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光吸収層の材料、および素子の形態などにより、多くの種類に分類される。それぞれ異なる特徴を持ち、用途に応じて使い分けられている。
[[シリコン]]を用いる太陽電池は、<u>a.材料の性質の観点</u>からは、大きく結晶シリコンと[[アモルファスシリコン]]に分類することができる。またその<u>b.形態の観点</u>から、薄膜型や多接合型などを分別することができる。その形式や性能は非常に多様であり、近年は複数の型を複合させたものも実用化されている。このため、ここに挙げた分類法も絶対のものではないことを付記しておく。太陽電池に用いられるシリコンの純度、格子欠陥は集積回路用に比べて基準がゆるく、これまでは集積回路用のシリコンが用いられてきたが、太陽電池の生産量が増加するに従い、[[ソーラーグレードシリコン|ソーラーグレードのシリコン材料]]の供給が望まれてきた。シリコンの高純度化には従来、水素とシリコンを反応させて蒸留して純度を高める化学的な手法が使用されていたが、近年は冶金的な手法により、真空中で電子ビームを照射する事によってシリコン中の不純物の気化精製、凝固精製を行い不純物を除去する事により、純度を高めるプロセスも開発されている<ref>[http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/publications/leaflet/970602/289.html 太陽電池用シリコン素材の製造プロセス] (生研リーフレット No.289)</ref>。
''結晶シリコン''の禁制帯幅は 1.12 [[電子ボルト|eV]] であり、太陽電池に用いた場合、近紫外域から 1.2 [[マイクロメートル|μm]] 程度までの[[光]]を吸収して発電できる。間接遷移型の半導体であるため光吸収係数が低く、実用的な吸収量を得るには最低200µm程度のシリコン層が必要とされてきた。しかし表面テクスチャなどを用いた光閉じ込め技術が発達してきており、近年は結晶シリコンであってもシリコン層が数 μm~50 μmなどと非常に薄く、薄膜太陽電池に分類できるものも開発されている。c-Siなどと略記される。
:高純度[[シリコン]]単結晶ウエハを半導体基板として利用するもので、最も古くから使われている。変換効率は高いが高純度シリコンの利用量が多く、生産に必要なエネルギーやコストが高くなる。そのため近年は下記の多結晶シリコンや薄膜シリコン太陽電池に移行が進んでいる。
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:結晶の粒径が数mm程度の多結晶シリコンを利用した太陽電池。他のシリコン半導体素子の製造過程で生じた端材やオフグレード品のシリコン原料を利用して製造できる。単結晶シリコンに比べると面積あたりの出力(変換効率)は落ちるが、生産に必要なエネルギーは少なく、エネルギー収支やEPT、GEG排出量の面では単結晶シリコンより優れる。コストと性能のバランスの良さから、現在の主流となっている。近年はウエハを薄型化するコスト削減技術の競争が進んでおり、2004年の300µm厚から、2010年には150µm厚に半減すると予想されている<ref name="SolarGeneration2007p43">[http://www.epia.org/fileadmin/EPIA_docs/publications/epia/EPIA_SG_IV_final.pdf EPIA, Solar Generation IV - 2007], P.43 {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20080511201154/http://www.epia.org/fileadmin/EPIA_docs/publications/epia/EPIA_SG_IV_final.pdf|date=2008年5月11日}}</ref>。また、ガラス上に非常に薄い多結晶シリコン太陽電池を形成する、CSG(またはSOG)技術の普及も有望視されている<ref name="SolarGeneration2007p17">[http://www.epia.org/fileadmin/EPIA_docs/publications/epia/EPIA_SG_IV_final.pdf EPIA, Solar Generation IV - 2007], P.17 {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20080511201154/http://www.epia.org/fileadmin/EPIA_docs/publications/epia/EPIA_SG_IV_final.pdf|date=2008年5月11日}}</ref>。[[化学気相成長]]により成膜するため生産過程でSiH<sub>4</sub>、NH<sub>3</sub>、H<sub>2</sub>などのガスを使用する。
