5550]]、[[日立製作所|日立]] パーソナルワークステーション2020/2050、[[内田洋行]] [[USACカマラード]]。
 
シリーズは[[1983年]]に'''FACOM 9450II'''、[[1985年]]に'''FACOM 9450Σ'''と続き、[[1989年]]に[[FMRシリーズ]]へ統合された。シリーズ累計で25万台が販売された<ref>「富士通がパソコン、9450シリーズをFMRに統合。」『日本経済新聞』 1988年10月26日朝刊、11面。</ref>。
 
== 歴史 ==
[[1980年]]3月、富士通が[[HOYA|保谷硝子(現・[[HOYA]]の店舗端末に用いる特注パソコン「HIT-80」を開発した発表<ref>「保谷硝子と富士通、メガネ小売店と工場をオンラインで結ぶ端末装置「HIT-80」を開発。」『日経産業新聞』 1980年3月27日、4面。</ref>。同年9月、パナファコムがこれをベースに企業向けの[[16ビット]]パソコン「C-180」を開発・発表した<ref>「パナファコム OEM向け パソコン市場に進出 3500台を受注」『日本情報産業新聞』 1980年9月29日、1面。</ref><ref>{{Cite web|title=APCS基本ソフトウェア E11, E20 F9450PT, HIT-80, V-80|url=http://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?no=102090041152&c=&y1=&y2=&id=&pref=&city=&org=&word=&p=470|website=産業技術史資料データベース|accessdate=2021-04-30|publisher=[[国立科学博物館]]}}</ref>。当初、この製品は全てが富士通と松下にOEMで供給された。これには、富士通と松下はそれぞれの販売網を築いていたことと、それまで[[ミニコンピュータ|ミニコン]]専業メーカーであったパナファコムは販売力が不足していた背景があった<ref>「企業研究:ミニコン・メーカーからパソコン・メーカーへと変貌するパナファコム」『コンピュートピア』 1983年7月号、pp.116-119。</ref>。1982年にはパナファコムでも自社ブランドで「C-180ファミリ」として発売された。
 
[[1981年]]、富士通はC-180に[[FACOM]] Mシリーズ用の通信端末機能を加えて、FACOM 9450を発売<ref>「富士通 端末機兼用パソコン 汎用電算機と接続も。」『日経産業新聞』 1981年10月15日、4面。</ref>。9450という型番は同社のメインフレーム用ディスプレイ端末(FACOM9410FACOM 9410など)から継承しており、端末機事業部が開発を担当した<ref>「FACOM9450シリーズ」 p.327</ref>。主に銀行や販売チェーン店、製造業の研究部門といった大企業の通信端末として導入されたものの<ref>「FACOM9450シリーズ」 p.334</ref>、まだ当時の日本市場ではビジネス向けパソコン自体が時期尚早であったため、特段注目されることはなかった。個人向けパソコン([[FM-8]])を販売する同社半導体部門との軋轢も重なり、1982年末には販売中止の危機に陥った<ref>『日経パソコン』1983年10月24日号、pp.122-125。</ref>。
 
[[1983年]]3月、日本IBMから類似のコンセプトを持ったパソコン「[[マルチステーション5550]]」が発売されると、本シリーズを含むオフィスパソコンのジャンルにユーザーの関心が集まった<ref>「勝負ついた?ビジネスパソコン商戦(上) 日本IBM・富士通・日電リード。」『日経産業新聞』 1985年6月23日、4面。</ref>。富士通は同年4月にCPUやグラフィック機能を強化したFACOM 9450IIを発売。注文が急激に増え、当初は月3000台生産されていたところを月5000台に増産。パナファコムの工場だけでは生産能力に限界が見えてきたため、一部の部品は富士通でも製造されるようになった<ref>「富士通、多機能パソコン「9450-2」の内製化を検討―需要増に対応」『日経産業新聞』 1983年12月24日、4面。</ref>。翌年末にはパナファコムの大和工場が拡張され、月8000台の生産が可能になった<ref>「パナファコム、大和工場を拡張―60年度、生産能力を倍増」『日経産業新聞』 1984年10月20日、4面。</ref>。
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1981年10月発表。パナファコムのC-180、松下のC-18が同等機。
 
[[松下電子工業]]が開発した16ビット[[CPU]] [[MN1610|MN1610A]] (4MHz、[[クロック|2相クロック]])を2個搭載。うち1個はプリンタや画面の入出力制御を専門に行うサブCPUとして機能する。メインメモリは124KB([[パリティビット|パリティ]]付き)。テキスト表示は80桁x24×24行。後発のD/Eモデルのみ[[ビットマップ画像]]を表示可能で、[[画面解像度]]は720x480720×480ドット。モノクロ[[ブラウン管|CRT]]および[[フロッピーディスク|FDD]]一体型。外付けで[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]、[[プリンター|プリンタ]]、増設用ディスク装置(8インチFDDや[[ハードディスクドライブ|HDD]]<ref group="補足">本シリーズにおいてはハードディスクに対して「マイクロディスク」という名称が使われていた。</ref>)を接続可能。電源の切断はソフトウェアからも行える。
 
