「レナード対ペプシコ事件」の版間の差分
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2021年9月12日 (日) 03:23時点における版
レナード対ペプシコ事件(レナードたいペプシコじけん、正式名: Leonard v. Pepsico, Inc.)は、1999年にアメリカ合衆国ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所が審理した契約に関する事件である。[1] この事件は、ペプシコーラを生産するペプシコが1995年にペプシポイントを景品に交換する「ペプシスタッフイベント」を広報するために制作したテレビ広告で7,000,000ポイントを貯めれば、アメリカ海兵隊所属の戦闘機「AV-8BハリアーIIジェット機」を景品として支給するという内容を提示したのが発端となった。[2]
レナード対ペプシコ事件 | |
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裁判所 | アメリカ合衆国ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所 |
正式名 | Leonard v. Pepsico, Inc. |
判決 | 1999年8月5日 |
引用 | 88 F. Supp. 2d 116 |
訴訟史 | |
次判決 | Affirmed, 210 F.3d 88(2d Cir. 2000、per curiam) |
裁判所のなす判断 | |
誰でも合理的な人なら巨額のジェット機を民間人に譲渡しようとすることに対して常識外のことだと判断するため、ペプシコの広告は単なる広告効果のための誇張された宣伝に過ぎないと判断される。 このため、ペプシコはジョン・レナードにハリアー戦闘機を景品として支給する義務がない。 | |
裁判所の面々 | |
裁判官 | キムバ・ウッド |
1996年当時、ワシントン州の大学で経営学を専攻していたシアトルのジョン・レナードは、イベントに参加する過程で、ペプシコーラの製品を購入する代わりに、700,008.5ドルの金額が書かれた小切手をペプシコーラ36缶と共にペプシコ本社に送った。[3] ペプシコは、広告レベルで意図した冗談に過ぎないとして景品支給を断ったが[4]、ジョン・レナードは、「消費者を対象にした広告で提示した公開的な約束だから景品を支給すべきだ」と主張し、裁判所に訴訟を起こした。[5][6] ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は1999年8月5日に開かれた裁判で「誰でも合理的な人なら巨額のジェット機を民間人に譲渡しようとすることに対して常識外のことだと判断するため、ペプシコの広告は単なる広告効果のための誇張された宣伝に過ぎないと判断される。 このため、ペプシコはジョン・レナードにハリアー戦闘機を景品として支給する義務がない。」と判決し、訴訟を棄却した。[7]
来歴
当該請求訴訟は、契約違反、詐欺、虚偽の広告、不公正取引の疑いを根拠として提起された。[8] この事件はもともとフロリダ州の地方裁判所で訴えられ、後にニューヨーク州の地方裁判所で判決が下された。[5] 当該事件の被告であるペプシコは「連邦民事訴訟規則」第56章により即決判決のために席を移動した。[5][6] 一方、該当事件の原告であるジョン・レナードは、連邦裁判所判事が該当事件に関する決定を下す権限はなく、その代わり、該当広告に対する提案を形成したと推定されるペプシ世代(Pepsi Generation)の人々で構成された陪審団が決定を下すべきだと主張した。[9]
事実と背景
問題の広告
映像外部リンク | |
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Pepsi Harrier Jet Commercial 1 at YouTube | |
Pepsi Harrier Jet Commercial 2 at YouTube |
この事件は、ペプシコーラを生産するアメリカの飲料会社ペプシコが1995年にペプシポイントを景品に交換するマイレージサービス、ペプシスタッフイベントを広報するために制作したテレビ広告が発端となった ニューヨーク州南部地裁は当該事件に関連するペプシコのテレビ広告の内容を次のように説明した。[5]