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:微細な結晶で構成された薄膜をCVD法などにて製膜するものである。多結晶型の1種と見なせるが、製膜条件によっては[[アモルファス半導体|アモルファス]]的な性質も併せ持つ。μc-Si などと略記される。比較的新しい技術で、インゴットを切断する手間が省け、資源の使用量も削減できるほか、製法によっては200℃程度の低温での製膜が可能で基板を選ばない、などの特長がある。今後、広範囲な応用が期待されている<ref>参照:[http://www.mhi.co.jp/tech/pdf/421/421004.pdf 開発例1]・[http://www.sharp.co.jp/corporate/rd/28/pdf/93_07.pdf 開発例2]</ref>。[[化学気相成長]]により成膜するため生産過程でSiH<sub>4</sub>、PH<sub>3</sub>、B<sub>2</sub>H<sub>6</sub>,GeH<sub>4</sub>、H<sub>2</sub>などの気体を使用する。
:[[シラン (化合物)|シランガス]]から[[化学気相成長]] (CVD) させてできる[[アモルファスシリコン]]を利用した太陽電池で、a-Si などと略記される。形態的には薄膜シリコン太陽電池にも分類できる。アモルファスシリコンは、タウツギャップと呼ばれる通常 1.75~1.8 eV 程度の[[エネルギーギャップ]]と、それより小さな裾準位を介したエネルギーギャップを持つ。結晶シリコンに比べて[[エネルギーギャップ]]が大きいため、高温時も出力が落ちにくい特性を持つ。太陽電池にそのまま用いた場合は主に 700 nm 以下の短波長の光が利用され、見た目には赤っぽく見える。結晶構造の乱れにより、光学遷移に[[フォノン]]の介在を必要とせず、光吸収係数が高い。このため 0.5 μm 程度の厚さでも実用になり、使用するシリコン原料が少なく、エネルギーやコスト的にも有利である。極端な低照度下での効率が高いことや、蛍光灯の短波長光に感度があることから、主に電卓など室内用途に使われてきた。太陽光で劣化しやすいのが欠点だったが、技術の進歩により長寿命化され([[太陽電池#アモルファスシリコンの光劣化|アモルファスシリコンの光劣化]]参照)、近年は屋外用にも市販されている。エネルギー変換効率が10%以下と低い(設置面積が大きくなる)のも欠点だったが、多結晶シリコン等と積層した多接合型とすることで高性能化されている。また、タウツギャップの大きさはドーピングによって1~2eV程度の範囲で可変であり、これを利用してアモルファス層のみで構成された[[太陽電池#多接合型太陽電池|多接合型太陽電池]]も実用化されている。近年は下記の薄膜太陽電池の一種として論じられることも多い。[[化学気相成長]]により成膜するため生産過程でSiH<sub>4</sub>、PH<sub>3</sub>、B<sub>2</sub>H<sub>6</sub>、GeH<sub>4</sub>、H<sub>2</sub>などの気体を使用する。また、アモルファスシリコン太陽電池の開発過程で培われた大面積ガラス基板上での半導体製膜技術はTFT液晶ディスプレイパネルの生産技術にも役立った。
;薄膜シリコン型
;ハイブリッド型(HIT型)
;多接合型(タンデム型)
;球状シリコン型
;電界効果型
▲;2.1 InGaAs太陽電池
:[[シャープ]]が開発した。[[ヒ化インジウムガリウム|InGaAs]]([[インジウム]][[ガリウム]][[ヒ素]])を用い、3層の結晶構造がほぼ一致するように原材料の元素を掛け合わせ、さらに層の間に緩衝材を入れて、層のひずみを解消した。[[2009年]]10月現在、世界最高の変換効率(35.8%)である。毒性のあるヒ素を使い、コストが高いので、用途は宇宙用に限られる<ref>[http://www.sharp.co.jp/corporate/news/091022-a.html 太陽電池セルで世界最高変換効率35.8%を達成 ニュースリリース(2009年10月22日)]</ref>。
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:単結晶の[[ヒ化ガリウム|GaAs]]を用いるもので、禁制帯幅 1.4 eV で太陽光のスペクトルに良くマッチし、単接合セルでは最も高い変換効率を出せる(2005年末の世界記録は25.1%;Kopinら)。宇宙用など、特に高い変換効率が必要な用途に用いられている。
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:新型の薄膜多結晶太陽電池。光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、[[銅|Cu]]、[[インジウム|In]]、[[ガリウム|Ga]]、[[アルミニウム|Al]]、[[セレン|Se]]、[[硫黄|S]]などから成る[[黄銅鉱|カルコパイライト]]系と呼ばれるI-III-VI族化合物を用いる。代表的なものはCu(In,Ga)Se<sub>2</sub> やCu(In,Ga)(Se,S)<sub>2</sub>, CuInS<sub>2</sub> などで、それぞれ[[セレン化銅インジウムガリウム|CIGS]], CIGSS, CIS などと略称される。製造法や材料のバリエーションが豊富で、低コスト品から高性能品まで対応できるのが特長。また、多結晶であるため、大面積化や量産化に向く。[[:wikt:フレキシブル|フレキシブル]]なものや[[:wikt:カスタマイズ|カスタマイズ]]品も作りやすい。シリコン太陽電池が苦手とする分野から実用化が始まっているほか、禁制帯幅が材料次第で自由に変えられることから将来の多接合型太陽電池への応用も期待されている。日本でも量産化が始まっている<ref>[http://www.honda.co.jp/news/2007/c070612.html 例1][http://www.solar-frontier.com/jp/family/lineup/module/index.html 例2]</ref>
