「ニカラグア事件」の版間の差分

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== 先決的判決 ==
[[File:Internationaal Gerechtshof Nicaragua vs de VS ambassadeur Gomez (r) van Nicaragu, Bestanddeelnr 933-1618.jpg|thumb|300px|1984年11月26日の先決的判決言渡しの際のニカラグア代表団。]]
[[国際司法裁判所]](ICJ)に限らず、国際裁判において当事者(通常は被告)が事件の本案に先立って予備的に議論すべき事柄であるとして、本案の審理を阻止するために行う抗弁を先決的抗弁という<ref name="筒井214">[[#筒井(2002)|筒井(2002)]]、214頁。</ref><ref name="山本(2001)177">[[#山本(2001)|山本(2001)]]、177頁。</ref>。この先決的抗弁は大きく2つに分類され、その事案について裁定する権能が裁判所にあるかどうかを争う抗弁を[[管轄権]]に対する抗弁といい、[[訴えの利益]]を欠くなど訴訟の本案以外の理由で原告の請求を受理しないと裁定すべきとする抗弁を請求の受理可能性に対する抗弁という<ref name="山本(2001)177"/><ref name="筒井214"/>。本件において被告国アメリカは、管轄権に対する抗弁と受理可能性に対する抗弁との双方を含む広範にわたる事項に関して先決的抗弁を行い本案の審理へと進むことを阻止しようとしたが、ICJは1984年11月26日の[[判決 (国際司法裁判所)|判決]]でアメリカの抗弁を却下し、1986年6月27日の本案判決へと進むことを決定したのであった<ref name="山本(2001)177-178">[[#山本(2001)|山本(2001)]]、177-178頁。</ref>。ここでは1984年11月26日の先決的判決について概観する。
 
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== アメリカの出廷拒否と欠席裁判 ==
[[File:Klacht van Nicaragua tegen de VS voor het Internationaal Gerechtshof in Den Haag, Bestanddeelnr 933-4223.jpg|thumb|300px|1985年9月12日に開催された口頭弁論の様子。"ETATS-UNIS D'AMERIQUE"(「アメリカ合衆国」の意)と書かれた席は空席。]]
1985年1月18日、アメリカは1984年11月26日の先決的判決を不服とし以下のような声明を発した<ref name="Merits17">''[[#Merits|ICJ Reports 1986]]'', p.17, para.10.</ref>。
{{quotation
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== 本案判決 ==
[[File:Uitspraak Internationaal Gerechtshof in Den Haag in zaak Nicaragua tegen Verenig, Bestanddeelnr 933-6997.jpg|thumb|300px|1986年6月27日の本案判決言渡しの様子。左からホセ・マリア・ルーダ判事、ギ・ラドレ・ド・ラシャリエール副裁判長、ナジェンドラ・シン裁判長、マンフレッド・ラックス判事。]]
 
=== 適用法規 ===
ICJは、アメリカがエルサルバドルなどのための集団的自衛権行使であったと主張していることから、ニカラグアによる[[米州機構憲章]]違反との主張に対して裁定を下せば米州機構憲章という多国間条約の締約国が影響を受けることになるとし、これら多国間条約に基づくニカラグアの請求を受理することはできないとしたが、[[国際司法裁判所規程|ICJ規程]][[:s:国際司法裁判所規程#第38条|第38条]]に基づく多国間条約以外の[[法源]]、特に[[慣習国際法]]の適用は妨げられないとした<ref name="松田206">[[#松田(2001)|松田(2001)]]、206頁。</ref>。ICJはアメリカの宣言にある多数国間条約をめぐる紛争をICJの強制管轄から除外する旨の留保([[#強制管轄受諾宣言]]参照)の有効性を認めて[[国際連合憲章|国連憲章]]や米州機構憲章といった多数国間条約は本件の適用法規から除外されるとした上で<ref name="安藤28">[[#安藤(1988)|安藤(1988)]]、28頁。</ref>、多数国間条約に規定されている規則と同じ内容の慣習国際法が存在するならば、それを本件に適用することは可能としたのである<ref name="杉原423">[[#杉原(2008)|杉原(2008)]]、423頁。</ref>。つまり以下に説明する1986年6月27日の本案判決は、アメリカの行動が慣習国際法や両国間の友好通商航海条約などのような二国間条約に違反するかという点にのみ絞って判断されたものである<ref name="安藤28"/>。