この広告は牧歌的な郊外風景とともに画面に「月曜日午前7時58分」(MONDAY 7:58 AM)という字幕が出てから始まる。 日差しが降り注ぐ木から朝を知らせる囀る鳥の声とともに、新聞配達員が自転車に乗り、2階建ての家の玄関入口の階段に向かって新聞を投げる。 その後、軍楽隊のドラム音が登場する。 家の中ではペプシのロゴが描かれたTシャツを着た10代の少年が自信を持ってポーズを取りながら登校する準備をするが、画面には「Tシャツ75ペプシポイント」(T-SHIRT 75 PEPSI POINTS)という字幕が登場する。 部屋から出てきた10代の少年は皮ジャケットを着て廊下を歩いていく。 軍楽隊のドラムの音と共に画面には「革ジャケット1,450ペプシポイント」(LEATHER JACKET 1,450 PEPSI POINTS)という字幕が登場する。 ドアから出てきた10代の少年は早朝の眩しい日差しに慌てずサングラスをかけながら登場するが、画面には「サングラス175ペプシポイント」(SHADES 175 PEPSI POINTS)という字幕が登場する。高校の建物の前には3人の少年たちが座っており、真ん中にいる少年たちは"ペプシスタッフカタログ"(Pepsi Stuff Catalog、ペプシコがペプシスタッフ(Pepsi Stuff)イベントを広報するために制作した冊子)に夢中で、両側にいる少年たちはペプシコーラを飲んでいる。 軍隊の行進曲がピークに達した時、3人の少年たちは自分たちの頭上を通り過ぎる物体を畏敬しながら眺める。 ハリアージェット機はまだ登場していないが、観察者は飛行によって発生する極端な風によって退屈な物理学授業が行われていた教室で、紙の渦を起こしながら強力な航空機の存在を感知する。
ハリアージェット機はついに視界に入り、校舎前、駐輪場前に着陸する 何人かの生徒は風を避けるために校舎の外に飛び出し、風の速度は不運な教職員1人の下着を脱がせる。 教職員が品位を失っている間に声優は「これからはペプシをたくさん飲むほどスタッフもよくなります」(Now the more Pepsi you drink, the more great stuff you're gonna get)と言う。 「自分がとても満足している姿」(Looking very pleased with himself)を持った10代の少年はジェット機の操縦席を開いた後、ヘルメットをかぶらずにペプシコーラを持って「確かにバスより早いね!」(Sure beats the bus)とからかう。 「ハリアー戦闘機7,000,000ペプシポイント」(HARRIER FIGHTER 7,000,000 PEPSI POINTS)という字幕が画面に登場すると、軍楽隊の相次ぐドラムの音がCMの最後を飾る。 数秒後、「ペプシを飲もう。 スタッフを受けよう」(Drink Pepsi - Get Stuff)という字幕とともに音楽が登場し、広告が幕を閉じる。
イベント
ペプシコは、ペプシスタッフイベントの過程で次のような規定を提示した。
事件の当事者だったシアトルのジョン・レナード(John Leonard、1996年当時は21歳)は、米ワシントン州ショーラインにある地域社会大学のショーライン・コミュニティ・カレッジ(Shoreline Community College)で経営学を専攻していた大学生だった。[11][12] ジョン・レナードはイベントに参加する過程でペプシコが提示した3番規定に注目した。 7,000,000ポイントを貯めるにはペプシコーラ16,800,000缶が必要だったが、1日に10缶ずつ飲むとしても4,602年9ヶ月かかる。[3] ジョン・レナードはペプシコーラの製品購入でポイントを貯める代わりに投資家を説得して700,000ドルを集めた。 また、ジョン・レナードは自分が雇った弁護士の助けを通じて1996年3月28日に15ポイント貯められるペプシコーラ36缶、700,008.50ドルの金額が書かれた小切手をペプシコ本社に送ったが、これは6,999,985ポイントに該当する価値を持った699,998.50ドル、配送及び取扱手数料10ドルを合わせた金額だった。[8]
ペプシコは「ハリアー戦闘機をイベント景品として支給するという内容は広告次元でユーモラスに意図した冗談にすぎない。 実際のハリアー戦闘機の価格は数百万ドル(1996年当時の価値は33,800,000米ドル)に達する。[2] また、ペプシスタッフカタログに収録されたイベント景品リストには、ハリアー戦闘機が掲載されていない。」と主張し、景品支給を断った。[1] 一方、ジョン・レナードは、ペプシコが消費者を対象にした広告で提示した公開の約束通り、ハリアー戦闘機を景品として支給すべきだと主張し、裁判所に訴訟を提起した。[3]
判決
ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は1999年8月5日にキムバ・ウッド判事が主宰した裁判で「ペプシコはジョン・レナードにハリアー戦闘機をイベント景品として支給する義務がない。」と判決し、ジョン・レナードがペプシコを相手取って起こした訴訟を棄却した。 裁判所は、これらの判決に対して次のようないくつかの判断を示した。[7]
- 問題のジェット機が登場するペプシコの広告は、「契約法リステートメント第2版」(Restatement (Second) of Contracts)に基づく契約に該当しないことが確認された。 これは、ペプシコが一般大衆や消費者を対象にした広告で、ハリアー戦闘機をイベント景品として提示したからといって、契約が成立しないことを意味する。
- 裁判所は、ペプシコの広告が契約だったとしても、誰もが合理的な人なら、ペプシコが約23,000、000米ドル相当のジェット機を700,000米ドルに譲渡しようとする意図に対し、常識から外れるほど信じられないと判断するため、単なる広告効果のための誇張された宣伝に過ぎないと判断される。
- 請求された契約の内容は、法令に明示された詐欺罪に該当するという意味だったが、法令による取引行為を証明できる当事者間の契約書が存在しないため、契約不履行に該当せず、罪を問うほどではないと判断される。
- 原告が詐欺行為をきちんと陳述するためには、「被告が原告を誘導するための誤った表現または重大な記載漏れ」があったという事実を立証しなければならないが、当該事件のように被告が契約を締結する際に約束を履行する意思が不足していたという原告の主張は、請求を裏付けるには不十分だ。 その代わり、原告は誤って伝えられた表現が当事者間の別途の合意に付随するものであるか、誘引策の役割をしたということを示さなければならない。
ニューヨーク州南部地裁は「ペプシコの広告は明白な冗談で行われたものにすぎない。 10代の青少年がハリアージェット機に乗って登校するという考えは、広告効果のための誇張された青少年ファンタジーにすぎない」と結論を下し、広告の性格と内容について次のようにさまざまな判断を下した。[7]
- 広告によれば,広告の使用はほとんどの若者にとって極めて日常的で平凡な経験になり得るものを変えることになるだろうという。ペプシコの広告は、ペプシスタッフの景品がこれまでの人生に劇的な事件と瞬間を吹き込むことを表現している。 誰もが合理的な視聴者なら、このような広告内容が誇張された表現に過ぎず、広告の約束を文字通り解釈してはならないと判断するだろう。
- 広告に登場する未熟な青少年は、航空機の操縦のためには長期間の訓練が必要だという現実を反映した時、可能性が非常に低い操縦士で、米海兵隊所属の航空機操縦はもちろん、親から車の鍵さえ渡されて運転さえできない人だ。
- CMに登場する10代の青少年がハリアージェット機を学校まで走らせながら「確かにバスより速いね」と発言する姿は、住宅街で戦闘機を操縦する際の相対的な困難と、何らかの危険に対する軽率な態度を呼び起こす。
- いかなる学校も、学生たちが操縦する戦闘機が着陸できる空間を提供せず、航空機を使用する混乱を容認しないだろう。
ニューヨーク州南部地裁はさらに以下の判断を下した。[7]
表面と空中目標物に対する攻撃と破壊、軍事目的の偵察、空中迎撃、攻撃と防御対空戦などに現れるハリアージェット機の多様な機能は、各種文書を通じて十分に立証された。 軍事目的で使用される可能性を排除するなら,そうしたジェット機を朝登校する方法で描写するのは原告の主張どおり可能だとしても明らかに深刻ではない。
その判決はニューヨーク州を管轄する 第二上訴合衆国裁判所に付託された。 第二上訴合衆国裁判所は、2000年4月17日に開かれた全員合議体控訴審裁判で、「ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所で開かれた一審裁判で明示されたキムバ・ウッド判事の意見による実質的な判断を認める。」という内容が盛り込まれた略式意見書を通じて、ジョン・レナードが提起した控訴を棄却し、原審を確定した。[13]
余波
ペプシコは、問題となったペプシコーラのテレビCMを出し続けたが、ペプシコーラの製品をハリアージェット機に交換するのに必要なペプシポイントを700,000,000ポイントに引き上げる一方、修正された広告に「明らかな冗談です」(Just Kidding)という字幕を追加した。[14] アメリカ国防総省とホワイトハウスは、アメリカ海兵隊所属の戦闘機ハリアージェット機が「非武装化」過程(ハリアー戦闘機の場合、着陸と垂直離着陸能力の除去が該当する)なしには民間人に売却されないという立場を明らかにした。[15] また、ジョン・レナードは訴訟で敗れたにもかかわらず、投資金以上の補償金を受けている。[16]