:CIGS太陽電池はCu(In、Ga)Se<sub>2</sub>という化合物からなる太陽電池である。携帯電話で搭載できる程度に面積が小さくて軽くとも、大量の電力を生み出す高効率の太陽電池として注目され、利点として次が挙げられる<ref>http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol07_07/p14.html</ref>。
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:特に1.に関しては、2010年に[[産業技術総合研究所]]が開発したCIGS薄膜型太陽電池は19.4%の光電変換効率を実現したという、キャリアがある<ref>http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2008/pr20080716/pr20080716.html</ref>。この技術の応用により、[[セラミックス]]、[[金属箔]]、[[ポリマー]]など様々な[[フレキシブル基板]]を用いた高性能な太陽電池の作製に成功した<ref>http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol07_07/p14.html</ref>。
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:[[めっき]]プロセスを用いた[[:en:CZTS|CZTS]]([[銅|copper]] [[亜鉛|zinc]] [[スズ|tin]] [[硫化物|sulfide]])薄膜は近年開発が始まった材料系。上記のCIS系に形態が似るが、利用する材料がより豊富かつ安価なのが特長。日本の[[長岡工業高等専門学校]]などで研究が行われている<ref>[http://www.nagaoka-ct.ac.jp/kigyou/chiiki/4641.html 長岡高専]</ref>。[[2012年]]9月[[ソーラーフロンティア]]社が[[IBM]]コーポレーション、[[東京応化工業]]、{{仮リンク|DelSolar|en|DelSolar}}社との共同研究において11.1%のエネルギー変換効率を達成した<ref>[http://www.kankyo-business.jp/news/003179.php ソーラーフロンティア、CZTS太陽電池の変換効率で世界記録、IBMなどと共同研究]</ref>。
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:[[テルル化カドミウム|テルル化カドミウム(cadmium telluride, CdTe)]]薄膜を用いた太陽電池で、2枚のガラスに太陽電池を挟み込んだ形態のモジュールが代表的である。毒物である[[カドミウム]]を用いるが、少量でしかも安定した化合物がモジュールに閉じこめられているため、実は環境負荷の低い太陽電池とされている<ref>{{cite web|url=http://www.nrel.gov/pv/cdte/citizen.html|title=Cadmium Use in Photovoltaics - Concerned Citizen|publisher=[[国立再生可能エネルギー研究所|NREL]]|accessdate=2007-06-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110315001011/http://www.nrel.gov/pv/cdte/citizen.html|archivedate=2011-03-15}}</ref>。日本では販売されていないが、性能が良くかつ安価であるため、[[米国]]や[[欧州]]で実用化されている<ref>[[:en:Cadmium telluride photovoltaics]]参照</ref><ref>例:{{cite web|url=http://www.juwi.de/international/information/press/PR_solarpowerplant_RoteJahne.pdf|title=PR_solarpowerplant_RoteJahne.pdf|publisher=www.juwi.de|accessdate=2007-06-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070929122619/http://www.juwi.de/international/information/press/PR_solarpowerplant_RoteJahne.pdf|archivedate=2007-09-29}}</ref>。
