「当分ノ内侍従長二人ヲ置クノ件」の版間の差分

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附則は、本則に付随する規定が置かれる。本令では、施行期日及び経過措置がそれぞれ規定される。
 
附則第1項は、本令を公布の日と同日に施行すること(いわゆる公布日施行)を定めた規定である。当時の政府が公布日施行の瞬間についてどう解釈されていたかは明らかではないが、後年に法令の公布日施行の瞬間についての[[判例]]では、本令の掲載された官報が一般希望者において閲覧し、又は購読し得る場所に到達した時点であるとされていることから、遅くとも1912年7月30日の該当時間をもって公布され、同時に施行されたと推測される<ref>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50470 昭和30年(あ)第871号覚せい剤取締法違反事件、昭和33年10月15日最高裁判所大法廷判決、刑集第12巻14号3313頁]</ref>。皇室令は、その規定を施行するにあたって準備期間や周知期間が必要であるため、特段の規定がない限りは公布の日より起算し満20日を経て施行することとしている<ref>公式令第11条</ref>。しかし、本令は、天皇の代替わりに伴い至急必要となったものであることから準備期間は必要とせず、本令により影響を受ける対象が宮中の関係者に限定されることから周知期間も必要としないため、公布日施行としたものと推測される。
 
附則第2項は、本令の経過措置を定めた規定である。附則第2項前段では本令の施行により侍従長となる東宮大夫への侍従長任命の官記の不交付を、同項後段では任命に関する諸規定に関わらず本令の施行をもって自動的に兼任することを、それぞれ定めている。一般に勅任官の任命行為は、親任官とそれ以外の勅任官によって異なる。親任官にあっては、官記に天皇が親署し宮内大臣が年月日を記入し副署し、親任式において天皇から直接交付され、親任官以外の勅任官にあっては、官記に御璽を押印し宮内大臣が年月日を記入し副署し、[[内閣総理大臣]]が天皇の勅旨を奉じてその勅旨を包含する官記の対象者に交付することをもって行われる<ref>公式令第14条第1項及び第3項</ref><ref>[[野村淳治]]『行政法総論 上巻』日本評論社、1937年、210頁。</ref>。本則の規定による侍従長の増員は、天皇の代替わりに伴う一時的な措置であり、東宮大夫には官記の交付を待たずに至急侍従長としての事務を行う必要があるため、官記を交付しないこととし、交付せずとも任命されることとした。すなわち本規定は、官記の様式を定める公式令の特別法として性質を有する。