「アルキメデスの牛の問題」の版間の差分

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『'''牛の問題'''』(うしのもんだい、{{lang-en-short|cattle problem}}、{{lang-la-short|problema bovinum}})は、[[古代ギリシア]]の数学者[[アルキメデス]]が提示したとされる、ある条件を満たす牛の頭数を問う問題である。現代的な用語を用いれば、ある[[ディオファントス方程式]]の整数解を求める問題と見なせる。解は無数にあるが、最小のものでも牛の頭数は二十万桁(二十万「頭」ではない)以上という現実世界ではありえないレベルの数に達する。
 
== 問題 ==パソコン
問題は「''おお盟邦の友よ、[[ヘーリオス|ヘリオス]]の牛の群れを算''(かぞ)''え給え''…」<ref name="fuj">藤沢令夫訳『世界の名著 9 ギリシアの科学』pp. 502 - 505</ref>で始まる22の対句、44行の詩の形で示されている。
 
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d &= \left( \frac{1}{5}+\frac{1}{6} \right) (Y+y) \\
y &= \left( \frac{1}{6}+\frac{1}{7} \right) (W+w) \\
 
W+B &= p^2 \\
Y+D &= \frac{q(q+1)}{2}
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の整数解を求めることに帰着される。
 
このペル方程式を解く部分が最も難しい。一般に、ペル方程式はその係数の大きさに比して、最小解が非常に大きくなる場合がある。[[連分数]]を用いた効率の良い方法が知られているものの、最小解の ''y'' の値は103266桁にも達するため、計算機[[コンピューター]]の助けなくして解を求めることは事実上不可能である。現代では、計算機パソコンを用いて解を求めることは易しく、牛の総数(の最小解)はおよそ
:<math>7.7602714 \times 10^{206544}</math>
である。
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レッシングは、自分の発見した問題が本当にアルキメデスによるものかどうかは疑っていたが、古代において「牛の問題」({{lang-la-short|problema bovinum}})あるいは「アルキメデスの問題」({{lang-la-short|problema Archimedis}})がしばしば難問として言及されていることもあり、アルキメデスの研究で著名な{{仮リンク|ヨハン・ルーズヴィー・ハイベア|en|Johan Ludvig Heiberg (historian)|label=ハイベア}}は、これがアルキメデスによるオリジナルの問題を正確に伝えていると考えた<ref>デリー、pp. 3 - 5</ref>。
 
1880年、アムトールは初めて正しい解について言及し、それが206545桁であって、先頭の4桁が7760であることまで求めた<ref name="ste" />。解の全ての桁が初めて得られたのは1965年のことである<ref>H. C. Williams, R. A. German, C. R. Zarnke, ''Solution of the Cattle Problem of Archimedes'', Mathematics of Computation '''19''', 671-674, 1965.</ref>。そのために、当時の計算機[[スーパーコンピュータ]]で7時間49分かかった<ref name="wei">MathWorld, Archimedes' Cattle Problem の項</ref>。1981年には、206545桁の数字が47ページに印字されて公表された<ref>H. L. Nelson, ''A Solution to Archimedes' Cattle Problem'', Journal of Recreational Mathematics, '''13''', 162-176, 1980-81.</ref>。このときの計算には、[[スーパーコンピュータ]]の [[Cray-1]] が用いられ、チェックも含めて約10分で計算が完了した<ref name="wei" />。
 
1998年、ヴァルディは牛の総数の公式