;その他
===有機系===
上記のシリコンや無機化合物材料を用いた太陽電池に対し、光吸収層(光電変換層)に有機化合物を用いた太陽電池も開発されている。製法が簡便で生産コストが低くでき、着色性や柔軟性などを持たせられるなどの特長を有する。変換効率や寿命に課題があるが、実用化されれば将来の市場で大きなインパクトが期待されるため、開発が競われている。
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{{See also|色素増感太陽電池}}
:有機色素を用いて光起電力を得る太陽電池。代表的なものはグレッツエル型(または湿式太陽電池)と呼ばれる型式のもので、2枚の透明電極の間に微量の[[ルテニウム]]錯体などの色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ単純な構造を有している。製造が簡単で材料も安価なことから大幅な低コスト化が見込まれ、最終的には現在主流の多結晶シリコン太陽電池の1~数割程度のコストで製造できると言われている。また、軽量で着色も可能などの特長を持つ。現在の課題はルテニウムや[[白金]]のような高価な金属が使用されている事と効率と寿命であり、技術的改良が進められている。電解液の蒸発を如何に防ぐかが重要であり、固体化などの技術開発が進められている。2016年2月の時点で、[[スイス連邦工科大学ローザンヌ校]]のチームが15%のエネルギー変換効率を達成している<ref>[http://sustainablejapan.net/?p=4311 EPFL、色素増感太陽電池で変換効率15%を達成。二段階蒸着法で実現]</ref>。
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{{See also|有機薄膜太陽電池}}
:導電性ポリマーや[[フラーレン]]などを組み合わせた有機薄膜半導体を用いる太陽電池。次世代照明/TVの有機ELの逆反応として研究が進展した。ロールツーロールで印刷による製造が可能になるため、上記の色素増感太陽電池よりもさらに構造や製法が簡便になると言われており、また電解液を用いないために(色素増感と比べると)柔軟性や寿命向上の上でも有利なのが特長である。21世紀に入ってから盛んに開発が行われるようになっている。課題は変換効率と寿命であり、2016年2月現在の記録はドイツのヘリアテック(Heliatek)が開発した多接合型セルによる13.2%が世界記録である<ref>[https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201602087684/ ヘリアテック社が有機太陽電池においてセル効率13.2%の世界新記録を更新]</ref>。
{{See also|ペロブスカイト太陽電池}}
[[ペロブスカイト構造|ペロブスカイト結晶]]を用いた太陽電池。2009年に[[桐蔭横浜大学]]の宮坂力教授の研究室によってハロゲン化鉛系ペロブスカイトを利用した太陽電池が開発された。エネルギー変換効率は2009年当時のCH3NH3PbI3を用いた3.9%から2016年には最大21.0%<ref name="EPFL">[http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/011800201/ 高効率ペロブスカイト型太陽電池の製造コストが大幅低減]</ref>に達するという著しい性能向上を示し、次世代の太陽電池として期待される。
使用する材料がまだ特定されていない太陽電池として、量子効果を用いた太陽電池が検討されている。第三世代型太陽電池とも呼ばれる。例えばp-i-n構造を有する太陽電池のi層中に大きさが数nm~数10nm程度の[[量子ドット]]構造を規則的に並べた構造などが提案されている<ref>R・Turton著、川村 清監訳など『量子ドットへの誘い マイクロエレクトロニクスへの未来へ』1998年、シュプリンガー・フェアラーク東京、p47、ISBN 4-431-70780-8</ref>。この量子ドットの間隔を調整することで、基の半導体(シリコンやGaAsなど)の禁制帯中に複数のミニバンドを形成できる。これにより、単接合の太陽電池であっても、異なる波長の光をそれぞれ効率よく電力に変換することが可能になり、変換効率の理論限界は60%以上に拡大する<ref name="tokoton-p78">産業技術総合研究所太陽光発電研究センター「トコトンやさしい太陽電池の本」、日刊工業新聞社、ISBN 978-4-526-05795-3 P.78</ref>。現在の一般的な半導体プロセスよりもさらに微細な加工プロセスの開発が必要である。2012年6月、東北大学がシリコンを使用した量子ドット型太陽電池で12.6%の変換効率を達成している<ref>[http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0320120604eaaa.html 東北大、量子ドット太陽電池で世界最高効率-12.6%]</ref>。
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