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| image_size = 250px
| caption = {{small|1680年に[[スミルナ]]にて発見されたゼウス像<br/>[[ルーヴル美術館]]所蔵}}
| deity_of = {{small|神々の王
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| cult_center = [[オリンピア (ギリシャ)|オリンピア]]
| abode = [[オリュムポス]]
| weapon = ケラウロス
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| Roman_equivalent = [[ユーピテル]]
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'''ゼウス'''({{lang-grc-short|'''ΖΕΥΣ''', Ζεύς}}, {{ラテン翻字|el|Zeus}})は、[[ギリシア神話]]の[[主神]]たる全知全能の存在{{sfn|Schmitz|2016|p=705}}<ref>[[里中満智子]]・名古屋経済大学助教授西村賀子解説 『マンガギリシア神話1 オリュンポスの神々』 中公文庫、2003年。</ref>{{efn2|
以下は、宗教文学研究者バーバラ・シュミッツの論文からの引用{{sfn|Schmitz|2016|p=705}}。{{quotation|[[:en:Aristeas|アリステアス]]の議論における基礎原理は、[[神格]]〔{{lang|en|the deity}}〕の機能である。アリステアスはそれを「全ての物事の創造者にして統括者」として描いている。 … 唯一神〔God〕は、[[ユダヤ教]]とギリシャ的文脈とで同じ機能を持っている。すなわち、唯一神は全ての物事の創造者にして統括者である。ただ唯一神の呼び名だけが違う。つまりギリシャ的文脈において、唯一神は「ゼウス」と呼ばれている。{{sfn|Schmitz|2016|p=705}}<br>(原文:{{lang|en|Fundamental for the argumentation of Aristeas is the function of the deity, which he describes as “the overseer and creator of all things”}} ({{lang|grc|πάντωνἐπόπτην καὶ κτίστην}}). ... {{lang|en|God has the same function in the Jewish as in the Greek context: He is the creator and overseer of all things. The only difference is God’s name: In the Greek context, God is called “Zeus”.}}){{sfn|Schmitz|2016|p=705}}<br><br>唯一神についての二つの概念〔ユダヤ系とギリシャ系〕は共に、遍在・全知・全能という特徴を持っている。{{sfn|Schmitz|2016|p=712}}<br>(原文:{{lang|en|[B]oth concepts of God share the aspects of omnipresence, omniscience and omnipotence}} (Arist 132 and Arist 133).{{sfn|Schmitz|2016|p=712}}}}
}}。ローマ神話の[[ユーピテル|ジュピター(ユーピテル)]]、中国神話の[[天帝]]、キリスト教やイスラーム等の[[唯一神]]と同様な、「[[至上神]] {{lang|en|supreme god}}(
ゼウスは全宇宙や天候を支配する[[天空神]]であり、人類と神々双方の秩序を守護・支配する神々の王である。全宇宙を破壊できるほど強力な[[雷]]を武器とし、多神教の中にあっても唯一神的な性格を帯びるほどに絶対的で強大な力を持つ<ref>呉茂一『ギリシア神話(上)』、新潮文庫、1969。</ref>。
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ゼウスは[[ローマ神話]]では[[ユーピテル]](ジュピター)にあたる。[[オリンポス山|オリュムポス]]の神々の家族および人類の両方の守護神・支配神であり、神々と人間たちの父と考えられた。
