「松橋事件」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
118行目:
事件発覚後、[[逮捕]]に至るまでのAに対する任意の事情聴取は計74時間に及んだ{{Sfn|江川|2016}}{{Sfn|菅野|2019|p=27}}{{Efn|[[自白]]に至るまでの取り調べ時間について、[[同志社大学]]の[[浅野健一]][[教授]]は72時間{{Sfn|浅野|2016|p=18}}、弁護団の齊藤誠[[弁護士]]は約63時間だったとしている{{Sfn|齊藤|2019a|p=42}}。}}。Aはこの頃の精神状態について、「もう精神的にも参っておりましたので、もうこれは早く[[自白]]して楽になったほうが自分でもいいんじゃないかというような、やけくそのような気持が起こりましたので、もう17日頃からもう早く逮捕しなさいよというようなことを[[警察]]に迫っておりました」と後の[[公判]]で述べている{{Sfn|齊藤|2019a|p=43}}。しかし、確定審[[判決 (日本法)|判決]]は「自白の任意性に疑いを抱かしめるほどの強制的なものであったとは、到底認めがたい」{{Sfn|江川|2016}}として任意性を認め{{Sfn|熊本地裁|2019|p=2}}、その点については[[再審]]開始決定でも維持された{{Sfn|江川|2016}}{{Sfn|新屋|2017|p=120}}。
 
現在では、逮捕された[[被疑者]]は[[当番弁護士制度]]が利用でき、[[勾留]]されれば[[国選弁護制度|国選弁護人]]が付けられるが、任意捜査の段階ではこうした制度は利用できず、自費で私選弁護人を依頼するほかはない{{Sfn|江川|2016}}。また、[[裁判員制度|裁判員裁判]]の対象となる事件では取り調べの可視化が義務付けられているが、やはり任意捜査の段階は対象となっていない{{Sfn|江川|2016}}。[[ジャーナリスト]]の[[江川紹子]]は、「資力のない被疑者の場合、松橋事件と同じように長々と『任意』の取り調べを行って『自白』に追い込むという”捜査手法”が取られかねない」として、松橋事件のような[[冤罪]]を防ぐために任意捜査の段階から録音・録画を行うべきであると主張している{{Sfn|江川|2016}}。
 
また、Aと犯行を結びつける直接証拠は自白のみであり、自白偏重の捜査と確定審判決に対しても批判がある{{Sfn|江川|2016}}<ref>『[[西日本新聞]]』2019年1月22日付朝刊、19版、29面。</ref>。[[熊本地方裁判所|熊本地裁]]は、Aの早期の名誉回復を優先して再審で実質的な審理を省略したが、これに対しては、再審を通じて冤罪の原因を究明して再発防止を検証することができなかったとの批判もある<ref name="Kumanichi190329M34"/><ref name="Nishinippon190329M3">『[[西日本新聞]]』2019年3月29日付朝刊、18版、3面。</ref>。Aの弁護団内でも再審で自白調書の信用性を吟味して判決に記載させるべきとする意見もあったが、その場合、半年以上の審理が見込まれることもあって、Aの存命中の判決を求めるために最終的に裁判所の意向を受け入れた{{Sfn|武村|2019|p=2}}。弁護団の一人は、「苦渋の決断である」と語ったという{{Sfn|武村|2019|p=2}}。元[[判事]]の[[門野博]][[弁護士]]も「公開の法廷で証拠を検証しなければ、誤判の原因究明につながらない」と熊本地裁の訴訟指揮に疑問を呈した<ref name="Nishinippon190209M28"/>。
 
=== 当初の国選弁護人に対する批判 ===