ソフトウェアには整数演算のみで処理速度を優先した事務処理用[[BASIC]]「BASIC-B」、科学技術計算用単精度BASIC「BASIC-S」(変数をFACOM形式16ビット浮動小数点数として保持)、[[表計算ソフト]]「EPOCALC」および[[端末エミュレータ]]「F9526エミュレータ」などが用意された。後にハードウェアでは日本語処理に対応したモデルやグラフィックに特化したモデル、ソフトウェアではEPOCALCの日本語対応版「EPOCALC-J」、日本語[[ワープロソフト]]「JEDITOR」(後に「EPOWORD」と改称)、グラフ作成ソフト「EPOGRRAPH」、科学技術計算用倍精度BASIC「BASIC-D」(変数をFACOM形式32ビット浮動小数点数として保持)、[[COBOL]][[コンパイラ]]などが追加された。OSはAPCSIIで、フォアグラウンドとバックグラウンドの2つの領域で異なるプログラムを同時に実行する[[マルチプロセッシング|マルチジョブ]]機能、1つのジョブ内で最大256個のプログラムをタイムスライスで並行処理する[[マルチタスク]]機能が特徴である。
30行目:
1983年4月発表。パナファコムのC-280、松下のオペレート7000が同等機。また、[[ハネウェル|日本ハネウェル]]にもOEM供給され、「DPSジュニア」として販売された<ref>「日本ハネウェル、パソコンに参入―パナファコムから機器をOEM調達し7月発売。」『日本経済新聞』 1983年7月1日朝刊、10面。</ref>。
 
CPUはMN1613 x 2。メインメモリは384KB(最大512KB)。画面は640x480640×480ドット、モノクロまたは7色カラー表示。JIS第1水準[[漢字ROM]]を標準実装。本体はCRT一体型から[[デスクトップパソコン|デスクトップ]]型になり、本体、キーボード、CRTの組み合わせや配置方法の自由度が増した。CPUの改良により[[浮動小数点]]演算をサポート。また、通信回線経由で遠隔から電源を投入・切断できる。
 
標準OSはAPCSIII。オプションの[[Intel 8086|8086]]カードで[[CP/M-86]]をサポートしている。
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1985年5月発表。FACOM 9450IIの上位機種にあたる。パナファコムのC-380、松下のオペレート8000が同等機。
 
CPUはMN1617。画面制御用に[[MC68000|68000]]、[[CRTC (LSI)|CRTC]]としてHD63484を搭載。メインメモリは1MB。画面解像度は960x720960×720ドット、24ドットフォント表示。VRAMはカラー表示で1.5MB、モノクロ表示で1MBで、この他にグラフィックパターンなどを格納する512KBの[[デュアルポートRAM]]をもつ。漢字ROMとデュアルポートRAM、VRAM、CRTCは5MB/sのグラフィック専用バスで接続されており、CRTCや[[ASIC]]でVRAMに画面毎の表示データを書き出し、別のASICでVRAM中の複数の画面を合成して出力している。筐体は大きくなり、デスクサイド型になった。後に[[ファクトリーオートメーション|FA]]向けモデルや40MB HD内蔵モデルを追加。
 
ソフトウェア面では通信端末としてのオンライン連携機能の強化、画像処理系機能・周辺機器の充実化。EPOC-Jファミリをマルチウインドウシステムの上で動作するようにした「EPOC-JVファミリ」をサポート。EPOCALC-JVのワークシートなどを最大10画面まで表示できる。標準OSはAPCSIV。オプションの[[Intel 80286|80286]]カードでMS-DOSをサポート。MS-DOSはAPCS配下のジョブの一つとして動作し、APCSのアプリケーションと同時に実行することができる。MS-DOS対応ソフトに[[F-BASIC|F-BASIC86HG]]や[[DBASE|dBASEIII]]などが存在した。
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1987年5月発表。FACOM 9450Λ互換のエントリーモデル。パナファコムのC-250EX、松下のオペレート6000が同等機。
 
基本性能は9450Λと同等で、薄型の[[プラズマディスプレイ]]を採用し、本体をΛの1/3分の1まで小型化した。[[バーコード|バーコードリーダ]]インターフェイスを標準で搭載し、オプションのバーコードリーダをキーボードやテンキーに接続して使用可能。
 
=== FACOM 9450LTmkII ===
1988年9月発表。FACOM 9450αmkIIの[[ラップトップパソコン|ラップトップ]]モデル。PFUのC-250LT、松下のオペレート6000(C-6000LE/LF)が同等機。
 
