「マルチリンク式サスペンション」の版間の差分

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マルチリンク式の明確な定義とは、5本のリンクを用いてタイヤの持つ6[[自由度]]の運動(直交3軸方向の直線運動+直交3軸回りの回転運動)のうち1自由度(1方向の直線運動または1軸回りの回転運動、すなわちタイヤストローク)を残して5自由度を拘束したものである<ref>「福野礼一郎のクルマ論評5」 p.270 株式会社三栄 ISBN 978-4-7796-4228-9</ref>。2本まはた3本のリンクを剛結したものをアームと呼ぶが、これによってリンクを置換したもの(1アーム+3リンク、2アーム+1リンク)といったバリエーションも存在する(ダブルウィッシュボーンや996型[[ポルシェ・911]]のようなI アームとセミトレーリングアームを組み合わせたようなもの)。マルチリンクの本質の理解が広がっていなかった頃には、サスペンション設計者ですら「仮想転舵軸(仮想キングピン)を持った構造」といった曖昧な理解しかできていなかったこともあった。また、前記のように原理的にはマルチリンクの延長線(簡略化)にある形式がダブルウィッシュボーンであるが、登場としては理解と設計の容易なダブルウィッシュボーンの方が早かったため、「ダブルウィッシュボーンの延長線上にある形式」と逆に書かれた資料もある{{要出典|date=2021年6月}}。
 
狙った1自由度運動を実現するための設計が難しい(膨大なリンク配置の組み合わせから絞り込む必要がある)が、上手くできれば[[サスペンションジオメトリー|ジオメトリー]]制約による相反や妥協が少なく、タイヤを路面に正しく接地させる能力に秀でている。そのため、{{要説明範囲|高エネルギー領域|date=2020年6月}}{{要説明範囲|で不安定になりやすい高性能[[前輪駆動|FF車]]|date=2020年6月}}や、ハイパワー後輪駆動車のトラクションを確保する目的でリアサスペンションに採用されることが多い<ref group="注釈">ただし[[日産・プリメーラ]]みたいのよう、一貫してフロントサスにのみ採用されたケースもある。</ref>。
 
理論的には各リンクの両端支持点は回転3自由度のみで直線運動3自由度(芯ずれ)は拘束されていること前提とする。[[ピローボール]]のような球面軸受を使用すると理論的動きに近いが、一般乗用車では乗り心地や悪路耐久性上ゴムブッシュをの使用は避けられない。ゴムブッシュは回転方向によって動きの渋さが異なる上にたわみによる芯ずれも発生し、実車両におけるスカッフィング(ストローク時のトレッド変化によりタイヤが路面を左右方向にこすること)や動きの渋さ、入力とは異なる方向へ車体を揺らすなどの不安定現象に繋がる。マルチリンクサスペンションの開発工数の大部分はこのブッシュや球面軸受の最適化である。