脚注
注釈
- ^ ペプシコは後で修正された広告を通じて、80ポイントはTシャツを、125ポイントはサングラスを、1200ポイントは皮ジャケットをそれぞれ景品として支給するという規定を提示した。
出典
- ^ a b “Leonard v. Pepsico ペプシポイントを集めて本物の戦闘機をもらえるか?”. 英米判例を素材に英語を学ぶ (2018年3月4日). 2021年9月12日閲覧。
- ^ a b “That time someone sued Pepsi because they didn’t give him a Harrier jet” (英語). We Are The Mighty. (2018年4月2日) 2021年3月28日閲覧。
- ^ a b c 韓国放送公社(KBS)スポンジ制作チーム (2006年1月20日). “14. 미국 콜라 광고에서 '네모'(전투기)도 경품으로 내걸었다.” (朝鮮語). 스펀지 4. 東亜日報社. p. 57–59. ISBN 9788970904467
- ^ “Pentagon: Pepsi Ad Not ‘The Real Thing’” (英語). AP通信. (1996年8月9日) 2020年11月25日閲覧。
- ^ a b c d “88 F.Supp.2d 116” (英語). Class Caster. 2020年11月8日閲覧。
- ^ a b “Flight Suit : Man Takes Pepsi to Court Over Fighter Jet ‘Giveaway’” (英語). ロサンゼルス・タイムズ. (1996年7月25日) 2020年11月25日閲覧。
- ^ a b c d e f “Leonard v. Pepsico, Inc., 88 F. Supp. 2d 116 (S.D.N.Y. 1999)” (英語). Justia (1999年8月5日). 2019年2月22日閲覧。
- ^ a b “[사설] ‘첵스 파맛’과 ‘펩시 포인트’ 소송/ 김은형” (朝鮮語). ハンギョレ. (2020年6月22日) 2020年11月25日閲覧。
- ^ Epstein, David (2006) (英語). Making and doing deals : contracts in context (2nd ed.). Newark, NJ: LexisNexis Matthew Bender. p. 55. ISBN 978-0-8205-7044-0. OCLC 64453463
- ^ “Special Report: Premiums & Incentives, A brand perspective: Pepsi Stuff offers branded merchandise for points” (英語). Strategy Online (1996年3月18日). 2021年3月28日閲覧。
- ^ “Student Sues to Win Fighter Jet Shown on Pepsi Commercial” (英語). AP通信. (1996年8月7日) 2020年11月25日閲覧。
- ^ “`Spoof' Or Not, He Wants Jet -- Pepsi Ad `Promised' To Award Harrier, Lynnwood Man Says” (英語). シアトル・タイムズ. (1996年7月25日) 2020年11月25日閲覧。
- ^ “John D.r. Leonard, Plaintiff-appellant, v. Pepsico, Inc., Defendant-appellee, 210 F.3d 88 (2d Cir. 2000)” (英語). Justia (2000年4月17dlf1). 2019年2月22日閲覧。
- ^ “1996: Man sues Pepsi for not giving him the Harrier Jet from its commercial” (英語). CBS. 2016年5月23日閲覧。
- ^ Mikkelson, David. “Pepsi Harrier Giveaway” (英語). Snopes. 2016年5月23日閲覧。
- ^ “'서프라이즈' 펩시 콜라가 전투기 소송 전쟁 휘말린 사연” (朝鮮語). TVreport. (2018年7月15日) 2020年11月25日閲覧。