ゼウスは天空神として、全宇宙や雲・雨・雪・雷などの気象を支配していた。[[キュクロープス]]の作った雷霆(ケラウノス)を主な武器とする。その威力はオリュンポス最強と謳われるほど強大なもので、この雷霆をゼウスが使えば世界を一撃で熔解させ、全宇宙を焼き尽くすことができる<ref>ヘーシオドス 『神統記』 広川洋一訳、岩波文庫、1984。</ref>。[[テューポーン]]と戦う際には、万物を切り刻む魔法の刃である[[アダマント|アダマス]]の鎌も武器としていた。雷霆の一撃をも防ぎ、更に敵を石化させる[[アイギス]]の肩当て(胸当てや楯という説も)を主な防具とするが、この防具はよく娘の[[アテーナー]]に貸し出される。この他にも、「恐怖」という甲冑を[[ギガントマキアー]]において着用している。
「光輝」と呼ばれる天界の輝きを纏った鎧に山羊革の胸当てをつけ、聖獣は[[鷲]]、聖木は[[オーク]]。主要な神殿は、オークの木のささやきによって[[神託]]を下した[[イピロス|エーペイロス]]の聖地[[ドードーナ]]、および4年ごとに彼の栄誉を祝福して[[古代オリンピック|オリンピック大祭]]が開かれた[[オリンピア (ギリシャ)|オリュンピア]]にあった
== 系譜 ==
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オリュンポス十二神の中では、[[メーティス]]との間に[[アテーナー]]、レートーとの間に[[アポローン]]と[[アルテミス]]、[[マイア]]との間に[[ヘルメース]]、[[ディオーネー]]との間に[[アプロディーテー]]([[ホメーロス]]より)、ヘーラーとの間に[[アレース]]、[[ヘーパイストス]]、また[[テーバイ]]の王女[[セメレー]]との間に[[ディオニューソス]]、デーメーテール(一説には[[ステュクス]])との間に[[ペルセポネー]](あるいは[[コレー]])をもうけた。その他、記憶の女神[[ムネーモシュネー]]との間に9人の[[ムーサ]]たち、海洋の女神[[エウリュノメー]]との間に3人の[[カリス]]たち、月の女神[[セレーネー]]との間に[[パンディーア]]、[[ヘルセー]]、ネメアが誕生した。
[[File:
また様々な人間の女性との間に、たとえば[[ダナエー]]との間に[[ペルセウス]]を、[[アルクメーネー]]との間に[[ヘーラクレース]]を、[[レーダー (ギリシア神話)|レーダー]]との間に[[ディオスクーロイ]]を、[[アンティオペー]]との間に[[ゼートス]]と[[アムピーオーン]]を、[[エウローペー]]との間に[[ミーノース]]と[[ラダマンテュス]]と[[サルペードーン]]を、[[カリストー]]との間に[[アルカス]]を、[[イーオー]]との間に[[エパポス]]を、といったように多数の子供たちをもうけたことになっている。これらゼウスの子とされる英雄を[[半神]](ヘロス)といい、[[古代ギリシア]]では下級の神として広く祀られた。これらの伝説は、古代ギリシアの各王家が、自らの祖先をゼウスとするために作り出された系譜とも考えられる。ゼウスが交わったとされる人間の女の中には、もとは地元の[[地母神]]であったと考えられるものもいる。女神や人間と交わるときのゼウスはしばしば変化したとされ、ダナエーのときには黄金の雨に、レーダーのときには[[はくちょう座|白鳥]]に、アンティオペーのときには[[サテュロス]]に、エウローペーのときには白い牡牛に、カリストーのときには[[アルテミス]]に、イーオーのときには雲に変身したといわれる。
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==== メーティス ====
ゼウスの最初の妻は智恵の女神[[メーティス]]であった。彼女は[[オーケアニス|オーケアニデス]]であり、[[ティーターン|ティーターン神族]]の一柱であったが、[[ティーターノマキアー]]の際にはゼウスに味方していた。[[ガイア]]は「ゼウスとメーティスの間に生まれた男神は父を超える」という予言をした。これを恐れてゼウスは妊娠していたメーティスを呑み込み、子供が生まれないようにした。「どんなものにでも変身できるのなら、水に変身してみせよ」というゼウスの挑発に乗ったメーティスが水に変じたところでこれを飲み干したとも、ゼウスから逃れるために様々な動物に変身していたが、蠅に変身したところで呑み込まれたとも言われる。
あるとき、ゼウスは激しい頭痛に襲われた。そこで、[[ヘーパイストス]]に命じて頭を斧で叩き割り、直接原因を探ろうとした。すると、ゼウスの頭から武装し成人した[[アテーナー]]が飛び出してきた。その衝撃で世界は停止し、天体の運行も止まった。アテーナーがゼウスとメーティスとの子であり、女神であったために、ガイアの予言は効力を失った。こうしてゼウスは王位簒奪の大いなる運命から解放された。呑み込まれたメーティスはゼウスの智恵となり、ゼウスはメーティスの全知を手に入れた。また、メーティスはアテーナーと共に飛び出てきたという説もある。