RAM 1MB(最大1.5MB)。640x480640×480ドット4階調の12インチ相当プラズマディスプレイを搭載。JIS第1・第2水準漢字ROM、3.5インチFDD、20/40MB HDDを内蔵。AC電源必須。
 
== 機種一覧 ==
79行目:
|F9451PC1
|124KB
|5インチ 320KB x× 2
| -
|[[ANK]]文字
86行目:
|F9451A1
|128KB
|5インチ 640KB x× 2
| -
|ANK文字
93行目:
|F9451B1
|128KB
|5インチ 640KB x× 2
| -
|ANK文字、JIS第1水準漢字
99行目:
|F9451C1
|128KB
|5インチ 640KB x× 1
|5MB
|ANK文字、JIS第1水準漢字
105行目:
|F9451D1
|128KB
|5インチ 640KB x× 2
| -
|720x480720×480ドットビットマップ
| rowspan="2" |1982年9月
|-
|F9451E1
|128KB
|5インチ 640KB x× 1
|5MB
|720x480720×480ドットビットマップ
|}
 
126行目:
|F9451SS2
|256KB
|5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451SS3
|384KB
|5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451SD2
|256KB
|5インチ 1MB x× 1
|10MB
|-
|F9451SD3
|384KB
|5インチ 1MB x× 1
|10MB
|-
|F9451LL2
|256KB
|8インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451LL3
|384KB
|8インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451LD2
|256KB
|8インチ 1MB x× 1
|10MB
|-
|F9451LD3
|384KB
|8インチ 1MB x× 1
|10MB
|-
|F9451SS32
|384KB
|5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451SD32
|384KB
|5インチ 1MB x× 1
|10MB
|-
|F9451SD33
|384KB
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9451LL32
|384KB
|8インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451LD32
|384KB
|8インチ 1MB x× 1
|10MB
|-
|F9451LD33
|384KB
|8インチ 1MB x× 1
|20MB
|}
204行目:
|-
|F9452SS10
|5インチ 1MB x× 2
| -
|モノクロ
210行目:
|-
|F9453SS10
|5インチ 1MB x× 2
| -
|カラー
216行目:
|-
|F9452SD10
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|モノクロ
222行目:
|-
|F9453SD10
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|カラー
228行目:
|-
|F9452SD11
|5インチ 1MB x× 1
|40MB
|モノクロ
234行目:
|-
|F9453SD11
|5インチ 1MB x× 1
|40MB
|カラー
240行目:
|-
|F9453SD15
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|カラー
246行目:
|-
|F9452LD10
|8インチ 1MB x× 1
|20MB
|モノクロ
252行目:
|-
|F9453LD10
|8インチ 1MB x× 1
|20MB
|カラー
258行目:
|-
|F9452LD11
|8インチ 1MB x× 1
|40MB
|モノクロ
264行目:
|-
|F9453LD11
|8インチ 1MB x× 1
|40MB
|カラー
277行目:
|-
|F9451SS50
|5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451SD50
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9451LL50
|8インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451LD50
|8インチ 1MB x× 1
|20MB
|}
300行目:
|-
|F9452SS12A
|5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9452SD12A
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9452SD13A
|5インチ 1MB x× 1
|40MB
|-
|F9452LD12A
|8インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9452LD13A
|8インチ 1MB x× 1
|40MB
|-
|F9452SD15
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|}
331行目:
|-
|F9451SS12
|5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451SD12
|5インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9451SD13
|5インチ 1MB x× 1
|40MB
|-
|F9451LL12
|8インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9451LD12
|8インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9451LD13
|8インチ 1MB x× 1
|40MB
|}
362行目:
|-
|F9450CC52A
|3.5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9450CC62
|3.5インチ 1MB x× 2
| -
|-
|F9450CD52A
|3.5インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9450CD62
|3.5インチ 1MB x× 1
|20MB
|}
385行目:
|-
|F9450LT12
|3.5インチ 1MB x× 1
|20MB
|-
|F9450LT13
|3.5インチ 1MB x× 1
|40MB
|}
405行目:
* 「出そろった多機能、複合パソコン」『日経コンピュータ』 1983年5月30日号、日経マグロウヒル、pp.49-65。
* 「FACOM9450-II パーソナルコンピュータ」『FUJITSU』 Vol.35 No.1、富士通、1984年、pp.77-87。
* 「NEレポート:グラフィック機能を強化した960x720960×720画素のビットマップ・ディスプレイ付き16ビット・パソコン」『日経エレクトロニクス』 1985年6月17日号、日経マグロウヒル、pp.145-147。
* 「ハード最前線:富士通FACOM9450Σ EPOCシリーズを統合化」『日経パソコン』 1985年9月16日号、日経マグロウヒル、pp.105-110。
* 「新しくなったFACOM9450シリーズ紹介」『富士通ジャーナル』 Vol.12 No.4、富士通、1986年、pp.44-71。