==== テミス ====
メーティスの智恵を吸収したゼウスは、次に[[ウーラノス]]とガイアの子であ
==== ヘーラー ====
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==== エウローペー ====
[[エウローペー]]は、[[テュロス]]の[[フェニキア]]王[[アゲーノール]]と[[テーレパッサ]]の娘で、美しい姫であった。エウローペーに一目ぼれしたゼウスは誘惑するために、白い牡牛へと変身した。エウローペーは侍女と花を摘んでいる時に
==== ガニュメーデース ====
ゼウスは[[ガニュメーデース]]という[[トロイア]]の美少年を攫ったことでも知られている。しかし、これは愛人にするためではなく、神々の給仕係にするためであった。オリュンポスの神々に給仕するのは、もとは大神ゼウスとその正妻ヘーラーの娘、青春の女神である[[ヘーベー]]の役割であった。ゼウスの子、英雄[[ヘーラクレース]]が、死後
天上に輝く[[みずがめ座]]は、神々に神酒ネクタールを給仕するガニュメーデースの姿であり、[[わし座]]はゼウスが彼を攫うときに変身した鷲の姿である。
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ゼウスの生誕に関する古代伝説のひとつによれば、父[[クロノス]]はわが子に支配権を奪われる不安にかられ、生まれた子供を次々に飲み込んでしまった。そこでゼウスを生んだとき、母[[レアー]]は産着で包んだ石をかわりにクロノスに飲ませることでゼウスを救った。ゼウスは[[クレタ島|クレータ島]]の[[ディクテオン洞窟]]で雌山羊の[[アマルテイア]]の乳を飲み、[[ニュンペー|ニュムペー]]に育てられた。
成人したゼウスは、嘔吐薬によってクロノスに女を含め兄弟たちを吐き出させ
[[Image:Cornelis_Cornelisz._van_Haarlem_002.jpg|thumb|300px|[[コルネリス・ファン・ハールレム]]の1588年頃の絵画『打ち負かされるティーターン』。[[コペンハーゲン国立美術館]]所蔵。]]
この大戦においてゼウスは雷霆を投げつけ、宇宙をも揺るがす衝撃波と雷火によって[[ティターン神族|ティーターン神族]]を一網打尽にした。雷光は全空間に漲り、ティーターンたちは瞬く間に目を焼かれて視力を奪われた。雷霆の威力は想像を絶し、見渡す限りの天地を逆転させ<ref>フェリックス・ギラン、『ギリシア神話』中島健訳、青土社、1991。</ref>、地球や全宇宙、そしてその根源の[[カオス]]をも焼き払うほどであった<ref>ヘーシオドス 『神統記』 広川洋一訳、岩波文庫、1984。</ref>。この猛攻撃の甲斐あってゼウスたちはクロノスなどのティーターン神族を打ち倒し、敗者であるティーターン神族は宇宙の深淵である[[タルタロス]]に封印された。
その後ゼウスとポセイドーンとハーデースは支配地をめぐってくじ引きを行い、それぞれ天界と海界と冥界の主となった。更に、ゼウスはその功績から神々の最高権力者と認められた。しかしその一方、この時のハーデースは冥界の主となったためにオリュンポス十二神から除外されている。
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また、[[マケドニア王国]]にあるゼウスの神域・ディオンでも、オリュンピア祭が開催された。主催者はヘーラクレースの血筋を持つとされた[[アルゲアス朝|マケドニア王家]]であり、これはオリュンピアの古代オリンピックに次いで盛況であった。
=== ドードーナの神託 ===
[[エペイロス]]にあるドードーナには、ギリシア最古の神託所があり、ここでの神託は[[デルポイ]]に次いで有名であった。ドードーナの神託所にはゼウスが祭られており、神官たちはゼウスの聖木である樫の木を用いて神託を下した。樫の木の葉のざわめきを聞き、ゼウスの神託を解釈するのである。ドードーナの神託所は山奥にあり、交通の便は悪いが、その評判を聞きつけて参拝者が後を絶たなかった。
=== オリュンピア=ゼウス神殿 ===
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{{参照方法|date=2021年4月|section=1}}
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* 呉茂一 『ギリシア神話 上・下』 新潮文庫、1979年。
* [[アポロドーロス]] 『ギリシア神話』 高津春繁訳、岩波文庫、1953年。
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